Coach's VIEW

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リーダーは『失敗』を歓迎する

PTSD は「Post-traumatic Stress Disorder」の略で、
「心的外傷後ストレス障害」と訳されます。

災害や戦争、大病などの大きなストレスによる
さまざまなストレス障害を意味することは、
多くの方がご存知ではないでしょうか。

一方で、PTGという言葉があります。

「Post-traumatic Growth」の略で「心的外傷後成長」と訳され、
大きなストレスを体験した後に、飛躍的に人間的な成長を遂げることを意味します。

リーダーの中にも、過去に大きな挫折や失敗の経験を通して、
飛躍的な成長を遂げた、偉大なリーダーが多数存在します。

最盛期から81%も株価が下落したスターバックスを
再生させるためにCEOに復帰したハワード・シュルツは、
約1800人の社員を解雇をしなくてはいけない事態に陥ります。

それは、子供時代に父親が会社から解雇され、
苦労した経験を持つシュルツにとって、痛みの伴う体験でした。

同じ失敗を二度と繰り返さないという強い姿勢をもち、
3年後には、過去最高売上げを達成し、
スターバックスの奇跡の復活をなし遂げたリーダーです。

また、あのスティーブ・ジョブズの挫折のひとつは、
自ら創業したアップルを、ジョブズ自身がくどいて連れてきた
ジョン・スカリ一に追い出されてしまったことかもしれません。

しかし、アップルを追い出されるという経験がなければ、
iPhoneもiPadも、そしてToy Storyも生まれていなかったかもしれません。

現代のように複雑で変化が激しく、
不確実な環境の中で生きるリーダーにとって、
失敗は避けて通れないもののように思います。

コロンビア・ビジネススクールのリタ・ギュンター・マグレイス教授は、
「失敗は成功に近づく実験とみなして、いかに役立てるかという発想が必要だ」
と説いています。(※1)

また、ショーン・エイカーの『幸福優位の7つの法則』には、
90人の協力者にソフトウェアのトレーニングを受けてもらう
実験が紹介されています。

それは、ひとつのグループには、ミスが起きないようによく指導し、
他のグループはミスをするように誘導すると、
後者のほうが、より高い自己効力感を示したばかりか、
自分で失敗を切り抜ける方法を発見し、
より早くそのソフトウェアを正確に使えるようになった、
というものです。(※2)

私がコーチしている、あるリーダーの方は、
「人は、たいてい失敗を嫌がるけど、この時代、失敗するのは当たり前。
 不注意による失敗や致命的失敗は論外だけど、失敗するのが早いほど成功も早める。
 まずは失敗を楽しまないとクリエィティブな製品は生まれない」
 と言い切っています。

失敗を「成功に至るフィードバック」として意味付け、
常に、「この失敗から学べることは何か」を考えることで、
製品開発のスピードアップを心がけていました。
失敗すればするほど、そこから得られた情報が成功を導いてくれる、
と信じているようでした。

この方は、ご自分が管轄する組織の中でも、
部下同士で失敗を共有することを奨励していました。

時には「失敗ナレッジランチ」と称して、
ランチを食べながらそれぞれの業務上でのミスや失敗を共有することで
事故率の低減や開発スピードのアップを図っていました。

現代のような解が明確でない時代には、
リーダーは最初から失敗や挫折を避けるのではなく、
むしろそれをスプリングボードにし、
自分自身と、さらには周囲のパフォーマンスをも上げるという
発想を持つことが大切なことかもしれません。

最後に、失敗に関するある人の名言を。

「エジソンは失敗を楽しんでいたんとちゃいますか」
                  ジミー大西

【参考文献】

『スターバックス再生物語 つながりを育む経営』(徳間書店)
ハワード・シュルツ (著)、ジョアンヌ・ゴードン (著)、 月沢 李歌子 (翻訳)

※1
「知的失敗の戦略」 リタ・ギュンター・マグレス
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2011年 7月号

※2
『幸福優位の7つの法則』(徳間書房)
ショーン・エイカー (著)、 高橋由紀子 (翻訳)

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