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エピジェネティクス

エピジェネティクス
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「コーチングだけではうまくいかないのでは?」

これは、長年コーチングを学んだ人からも時々聞く言葉です。

コーチングの目的は、リーダーを開発すること。上司と部下の関係で言えば、部下のアカウンタビリティ(主体性)を「発揮させること」です。上司は、日々、さまざまな表現や方法で部下のアカウンタビリティを高めようと試みています。そして、それはうまくいく時もあるし、いかない時もある。

コーチングは、アカウンタビリティを発揮させるためのリーダーやマネージャーが持つべき武器のひとつだといえるでしょう。しかし、どんなに効果的な武器を持っていても、それひとつで勝負に勝つことはできません。

メジャーリーグで活躍しているダルビッシュ投手も、ひとつの球種だけでは勝てません。彼の最大の武器は高速で大きく変化するスライダー。当然のことですが、どんなに素晴らしいスライダーをもっていてもそれだけで勝つことはできません。ストレート、チェンジアップなど、さまざまな球種を場面に応じて投げ分けることで勝てるのです。

「エピジェネティクス」とは

現在、医学、生物学の分野で「エピジェネティクス」という分野が注目を集めています。ヒトの遺伝子は、ヒトゲノム計画によってほぼ完全に解明されました。ヒトがどのような遺伝子を持ち、それぞれの遺伝子がどのような働きをしているのかが明らかになったのです。

ところが、遺伝子の働きは解明されたものの、その遺伝子の機能が発現したり、しなかったりすることがあります。誤解を恐れずに素人の私が一言でいうと、「遺伝子にはスイッチがあり、その遺伝子のスイッチがオンになるかならないかは、遺伝子の"周りの働き"による」という考え方です。

例えば、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でありながら、ひとりだけががんになり、もうひとりはならない、ということがある。それは、生活習慣の違いや周りの環境によって、遺伝子の働きが変わるからなのだそうです。

「エピジェネティクス」とは、このような、遺伝子の機能の発現に関わる「遺伝子の周りの仕組み」の研究を総称したものといえます。

アカウンタビリティを「発揮する」のは本人の意志か

もっと、責任感を持て! やる気を出せ! 自分で考えろ!

私たちは、ともすると、アカウンタビリティを「発揮する」のは本人の意志や責任によるもので、自発的、内発的に発揮するべきものだと思いがちです。その発揮の仕方こそが、まさに「アカウンタブル」だ、と思っているのです。「人から言われる前に、自分で発揮しろ!」と。

弊社では、先日、タイのバンコクに新たに拠点を開設し、タイでのコーチングを本格的に開始しました。私自身、最近海外への出張機会が多くなり、日本人駐在員の方からお話を聞く機会が増えています。その中でよく耳にするのは、この国の人は責任感がないナショナルスタッフが働かなくて困っているといった話です。

しかし、本当にそうなのでしょうか? もしかすると、そのようにさせてしまっている、私たち日本人側にも原因があるのではないでしょうか? 少なくとも、双方に原因があると見るのが当然の考え方のように思います。

コーチング研究所の「アカウンタビリティ」に関するリサーチ結果によると、「部下のアカウンタビリティの発揮と上司の特定の行動」には、関係があることがわかっています。

  • 上司がビジョンを魅力的に語っている
  • 上司が日常でビジョンの話を持ち出してる
  • 上司が従来のやり方にこだわらず新しいやり方を取り入れている

この3項目の評価点が高ければ高いほど、部下のアカウンタビリティが高まることが考えられます。具体的には、アカウンタビリティに関する次の項目の評価点が高くなることが考えられるのです。

  • 部下が自分から目標をたてて行動を起こしている
  • 部下が創意工夫をしながら仕事に取り組んでいる
  • 部下が主体的に問題解決に取り組んでいる

コーチングの基本は、「相手のために時間をとり、気持ちよく話させ、承認する」こと。

さらに、アカウンタビリティを発揮させるために、加えて上記の3つのポイントを武器として意図的に実行する。「コーチングを実行し、ビジョンを語り、新しいものを取り入れるべくチャレンジする」上司がこの条件をそろえることで、部下のアカウンタビリティにスイッチが入る。

一定の条件をそろえれば、その遺伝子の機能が発現するという「エピジェネティクス」。部下のアカウンタビリティを発揮させるための「エピジェネティクス」。

それは、上司の大切な仕事のひとつなのだと思うのです。

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