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コミットメント・チェック
コピーしました コピーに失敗しました誰もがコーチを必要としているかもしれませんが、誰に対してもコーチングが効果的であるとは限りません。
コーチングは、「成果を手にしたい人」のためのものです。より早く、より確実にゴールに到達することを促進する方法であり、対象者自身に達成や成長の意欲があることが大前提となります。
また、もしコーチング以外の方法が適切であれば、そちらがベターでしょう。コーチングが適するか否かは、使う側が自ら選択することが重要です。
そして、これらの点は、コーチングの開始前に、慎重に確認・合意される必要があります。コーチングの効果に大きく影響を与えるからです。
あるクライアントからご紹介頂いたA氏。彼は大きなチャレンジに直面し、何らかのサポートを必要としていました。
コーチングに関する一連の説明が終了した時点で、私自身が、A氏をコーチすることに躊躇しました。
自ら達成・成長することへの情熱の不足、秘策があれば教えてほしいという依存的態度。これらは、私がコーチとして成果を保証できない要因と感じました。
そこで、私は、一連の質問を通じてコミットメント・チェックを行いました。
「説明の通り、コーチは解決策を提供する専門家ではありません。コーチという方法は、あなたにとって本当に適切ですか?」
「コーチングは、ゴールに向け、あなた自身が挑戦し続けるプロセスです。あなたは、挑戦に向き合う準備ができていますか?」
そして最後、下記の点を確認して別れました。
「今、回答を出す必要はありませんが、いつまでにお返事頂くことを約束できますか?」
A氏の回答は「1週間」でした。
そして、約2週間後、A氏からお返事が返ってきました。「まだ決められないが、前向きだ」というものでした。約束の期限を超えての返事でした。
「合意した約束を守れない場合、私はコーチとして成果を保証できません。残念ながら、今回、私はコーチとして支援することができないと考えます」
率直に伝えました。
コーチングでは、「やる」と決めた約束が実現されることが、成果の大前提となります。実際に、本人自身が「やる」と決意したとき、明らかに効果が高まります。
弊社には、週1度、月4回の電話会議クラスへの参加が要求される、コーチングマネジメントを学ぶプログラムがあります。
原則としては、全回出席を要求しますが、業務上の都合を考慮し、月4回のうち1回は欠席が認められ、3回の出席でも履修となります。つまり、75%の出席率でよいことになります。(※1)
我々は、本プログラムを続ける中で、「毎回出ようとしている人と、そうでない人の成果の差異」を感じていました。
そこで、コーチング研究所が、プログラム履修期間である8ヶ月中、出席率が100%の受講者と、80%未満の受講者について、他者評価に基づく「コーチ力の伸び」を比較してみました。
結果は、下記の通りでした。
出席率100%の受講者 :0.39ポイントの伸び
出席率80%未満の受講者 :0.17ポイントの伸び
なんと「2倍以上の差」が生まれていたのです。
多忙な中、100%の出席率ということ自体に脱帽します。そして確かに、「何があろうとも、機会を使い切る」と決断した人には大きな成果が帰属するようです。
逆に言えば、コーチングの成果は、最初の時点である程度決まり得る、とも考えられます。
誰かを成果に向けてコーチする上で、
・本人がどれだけ成果に執着しているか
・方法として、コーチを使うことに前向きか
という点は、確認する価値があります。
実際、私達は、コーチングを開始するに当たり、下記のような確認を通じて「コミットメント・チェック」を行います。
・コーチングで扱うミッション、ゴールに対して意欲的であるか?
・コーチングという機会は、支援方法として相応しいものであるか?
・コーチングで提供される機会(課題等)を最大限活用する意思があるか?
・成果に向けてコーチとの間でなされた約束を守る意思があるか?
・コーチは、自分が成果を上げるために相応しいか?
この確認の過程で、相手のコミットメントを確認し、それを引き出します。先日メールマガジンの読者の方に行ったアンケートでは、「コミットメント・チェック」に有効な質問について、多くのアイディアを頂きました。
・あなたは何を目指そうとしているのか?
・本当に今、やりたいことなのか?
・それを実行しないとどうなるのか?
・この決断をしなければ、どうなるのか?
・決断に対して自信を持ってYesと言えるか?
皆さんが今一度コミットメント・チェックをしたい方はどなたでしょうか?
どのような問いかけが有効でしょうか?
※1 本記事公開当時の履修条件です。
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