Coach's VIEW

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思いを共有するもうひとつの方法とは?

松下幸之助さんは部下から意見具申や報告を受けると、
すぐには良し悪しの判断や感想を言わずに
「なるほど、それで?」と聞くことが多かったのだそうです。

聞かれた方は一瞬あっけにとられるけれど、
「それで?」と言われた手前、
自分なりに一生懸命にいろんなことを考えてしゃべる。
今までの反省、今後の課題、自分の思いなどなど。

松下氏はそれにうなずきながら、相手がもっと話すことを促す。
で、最後の最後に、
「それはどのくらい儲かるんや?」と聞く。

先頃亡くなったリクルート創業者の江副浩正さんも
社員に「それで、君はどうしたいと思っているんだ?
それでいくらの利益が出ると試算しているのか?」
を繰り返し聞いたといいます。

今でも、リクルートの社内会議では議論百出した際に
最後は「どのくらい利益がでるのか?」という基準で
取捨選択が行われるとのことですから、
創業者のDNAが徹底していることがうかがえます。

私がエグゼクティブ・コーチングをさせていただいている
欧米の海外現地法人トップの方からは、

「ローカル社員との関係構築に困っている」
「ローカル社員になかなか思いが伝わらない」

というお話を多く聞きます。

「ローカル社員との付き合いで苦労していることは何ですか?」 という、
先日メールマガジンの読者を対象に行ったアンケート調査でも、
実に66%の方が「自分の意見や思いが伝わらない」と回答しています。

第2位の23%「相手の意見や思いを理解できない」と合わせると
圧倒的に「相互理解」が課題であることがわかりました。

先にご紹介したお二人の経営者については
薫陶を受けた方々が多くの著書で当時の様子を語っていますが、
面白いのは、質問されているときには、
一生懸命それに答えていただけであったのにも関わらず、
「社長(松下さん、江副さん)の思いが伝わってきた」
「価値観が共有できた」と感じていることです。

かつ、その後も
「同じ質問をされたら何と答えようか?」と
延々と自分の中で「問いが残り、考え続けた」ということが書かれていることです。

実はこの二人の経営者が実践されていた対話は、
とても「コーチ的な関わり方」と言えます。

 ・いかようにも答え方が考えられる、間口の広い、オープンな質問をする。
 ・相手にどんどん話をさせる。
 ・「こうじゃないのか」と意見する代わりに、視点を変え、ポイントを確認する質問をする。
 ・「あなたはどうしたい?」「あなたが何をすれば状況が変わるのか?」など、
  相手の主体性を引き出す質問をしている。
 ・質問のパターンをある程度固定する。(「それで儲かるの?」のようにワンパターン化)

わたしたちは、意見や思いを相手に伝えるには
「こちらが一生懸命話さなければいけない」と思いがちで、
その結果、なかなか伝わらないと悩んでいるわけです。

ですが、実は「相手に効果的に質問をしてどんどん話をさせることで、
話し手の意見や思い、価値観を共有する」という方法もあるのだということが
こうしたエピソードから伺うことができます。

人は、対話をしながら自分の話を自分で聞いて
自動的に頭の整理をしたり、行動確認をしたりしています。

これをコーチングでは
「オートクラインが起きている」といいます。

自分で話して伝えていくことも
もちろん大事なコミュニケーションですが、
部下にオートクラインを起こす関わり方をしてみるのも
またもうひとつのやり方と言えます。

「コーチ的な関わり方」をはじめると、最初のうちは
多くの方が「質問しても相手から答えが返ってこない」
と戸惑われます。

しかし、根気強く続けることで、
「答えやすい質問から徐々にしていき、たくさん話をしてもらえるようになった」
「以前はすぐに言い訳をしていたスタッフが言い訳をしなくなってきた」
「指示待ちだったスタッフが自分からアイディアを持ってくるようになった」
など、その変化に驚かれる方も少なくありません。

また、「これからの海外駐在員に語学力以外で重要だと思う能力は?」
という読者の方へのアンケートの回答で一番多かったのが、
「ローカル社員との関係構築能力」(42%)でしたが、
「ローカル社員への指導力」や「本社キーパーソンとの関係構築力」
を挙げた方もいらっしゃいました。

関係構築力や指導力は、
必ずしも「発信力」や「指示の的確さ」だけによるのではなく
「聴く力」や「質問し、相手に話をさせる力」によっても構成される、
ということを多くの実例が示していると言えるでしょう。

【参考資料】

『「で?」の一言で部下のやる気に火をつける~人を動かすコーチの9つの習慣~』
鈴木義幸著 (講談社+α新書)

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