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信頼関係を築く
2013年01月16日
組織やチームの生産性を上げるうえで、信頼関係を築くことは大事です。しかし、信頼関係はどのように築かれるのか、普段私たちは明確には意識していません。
「上司が部下と信頼関係を築く上で重要な要素」
先日、「上司が部下と信頼関係を築く上で重要な要素」について読者の皆様にお尋ねし、191名の方がご回答くださいました。結果は以下の通りでした。
(複数回答:10項目から3つを選択。数字は、回答者数191名中、その項目を選択した人数の百分率。それぞれ上位5項目を表示)
上司が部下と信頼関係を築く上で重要な要素(日本人同士)
- 発言していることと、行動・態度が一致している 54.5%
- 組織で起こったことに対して責任を取っている 42.9%
- 誠実である 38.2%
- 相手の性格や特徴にあったコミュニケーションをしている 30.9%
- 誰に対しても公平に振る舞っている 27.7%
上司が部下と信頼関係を築く上で重要な要素(異文化環境下)
- 自分の考えや価値観をしっかり持っている 51.3%
- 発言している事と、行動・態度が一致している 37.2%
- 相手の考えや価値観を知っている 36.6%
- 相手と1対1で話す機会を設けている 27.7%
- 相手の性格や特徴にあったコミュニケーションをしている 26.7%
「信頼関係を築く」ことについて、自分自身を振り返る
最近、「信頼関係を築く」ことについて、自分自身を振り返る機会がありました。
私にとって、最も近い部下Oさん(日本人駐在員)と私の間の信頼関係はどうなのだろう? と思ったことがきっかけでした。裏を返せば、Oさんとの信頼関係は、まだまだ十分というには程遠いと自分で感じていたのだと思います。
そこで、Oさんに我々がより良い関係を作り、チームとして業績を上げるために、答えにくいかもしれないが、是非率直に答えてほしい、と伝え、いくつか質問をしました。
Q: Oさんが信頼されている、と感じる時はどんな時か?
A: 仕事を任されているとき。
Q: 逆に信頼されていない、と感じる時は?
A: 仕事をチェックされるとき。
ここで、過去にOさんの仕事を細々とチェックしたことが私の脳裏をよぎります。
Q: 今、私がOさんをどの程度信頼していると感じているか?
A: 6割程度。
Q: 以前はどうだったか?
A: 一緒に仕事を始めた7か月前は、1割程度。
Q: 逆に、私のことをどの程度信頼しているか?
A: 今は6割、7か月前は1割。
現状「6割」は、私の感覚とずれはなかったのですが、1割の方はショックでした。
当初の信頼関係1割時代、Oさんには、私が、「Oさんを御してやろう」という感じに映っていたと言います。
私自身は、信頼関係を築くことを強く意識したつもりが、実際には、信頼関係を築くことよりも、「なめられてはいけない」とか「厳しく指導しなければ」といった思いが先に立ち、それがOさんに伝わっていたのだと思います。
他にも、「任せるので、自由にやってほしい」と言いながら、時々、細かく口をはさむことがある、というフィードバックがありました。
私にしてみれば、リスクを感じた際には、細かい指示も必要だと思っていたのが、Oさんからすると「任せるけど任せない」というダブルメッセージに見えていたのです。
発言していることと、行動・態度は一致しているか
まさに、「発言していることと、行動・態度が一致している」ができていなかったことになります。同時に「誠実さ」も損なわれていたのかもしれません。
また、Oさんは人に指示されることを嫌う典型的なコントローラータイプで、それを踏まえての、「自由にやってほしい」というメッセージだったつもりが、リスクを目の前にすると、それが二の次になっていたのでしょう。
「相手の性格や特徴にあったコミュニケーションをしている」これも、失格。
今回の調査で「日本人同士の信頼関係構築に重要」と評価された項目で、私は軒並み不合格の例になってしまいました。
今回の調査の、「異文化環境下でより重要」だと評価された項目には、「考え」や「価値観」という言葉がそれぞれ2回出てくるのが印象的です。
香港・華南地区で私がコーチしている駐在員の方からは、「現地社員が何を考えているのかがわからない」「価値観が違う」という声をよく聞きます。
こうしたケースでは、価値観が違うということは認識していても、どう違うのかがわかっていなかったり、推測してわかったつもりになっていたりすることが多いように感じます。
信頼関係と価値観
信頼関係と価値観というキーワードで、自分自身の20代の頃の体験を思い出しました。
当時私は、南米で多国籍チームの一員としてある調査活動を3年間行っていました。
各国のパートナーやエージェントと協力関係を作って進めるプロジェクトで、日本人は自分ひとりという、まさに異文化環境です。
当初、チーム内のコミュニケーションはバラバラでした。私は、他のメンバーに対して、「虫のいいことを言ってるな」とか、「そんなこと、できるわけないだろう」などと思い、チームの慎重派としてNoを言う役回りでした。
しかし、それでは、物事は前に進みません。
ある時、オーストラリア人のメンバーに、「じゃあ、お前はどうしたらいいと思うんだ?」と迫られました。その時に、自分が自分の基準や価値観だけで判断し、それを周りに押し付けていたことに気づかされました。
それから私がしたことは、まず、相手の言うことを「すべて」聞くこと。そして、それに対して、「自分がどう思うか」をすべてダイレクトに伝える、ということでした。
ひたすらこれを繰り返す。
その過程で、お互いの価値観が共有され、信頼関係が築かれていったのでした。
価値観やものの見方をお互いに知ることが、信頼関係につながることを思い知らされた体験でした。
このことは、チーム外部のパートナーやエージェントとの協力関係を作る際にも機能しましたし、後に日本企業でプロジェクトメンバーにさまざまな国の人たちを持った時にも、役に立ちました。
個人対個人も、広い意味で異文化環境
今回の調査結果の中で、「相手の考えや価値観を知っている」の項目は、日本人同士で、18.8%、異文化環境下で36.6%でした。日本人同士であれば、ある程度価値観が共有されているからでしょうか。
また、「自分の考えや価値観をしっかり持っている」では、日本人同士が23.0%、異文化環境下で51.3%です。
自分の考えや価値観を問われる場面が、日本人同士よりも異文化環境下の方が圧倒的に多いということでしょう。
とはいえ、日本人同士の場合も、それぞれ18.8%、23.0%の方が選択しています。
私は、個人対個人も、広い意味で異文化環境だと思います。
我々の価値観やものの見方は一人ひとり違うのです。その意味でも、日本人同士でも異文化環境は必ず存在するのです。
私とOさんの「信頼」も、価値観とまではいかなくとも、お互いの考えやものの見方についてダイレクトに伝え合うことで、次のステージに入ったと思います。
ビジネス環境がどんどん多様化していく今日、チームの生産性を高める信頼関係を築くには、やはり、お互いの価値観やそれぞれの考えを知る努力をすることが、日本人同士であろうと異文化環境下であろうと、大事なのではないでしょうか?
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