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上が変われば、組織は変わる

上が変われば、組織は変わる | Hello, Coaching!
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「人は開発されるべきだ」 と考えています。

ハーバード・ビジネス・レビューによれば、企業におけるハイ・ポテンシャル社員の割合は、全社員の3~5%しかないと言います。

そして、ハイ・ポテンシャル社員に対しては、特別な取り扱い方(treatment)が必要だとも言われています。(※1)

私たちは、コーチングで、何でもやっているというわけではありません。コーチ・エィは、組織のリーダーをコーチしています。

新しく就任した社長として、何をやるのか? 海外拠点に赴任した駐在員が、任務を全うするために何をやるのか? といった「ロールマッチング」。

あるいは、M&A後のPMI(Post Merger Integration)や組織風土改革でコンサルタントは制度やシステムを作りますが、「誰がそれをやるのか」という、ともすると見過ごされがちな問題、コーチは、それを「実行する人」を開発しています。

そもそも、世界中でリーダーの数が足りなくなっています。

さらに、世界中のエグゼクティブと、その周囲の人々に対して実施されたサーベイでは、企業エグゼクティブのほとんどが、「部下を育成することにあまり興味がない」という結果も出ています。(※2)

わたしたちを取り巻く経済状況は、VUCA environment

その上、現在のわたしたちを取り巻く経済状況は、VUCA environment というものだそうです。

VUCAとは、
「不安定さ(Volatile)」
「不確実さ(Uncertain)」
「複雑さ(Complex)」
「曖昧さ(Ambiguous)」
の4つの頭文字を取ったもので、これからの未来のリーダーたちは、「不安定で、不確実で、複雑で、曖昧な世界を生き残るためのスキルを身につけ、外部のあらゆるソースから監視される中でもパフォーマンスを上げていかなければならない」ということです。(※3)

こうしたさまざまな要素からも、これまでとは違うタイプのリーダーを開発していかなければ、もううまくいかない時代に入っています。

上が変わると、会社は変わる

上が変わると、会社は変わります。これが組織の法則です。

「うちの部下を何とかしてくれ」
「うちの社員を何とかしてくれ」

という経営者もいますが、問題は部下ではありません。組織の上の層が変われば、その会社は変わります。問題なのは間にいる人じゃないのです。トップに立つリーダーです。

そして、「変える」方法は、2種類しかありません。

組織のトップが意識を変えるか、あるいは、トップそのものが変わる(交代する)か。

そして、変えるなら、できる限り早いうちに始めなければなりません。

私自身も、1997年に日本にコーチングを紹介して以来、ずっとコーチをつけていますが、45歳のときに、当時のカナダ人のコーチに、「後継者を今、決めなさい」と言われました。

45歳と言えば、一般的には、「自分はまだこれからだ」という意識ではないでしょうか。私も同じでした。

すると、コーチに「遺書を書くように」と言われてしまいました。仕方なく書き始めると、「この人に」という名前が挙がってきます。

かくして、私の後継者プランニングと後継者育成がスタートしました。

今振り返っても、あの時に、後継者マネジメントを始めて正解でした。結局、後継者を育てるのに、10年を要したのですから。

「会社を大きくする」とは、リーダーの質を上げることです。

私の場合は、自分自身にエグゼクティブコーチをつけたことで、会社の中に「次世代リーダー」の数が増え、会社の規模は、10倍以上になったと思います。私自身の体験としても、コーチングは機能するものです。

多くの経営者・リーダーは、情報が遮断された状態であることが多々あります。

人間は、50歳を越すと、物を考えなくなるものです。なるべく考えなくてもいいように、物事を進めようとする傾向があります。

インドの経済学者アマルティア・センは、「貧困」を、「情報が遮断された状態」だと言っています。

私たちがコーチすると、クライアントから、「頭痛がする」と、よく言われます。

コーチからの「問いかけ」よって、これまで避けていたことについて考えるようになるからです。

なぜ頭脳明晰なエグゼクティブが失敗するのか? それは、たいていの場合、厳しい問いかけをしてくれる人がおらず、必要な情報に触れられず、軌道修正ができないために起こっています。

違うものを見る機会を持たなければ、人はワンパターンに陥ります。適切な情報に触れることができれば、リーダーは、適切な決断・行動ができるのです。

「リーダーの質」が変われば、組織は変わるのです。

【VUCAの関連記事】
VUCAを生き抜くために必要な5つの姿勢

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【参考文献】

※1
Ladan Nikravan, "How to Keep High-Potential Employees", MediaTec Publishing Limited

※2
Pete Hammet, "The paradox of gifted leadership: developing the generation of leaders", Emerald Group Publishing Limited

※3
"Creating Tomorrow's Government Leaders - An Overview of Top Leadership Challenges and  How They Can Be Addressed-", Center for Creative Leadership

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