Coach's VIEW

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挨拶は、企業業績の先行指標

私は日々、クライアント企業のさまざまな職場に出向きますが、
その際、一番最初に注目するのが、
その会社の「社員の挨拶」です。

外部者としてゲストカードをつけて社内を歩くと、
社員の方々の反応は、面白いほど二つのパターンに分かれます。

気持ちの良い挨拶ができる社員がいる企業と、
「今ここを歩いている私は、もしかしたら空気なんじゃないか?」
と感じずにはいられなくなるような企業。

実は、私は毎回、その最初の印象をメモしています。
その会社の「挨拶のレベル」について、◎、○、△、×、と。

そして、それと共に、その会社の方に後である指標を聞くのです。
すると、明らかに関連性がある。それは何か?

メンタルヘルス不調者の発生率や離職率です。
企業や部署によっては、ヒヤリハット率、事故率、クレーム率
といった数値にも強い相関を示すことがあります。

ある大手メーカーの部品事業部でのお話です。
職場風土改善プログラムを導入したい、ということでしたので、
現状を把握するためのインタビューをしに、
数名のコーチと共に職場にお伺いしました。

職場が工場に併設しているため、社員のほとんどの方は作業着を着ています。
スーツ姿は私たちだけ。
胸元には大きく「GUEST」と書かれた名札をしていました。

ですから、誰が見ても、私たちの一行は外部からの来客と一目でわかるはずです。
にも関わらず、社内に入ってから、唖然とするような対応をされたのです。

受付を済ませて、担当者の方と奥まった会議室へ行く途中、
何人もの社員たちに出会いました。
しかし、こちらから会釈をしても全く反応がなく、
彼らは無表情に通り過ぎる有り様でした。

50名前後の社員がパソコンに向かって作業している職場を横切るときも、
目が合っても、すぐに目を伏せます。

インタビューの部屋に時間通りに到着するものの、
前の会議が長引いていたため、しばらく外で待たされました。
しばらくしてから会議が終わり、5-6人の社員が外に出てきたのですが、
私たちを待たせたことを詫びることはおろか、
挨拶する人すら1人もいませんでした。

その後、一人30分程度、5人に対して行われたインタビューの中で
浮き彫りになる組織の状況は、
予想をしてはいたものの、かなり深刻な状態でした。

最初の方は、日ごろの鬱憤を発散するかのように話し続けました。

「この事業部の社員は一人ひとりがバラバラです。
 自分の成果を上げないといけないので、
 隣の社員が何をしているかには興味もなく、
 誰かがミスをしても協力するスタンスなどありえません」

「前の部署はこんな感じではなかった。
 何か問題が起こればみなで集まって、一気に解決していった。
 口が悪いが、みなが繋がっていた。
 ここは違う。みな孤独です」

「先日は、新人が会社に来ていないことが夕方になって判明した、
 ということが起きました。
 ここは、お互いに興味も関心もないんです。
 はっきりいって、息が詰まりそうです。
 自分はいなくても変わらないのではないか、と思う時さえあります。
 一刻も早くこの事業部から解放されたい」と。

この後に続いた4人も、異口同音。
うち一人は涙ながらに私たちに助けを求めたのです。

インタビューが終わって、
少し重い気持ちで工場内を通りました。

そこには、どの工場にもよくある
「安全第一」といったスローガンが掲げられていました。

にも関わらず、
その足元には、整理整頓されていない現場があります。

そして、その横にはさらに残念な文字が私たちの目に留まりました。

「顧客満足度向上」、、、、。

「GUEST」と書かれた名札を胸に下げながら、
まったく「GUEST」扱いされなかった私たちにとって、
「顧客満足度向上」のスローガンは、あまりにも虚しく思えました。


コーチング研究所LLPのアンケート調査「COMPass」(*)では、
組織内の「人と人との関係性」、すなわち「コミュニケーション・インフラ」の現状を
定量的に測定することができます。

「コミュニケーション・インフラ」は、
次の3つのレベルから成り立っています。

レベル1:安心の場をつくる (受容のある職場)
レベル2:協働の場をつくる (人に関心のある職場)
レベル3:共創の場をつくる (要望を言い合える職場)

先にご紹介した部品事業部の職場で測定したところ、
結果は「レベル1」に満たない「レベル0」の状態であることがわかりました。

組織のタイプとしては「孤軍奮闘型」が診断され、
この型の特徴のひとつである、「メンバー同士の挨拶、会話が乏しく、
各自の仕事に追われて余裕がない状態」に合致する結果となりました。

組織風土の改善には、この先、いくつものステップを
乗り越えていく必要があることが判明しました。

多くの経営者は、「業績改善や顧客満足向上を一刻も早く成し遂げたい」と言います。
しかし、そのような企業ほど、実はそれどころではなく、
まずは足元の「従業員満足度」を改善しなくてはならないケースが実に多いものです。

そんな状態にも関わらず
顧客満足度向上や業績向上を急ぐことは、
地盤が緩い所に高層ビルを建てるようなものです。

たかが挨拶、されど挨拶。

挨拶は、企業業績の先行指標といえます。

あなたの職場や会社の挨拶は、どのレベルですか?
業績を上げるための地盤は強化されていますか?
点検してみてはいかがでしょうか。

*「COMPass」は、コーチング研究所の開発した組織内の
  「人と人との関係性」の現状を定量的に測定する調査です。

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