Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
変革リーダーに大切なこと
コピーしました コピーに失敗しました今年は、国内外でリーダーが交代する場面が多々ありました。
今年最後の機会に、「変革リーダー」にはどんな姿勢や特性が求められているのか、フォロワーたちは、どんな期待を「変革リーダー」に寄せているのかを改めて考えてみたいと思います。
先日、ウェブアンケートで「変革リーダーに必要な特性」について読者の皆様にお尋ねし、424名の方がご回答くださいました。結果は以下の通りでした。
第1位 大きな方向性を示す 54.5%
第2位 考えを分かりやすく伝える 53.8%
第3位 広い視野で考え判断できる 46.0%
第4位 部下のモチベーションを上げる 40.6%
第5位 人を育成するという強い意志を持つ 31.8%
第6位 話しやすい/相談しやすい雰囲気である 27.4%
第7位 誠実で自信をもっている 23.6%
第8位 何事にも主体的に取り組む 12.0%
第9位 仕事が速く成果をあげている 3.8%
(複数回答:10項目から3つを選択)
結果からは、「変革」というのプロセスの中でフォロワーが直面するであろう不安定や混沌、不安などの状態を乗り越えさせるようなリーダーの行動や特性が望まれているように感じられます。
すなわち、
・目指すべき「ビジョンや方向性」を示している
・それも、「わかりやすく」伝えられている
・同時に、変化する環境の中で、「適切な判断」をしている
・さらには、変革に向けて周囲の人の「意欲」を引き出している
私が1年にわたってコーチングをさせていただいたあるメーカーの海外子会社の社長、Aさんは、まさに「変革リーダー」のお一人でした。
Aさんは、厳しいヒエラルキー構造をマネジメントの土台とした、前任のローカル社長からバトンを受け継ぐ形で社長になりました。
本社がAさんに託したミッションは、「継続的に目標を達成できる、自由闊達で自律的な組織」の創造。
組織全体が大きな「変革」を迫られていました。
Aさんは、元々20年近くを海外で赴任され、多くの国々の人と、驚くほど強いリレーションシップを築くことで幾つもの組織目標を達成してきた経験をお持ちでした。
大きな変革を求められる新天地でも、課題に対するソリューションもリソースは「現場」にあるということを前提に、一緒に働くローカルスタッフの人たちが活性化する現場をつくることがトップとしての役割だと明確に考えておられました。
そのためには、まずはその国の生活に入り込み、その地をトコトン好きになることからAさんの仕事は始まります。
現地の言葉で歌を覚えたり、赴任者の多くが日本に一時帰国するような国民のホリデー週間(日本の正月のようなお休み)にも日本に帰国せず、ローカルの人の自宅で、その土地ならではの行事に参加したりといったことを日々実践されてきました。
その土地に飛び込むAさんの姿勢を見たローカルスタッフとの間には、次第に、強い信頼関係が築かれていきます。
Aさんはさらに、5~6人単位で2時間の夕食をするなど、彼らの想いを聞く機会を頻繁にもちました。
それと平行して、「こちらの想いを伝える」ことにも意識的、かつ徹底的に注力されていました。
ブログや現地の新聞などに登場し、リーダーとしての自分個人のこと、会社のことなどを言葉や写真、映像などを通してわかりやすく「可視化」することを心がけてきたといいます。
自身と自身の想いをわかりやすく伝える。
それと同時に、彼らの話を聞き、アイデアを取り入れることで彼らをモチベートし、組織の進むべき方向性や到達点を明示してきたそうです。
こうして、業績的にも目標を達成できる「強い組織」を創造されてきました。
コーチングセッションの開始にあたって、リーダーシップの状態を測るアセスメントを実施した際に、Aさんのリーダーの強みとして、ローカルスタッフが挙げたのは、
「考えをわかりやすく伝える」
「大きな方向性を示す」
「誠実で自信をもっている」
「部下のモチベーションをあげる」
という項目でした。
冒頭のリサーチ結果とすべてが一致するわけではありませんが、いくつかの共通した特性が出てています。
リーダーシップ研究家として著名なJames M.Kouzesらは、「称讃されるリーダーの特質」について世界中でアンケートを実施し、75,000人以上の回答を得ました。
その結果は、「正直であること」「先見の明のあること」「わくわくさせてくれること」「有能であること」でした。
「正直さ」はリーダーの「誠実さ」や考えや伝えていることが透明化されているか、すなわち「わかりやすさ」にも関連するだろうし、「先見の明がある」は組織の未来を描く「大きな方向性」に、そして、「わくわくさせてくれる」はメンバーを元気づけ、希望を与える「モチベーション」につながります。
予想したことではありましたが、改めて、これらのリサーチ結果からは、変革を志しているリーダーの方は、
・「ビジョン」を示しているか
・ それを「わかりやすく」伝えているか
・ 同時に周囲から「信頼」されていて、
・「モチベーション」を引き出しているか
が大事なテーマだということがわかります。
さて、新たな年を迎えるにあたり、来年はどんな変革をもたらすか、そして、そのために、リーダーとしての自分には、上記の4つのどのテーマが一番必要なのかを考えてみるのもいいかもしれません。
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