Coach's VIEW

Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。


後継者プラン

後継者プラン | Hello, Coaching!
メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

米証券取引委員会(SEC)が、2007年の世界的な金融危機をきっかけに興味深い発表をしていました。

「これからは、全ての上場企業の『後継者プランニング』の実情も精細に調べる」というもので、「後継者プランを示すこと」は取締役会の極めて重要なファンクションの1つである、としています。(※1)

アメリカでは、「後継者マネジメント」は企業のタレントマネジメント戦略において重要な位置を占めていますが、日本では「後継者プランニング」や「後継者マネジメント」という言葉そのものが、まだなじんでいないように思います。

Deloitte社が英、米、中、印、日、ブラジルの6カ国における金融業界で実施したリサーチによれば、「自分の会社の『後継者プランニング』は狙い通りに行っていると強く感じる」と回答したエグゼクティブが2%以下だった、というデータもあります。(※2)

日本に限らず、実は、どの国の企業も、自社に最適な「後継者育成」を模索していることがうかがえます。

そして、「後継者育成」は、いうまでもなく、「計画的に」行う必要があります。今の経営陣がその会社を去ることが決まってから、誰にするかを選べばいいという訳ではありません。現在のリーダーと次のリーダーが、お互いのビジョンや価値観を交換し、経営に関する戦略を言語化し、共有する必要があるでしょう。

そもそも、会社を成長させるには、リーダーの数を増やすこと、さらに、彼らのリーダーシップが発揮されることが大事です。

また、リーダーシップには、当然、「次世代リーダーの育成」も含まれています。会社の経営は通常の業務や教育だけではなく、後継者育成がいつの時代にも含まれています。したがって、「後継者育成」に力を注がないリーダーは、「経営者感覚が低い」と判断されます。

さて、Bersin & AssociatesがCCLと実施した「ハイ・インパクト後継者マネジメント」に関するリサーチ報告の一部を紹介します。(※3)


リサーチでわかったことは、ハイ・パフォーマーかもしれない人材はたくさんいるが、マネジメント・ポストに適任な人はほとんどいない、ということだ。

一人ひとりの社員が、

・個人プレーヤーとして会社に貢献する人なのか、
・マネジメントに最適な人なのか、

などを見極めることは難しい。

なぜ組織は、「適任ではないのに、リーダーシップ・ポストに任命してしまった」という間違いを犯してしまうのか?

それには、4つの理由が考えられる;

1. リーダーシップ戦略が未開発または存在しない
2. リーダーシップ・モデルの欠如
3. ハイ・パフォーマーのキャリア・パスに対する(組織的な)誠意、信頼性、透明性の欠如
4.「ハイ・パフォーマー」と「ハイ・ポテンシャル」の定義(違い)が共有されていない


2009年に「後継者マネジメント」をテーマに開催されたカンファレンスボードで、リーダー候補にふさわしい人材についてあるグローバル企業のCEOは、以下の2つの「成果(results)」で見極めていると話していました。

・業績(business)
・人 (people:他の社員の開発に成功しているか? 自分の開発に成功しているか?)

つまり、組織のリーダーとして求められる条件は、業績を上げ続け、人を開発し、自分も学習し続けるリーダーであること、すなわち、業績が上がるようなマインドセットを作り、「次のリーダーを開発するリーダー」 を創ること、と言えるでしょう。

さて、先述のSECは、企業の取締役会は、以下の内容を含む、詳細な「CEO後継者プランニング」の政策を明らかにするように求めています。(※1)

・その会社のCEOのポストにふさわしいとされる包括的な基準は何か
・社内の候補者が誰で、その候補者に対して適切な「開発プラン」が実行されているか
・社内の後継者を評価するための、正規の評価プロセスとして何を設けているのか

これまで、後継者問題とは中小企業の抱える問題として考えられてきました。

実際、上場企業には優秀な人材が集まり、その中から、現在のCEOが次のCEOを選ぶということに関して、あまり疑問を抱かず、慣習として受け入れて来た傾向があります。

しかし、近年その選出のプロセスや基準を明らかにする必要が出て来ました。それは、単に株主への説明だけではなく、会社の従業員もまた、選出基準やプロセスや理由を知りたいと思っているからです。

Bowerは、Business Week誌の中で、次のように指摘しています。

「最高のCEO後継者プランとは、自立心の高い 『社内の人間(insiders)』 を、トップとしてふさわしく訓練することである」(※4)

最後に、「後継者」 にあたる英語 「succession」 には、「継続、連続(すること)」という意味もあります。

誰でもリーダーシップを発揮できる環境を創る。5年後も、10年後も、この会社組織の中で、「リーダー」「リーダーシップ」を確実に「継続させてゆく」ことは、「今の経営陣」の「責任」なのです。

【参考文献】

※1
"The corporate director and succession planning",
2010 The Korn/Ferry Institute

※2
"The Leadership Premium",
2012 Deloitte Global Services Limited

※3
"High-Impact Succession Management",
Bersin & Associates and Center for Creative Leadership

※4
"The Leader Within Your Company"
by Joseph L. Bower on April 15, 2008, 2012 Bloomberg L.P.

この記事を周りの方へシェアしませんか?


※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

コーチング・プログラム説明会 詳細・お申し込みはこちら
メールマガジン

関連記事