Coach's VIEW

Coach's VIEW は、最新のコーチング情報やリサーチ結果、海外文献の紹介を通じて、組織改革や人材開発、リーダー開発グローバルビジネスを加速させていくヒントを提供するコラムです。


権限委譲とリーダーシップ

日系現地法人の長らくの課題とも言える「人材の現地化」。

中国では、この数年で
これまで日本人が定位置に占めてきたポジションに
中国人が就くケースが、確実に増えているように思います。

そこには、単に人を入れ替えるのではなく、
「中国人リーダーによる中国法人」として現地での事業を躍進させたい、
という企業の意志のようなものを感じます。

ただし、本社と比較すると、現地法人は組織も小さく歴史も浅い。
リーダーを任せられる候補者は、数的にも限られているのが現状ともいえます。

そのような中で、
「この人ならばやってくれるだろう」と期待を込め、
「任せるならこの人しかいない」と心を決め、
思い切った昇格と権限委譲をされている様子もうかがえます。

思い切った判断であればあるほど、
「新たに選んだリーダーを成功させたい」という思いが強くなるのは
当然のことと思えます。

***

ある書籍で、ユニークな組織をもつ企業が紹介されていました。(※1)

高性能素材で1,000種類を超える製品を創りだし、
世界50拠点で9,000人の社員を雇用し、
50年以上黒字を続けている優良企業です。

この企業には、組織の階層がありません。
CEO以外の社員はみな同列です。
「上司」がいないので方針も指示もありません。
徹底された企業理念に基づき、自分のやるべき仕事は自分で決め成果を出すこと、
社員に求められるのはこれだけです。

そうした環境の中で、仮に、多くの社員が
自分の身の回りの狭い範囲でしか目標設定しなかったらどうなるでしょうか。

1,000種を超える製品を創りだし、9,000人を雇用し、
50年以上の黒字をだすといった偉業など、
到底成し遂げられないでしょう。

では、全員が同列の中、この会社ではどんな人が
リーダー役となっているのでしょうか。

それは、「自分がついていきたいと思うか」という
シンプルな基準で社員たちが自ら決めるのです。

まず、誰かが自らビジョンや目標を発信し、周囲に働きかけます。
すると、それに魅力を感じた人や、自らの目標を重ね合わせることができた人などが、
おのずとフォロワーとなり賛同し始めます。

こうして最初に発信し始めた人が、リーダーシップを発揮していくのです。

***

一方、ピラミッド型の組織では、往々にして業績達成などの結果として、
先に「リーダーとしての権限」を与えます。
その後で、「リーダーの役割」として、
周囲を巻き込み成果を上げることを求めます。

先にご紹介した企業とは、リーダーの創出プロセスが異なります。

しかし、ピラミッド型の組織の中では、
リーダーとして与えられた権限をもってしても
周囲を巻き込めないことがまま見受けられます。

そのような場合、リーダーとしての権限はないも同然で、
本物のリーダーとは、与えられた権限の有無でなく、
自らが主体的に周囲に働きかけ、巻き込みながら
リーダーシップを発揮していく「周りに賛同されるリーダー」
とも言えるのではないでしょうか。

振り返ると・・・・・

果たして、現地化を促進したい日系企業では、
中国人のリーダー候補者に、自らの力で周囲からもリーダーとして
認められるような成長を促す関わり方ができているでしょうか。

日本本社との交渉時には、今までどおり日本人が参加する、
リーダー候補者の面子をつぶすことを避けて責任を追及しない、
といったことが続いてはいないでしょうか。

どこかで、彼/彼女の成功も失敗も、会社や自分の責任だ、と
日本人の側が必要以上に思ってしまってはいないでしょうか。

「権限委譲」の中の「委譲」という言葉には、
単に意思決定権や責任を移すということのみならず、
「責任のすべても含めて物事を遂行する権利を託す/任せること」
という意味もあるようです。

いったん「委譲」したのであれば、
難易度の高い日本とのコミュニケーションなども含め
すべてを任せ、望ましくない行動は厳しく責任を追及する。
そうした覚悟が必要であるような気がします。

会社として昇格させ、権限を与えたからには、
その人自身が主体的に会社全体を成長させようと思わない限り、
いずれリーダー不在の会社となり、「現地化の後退」にすらなりかねません。

そうならないためにも、
上司はよきコーチになる必要があります。

コーチとは、アドバイスをしない、自分の経験を話さない、問題を解決しない存在です。
しかし、適度な距離を取りながらも、その人の成長と目標達成にコミットする人です。

その人が自らの主体性により、
周囲からもリーダーとして賛同される存在になるように、
考えさせ、行動させるという関わり方で。

***

「幹部育成」を求められる立場にあるメールマガジンの読者の方に
「あなたが部下を幹部候補者として推薦するときには、何が決め手になりますか」
(選択肢から3つを回答)」についてアンケートしたところ、
 311名の方がご回答くださり、下記のような結果となりました。

コミュニケーション能力の高さ         203名(23%)
広い視野(中長期視点/全体視点)を持っている 181名(20%)
主体性の高さ                 138名(15%)
部下育成能力の高さ              114名(13%)
成果に対するコミットメントの強さ       108名(12%)
戦略推進能力の高さ               85名(9%)
業績達成をし続ける能力             29名(3%)
会社へのロイヤリティの高さ           15名(2%)
その他 23名(3%)

成果や実績にむけた能力よりも、
周囲を巻き込みながら自ら動くことに関連する項目が期待されていることが、
この結果にも出ているのではないでしょうか。

【参考資料】
『経営は何をすべきか』(ダイヤモンド社)
ゲイリー・ハメル (著)、 有賀 裕子 (翻訳)

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。

関連記事