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自分の価値観を明確にする

サンタクララ大学リービー経営大学院の
ジェームズ・M・クーゼス教授とバリー・Z・ポズナー教授は、
「価値観や信念が明確になっている場合と
 そうでない場合のちがいを知る」ことを目的に、
「個人の価値観と組織の価値観の明確度と、
 それがメンバーの参加意欲や仕事の満足度に及ぼす影響」を
調査しました。(※1)

「価値観」とは、人が様々な判断をするときの意思決定の
基になる信念のことを指します。

クーゼス教授らの調査結果は興味深いものでした。

メンバーは組織が定めた価値観が明確か否かには
それほど大きな影響を受けておらず、
むしろ「個人の価値観の明確度によって、メンバーの職務態度は大きく変わる」
ことが分かったのです。

組織の価値観は、組織の意思決定の基になる信念であり、
よく「行動基準」、「行動指針」というような名称で呼ばれています。
その内容には、たとえば次のようなことが書かれています。

「失敗を恐れず、革新的なことに挑戦する」
「自ら考え、行動し、新たな顧客価値を創造する」

このような組織の価値観をポスターとして張り出したり、
冊子やDVD、携帯ストラップのようなグッズを配ったりする企業もありますが、
クーゼス教授らは
「自分の価値観や信念を理解していないかぎり、
 いくら経営幹部が膝をつき合わせて組織の価値観を考え、
 それをビデオやセミナーや印刷物を使って宣伝しようと、
 効果はほとんど期待できない」
と述べています。


では、個人の価値観が明確かどうかが、
職務態度に大きな影響を与えるのはなぜでしょうか。

私は、自分自身の価値観が明確になると、
「この組織が自分の価値観と合うかどうか」がはっきりするからだ、
と考えます。

自分の価値観に合う組織だということがはっきり分かっていれば、
この組織で力を発揮しようとするでしょう。

逆に、自分の価値観に合わない組織だということがはっきりすれば、
自分の価値観をどのように生かすのか、
自分なりの行動の可能性について「考える機会」が生まれます。

うまく意味づけが出来れば、自分がこの組織に身を置く理由が明らかになり、
その結果、組織への参加意欲は高まります。

場合によっては、この組織は自分の価値観に「合わない」ということが明らかになり、
別の組織を選択することもあるかもしれません。
ですが、その場合は、新たに選択された組織に対する参加意欲は高いはずです。

ここまで考察したとき、一つの疑問が湧きます。

組織の価値観が明確でない組織で、
その組織が自分の価値観に合う組織なのかどうかは
どのようにしてわかるのでしょうか。

それは、組織の価値観というのは、たとえ明文化されていなくても、
「すでに存在しているもの」だからではないでしょうか。

私たちは、日々の周囲の人たちの言動や経営者の意思決定から、
この組織がどのような価値観で動いているかを「感じる」ことができます。

冒頭でご紹介したクーゼス教授らは、この点について、
「組織の価値観を教えられなくても、
 メンバーはいずれ、その組織が自分の価値観や信念と
 一致しているかどうかを察知するようになる」
と述べています。

クーゼス教授らの調査結果を知って、思い出した人がいます。
それは、M&Aを繰り返しながら急成長した、ある会社の役員の方です。

いかにして社員の意欲を高めるか、
その方法として教えてもらったものがあります。

それは、
「すべての社員が自由に、出身会社が違う、考え方が違う、感じ方も違う、
 というような一人一人の『違い』を積極的に口にする文化をつくる」
というものでした。

買収によって自分の組織に新しいメンバーを迎え入れた時でも、
新しい組織の価値観を押し付けようとするのではなく、
一人一人の「価値観の違い」を大切にするのだそうです。

「一人一人みんな価値観が違うんだ」ということが
組織の中でお互いに当たり前になれば、
「出身会社の違いなんて大したことではない」
という気持ちになるのだそうです。

そういえば、先日、地下鉄の駅で「天声人語」が載った
朝日新聞の広告を偶然見かけました。
そこにはこんなことが書かれていました。

「"LOVE"と"LIKE"はどう違うのか。
 何で読んだか思い出せないのだが、
 ある説明に感心して書き留めたことがある。
 LOVEは異質なものを求め、
 LIKEは同質なものを求める心の作用なのだそうだ。(以下略)」(※2)

組織に必要なのは、
一人一人の異なる価値観を求めるような"LOVE"だ、
とは言い過ぎでしょうか。

あなたはどんな価値観を持っていますか。

【参考文献】

※1『リーダーシップ・チャレンジ』 (海と月社 2010)
  ジェームズ・M・クーゼス、バリー・Z・ポズナー(著) P77-P78

※2「天声人語」 2010年11月10日付 (朝日新聞)

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