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リーダーを開発する

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Korn/Ferry International 社による企業エグゼクティブの「自己認識」のレベルを測るテストでは、「エグゼクティブの79%が、自身が強みと認識している点を、周囲は弱点とみなしていることがわかった」としています。(※1)

リーダーの自己認識のズレ。これは、方向性を決め、物事を決断するリーダーだけでなく、組織にも大きなリスクであることは言うまでもありません。

過去の価値観や経験が通用しない今、リーダーの自己認識のズレは、増加傾向にあることが想像できます。

特に、グローバルビジネス環境下では、市場の動きや組織内の情報など、駐在員であるリーダーよりも現地の部下の方が詳しい領域があります。

現地情報の収集の域を超え、現地の部下から日常的にリーダーの成長を促すようなフィードバックを得る機会があれば、リーダーの自己認識のズレは少なくなるのではないでしょうか。また、それを真摯に受け止め、取り組むことで、リーダーとしての影響力も一層磨かれていくはずです。

しかし、リーダーに価値あるフィードバックは、うまく聞きさえすれば出てくるものではありません。

私の駐在する中国では、上司のリーダーシップについてアンケートをとると、中国人部下による上司評価が非常に高くなる傾向があります。

コーチング研究所(CRI)の蓄積データでも、日本人よりも、中国人部下の方が上司に高い点数をつける傾向であることが分かっています。

中国では、元々、上位者(権限を持つ人)に本音を言わない文化が根強く、私も中国人の異常な「上振れ」評価はそのせいだと思っていました。

しかし、徐々に理由はそれだけではないことに気づきました。

それは、部下の「フィードバック力の低さ」です。

この現象は、日本人が組織の上位層を占める組織で多くみられます。日系企業の現地法人では、社員が自分の上司以外のリーダーに接する機会が限られていることが多く、比較対象がないまま、高評価をつける結果になってしまうのです。

また、現地社員は現地市場開拓、日本人は本社と関連する仕事、といった明確な役割分担があり、他部門への視点も非常に限られています。つまり、自分より上の立場や全体視点でものを見、考える機会が圧倒的に少ない、ということが言えます。

では、部下のフィードバック力を磨くにはどうしたらいいでしょうか。比較的スピーディに効果が期待できる方法の一つに、フィードバックの反復練習があります。

部下に、上司である自分や、さらにその上の上司が見ている世界を伝え、視点や想像する機会をたくさん作るのです。

具体的には、自分の課題やミッション、上司から求められていることを詳しく伝え、
「業務が円滑に進むように、他部署、社外の人と交渉しているか?」
「常に広い視野で物事を判断しているか?」
などについて繰り返しフィードバックを求め続けるのです。

そもそも、人は、他者に影響を及ぼすことを喜びに感じます。上司が自分のフィードバックを真摯に捉え、その言動に変化が出てくれば、上司への関心は深まるでしょう。

中国でも、同じ質問で繰り返しフィードバックを要求し続けると、上司への評価点数が適正に下振れしていきます。自由回答でも、上司への要望が明確に書かれ、上司がハッとするようなフィードバックが出てくるようにもなります。

さらに、効果的なフィードバックができるようになると、部下自身の自己認識も変化するという相乗効果が生まれることがあります。自己評価にメリハリがついたり、自分の課題を明確に把握できるようになったり、自ら上司にフィードバックを求めるようになる人もいました。

このように、フィードバックループが生まれた組織では、強みの異なる上司と部下が相互関係の中でお互いを開発し、組織としての一体感が自然に増していきます。

本メールマガジンの読者への「部下育成の目的は何ですか?」というアンケートでは、圧倒的多数の方が、
「長期的視点に基づく組織発展のため」(74%)
「部下自身のキャリア成功のため」(53%)
を選択されました。

「自分自身の成長のため」は18%に留まりましたが、自由回答欄には、
「部下を育て、自分が新しい領域/希望する領域に進むため」
「成長したら職種を変えそうな部下には育成意欲もわきにくいが、部下の成長は、自分自身の成長にもつながると思う」
などのコメントも複数頂きました。

「部下育成は、最終的には組織発展のため、部下自身のキャリアのため。
でも、その過程は自分自身の成長やキャリアにもメリットがある」と思っている方が少なくないのだと感じました。

グローバルビジネスの中でリーダーとして成長し続けるには、部下からのフィードバックは、今後一層大きな役割を果たすものとなるでしょう。

組織の中でのフィードバックループは、リーダーである自分が開発されるだけでなく、部下の成長機会にもなる。そんな意識で、部下の「フィードバック力を鍛える」ことに深く関わってみるのもシンプルで良いかも知れません。

リーダーがパフォーマンスをあげれば、結果として必ず、組織や部下も開発されていくのですから。

【参考文献】
※1 J. Evelyn Orr
  Survival of the most self-aware
  Nearly 80 percent of leaders have blind spots about their skills.
  2012 The Korn/Ferry Institute

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