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プロセス・オリエンテッド(Process-Oriented)

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企業による「リーダーへの投資」が増えています。

いうまでもなく、ただ待っているだけでは新しいリーダーが出てくるわけではなく、そのことに気づいている企業は、リーダーシップ開発への取り組み方も、3年先、5年先、時には会社の10年先を見据えた戦略を立てる傾向があります。

昨年フォーブスに掲載されたコラム、「エグゼクティブ・コーチング~皇帝のためのもう一式の衣服?~」(※1)には、以下のような記述があります。

・GE や ゴールドマンサックス、グーグルといった巨大企業の最近のエグゼクティブ・コーチングへの投資額は、アメリカ本土だけで年間約10億ドル以上だと見られている。

・20年前と違い、現代のコーチングへの投資予算のほとんどが、「ハイポテンシャル・リーダーの開発」に集中している。

・最近、プライスウォーターハウスクーパースがコーチングのクライアントを対象に実施したグローバルサーベイによれば、企業のコーチングへの初期投資に対する費用対効果(ROI)の平均は7倍で、対象企業の1/4以上が、10倍~49倍だったと回答している。

・Inspiring Workplace 社 CEOの Roudebush 氏にとってコーチングのリターンがこれほどまでに大きい理由は明らかであり、「リーダーは、周囲に大きな影響を及ぼすからだ」と述べている。

さらに、最近の傾向として、リーダー開発の対象が、より若い世代にも広がっていることが挙げられます。

世界中で、「コーチング」を導入する大学や大学院が増えています。

世界中の約185校の大学および大学院で、「コーチング」が何らかの形で教育プログラムに組み込まれているという報告もあります。(※2)

我々の実感としても、日本でもビジネススクールといったMBAプログラムの一部として、コーチングが導入されるケースが年々増えています。

エグゼクティブ教育で定評があり、コーチングを多く取り入れているESMT(ドイツの欧州経営技術大学院)のKorotov 教授は、エグゼクティブ教育について、

「エグゼクティブに必要なのは、何が他者を動かす原動力になるのかを知ることだけではない。彼らには、自分自身の内側で何が起こっているのかを自分で認識することも必要」

と考えています。(※1)

つまり、「どれだけ自己認識をしているか」は、判断の場面でも、また相手に「影響する」場合でも欠かせない能力なのです。

例えば、エグゼクティブがリスクをとることを恐れている場合、その原因は、単に理性や経験だけでは語れない、本人も気づいていない価値観や習性による場合が多く、「自己観察」がないと、何故その判断をしているのか、何故そのような行動をとるのかが「自分でも分からない」というケースが生じてしまうのです。

コーチとクライアントの「対話のプロセス」では、「自己認識」を深めるために、今の現実に対する解釈や、未来への見通しをテーマに、その認識がどこからくるのかについて、洞察を深めることを行います

そのためには、ただ、リーダーを鏡のように映し出すことで、コーチの役割とは、その「鏡」のようなものです。

我々コーチが「質問する」目的は、答えを出させることではなく、質問することによって、彼らが「考えるようになる」ことがより重要なのです。

誰かが、エグゼクティブの代わりに問題を解決してあげるのではなく、今ここで起こっている問題を解決するのは、エグゼクティブ本人なのです。

コーチは「質問」するのであって、「アドバイス」や「答え」を与えるのは役割ではありません。

不確実で複雑な状況の中で方向を定めるとなれば、そこに「創造的」な問題解決能力が求められます。

これまでの知識や経験、他の人のアドバイスでは行き着かない答えを見つけ出す、または創り出す能力が求められています。

コーチからの「問いかけ」、そして、自分への絶え間ない「問いかけ」を通して、創造的な答えを見つけ出して行く。

そのことを、プロセス・オリエンテッド(Process-Oriented)といいます。

もちろん、コーチから課題や宿題が出される事もあります。

それも基本的には「問い」の一部なのです。

【参考文献】

※1 Matt Symonds, Executive coaching - another set of clothes for the Emperor? Forbes,  January 21, 2011

※2 Graduate School alliance of Executive Coaching

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