Coach's VIEW

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エピジェネティクス

「コーチングだけではうまくいかないのでは?」

これは、長年コーチングを学んだ人からも時々聞く言葉です。

コーチングの目的は、リーダーを開発すること。
上司と部下の関係で言えば、
部下のアカウンタビリティ(主体性)を「発揮させること」です。

上司は、日々、さまざまな表現や方法で
部下のアカウンタビリティを高めようと試みています。
そして、それはうまくいく時もあるし、いかない時もある。

コーチングは、アカウンタビリティを発揮させるための
リーダーやマネジャーが持つべき武器のひとつだといえるでしょう。

しかし、どんなに効果的な武器を持っていても、
それひとつで勝負に勝つことはできません。

メジャーリーグで活躍しているダルビッシュ投手も
ひとつの球種だけでは勝てません。

彼の最大の武器は高速で大きく変化するスライダー。
当然のことですが、どんなに素晴らしいスライダーをもっていても
それだけで勝つことはできません。

ストレート、チェンジアップなど、
さまざまな球種を場面に応じて投げ分けることで勝てるのです。

*   *   *

現在、医学、生物学の分野で
「エピジェネティクス」という分野が注目を集めています。

ヒトの遺伝子は、ヒトゲノム計画によってほぼ完全に解明されました。
ヒトがどのような遺伝子を持ち、それぞれの遺伝子が
どのような働きをしているのかが明らかになったのです。

ところが、遺伝子の働きは解明されたものの、
その遺伝子の機能が発現したり、しなかったりすることがあります。

誤解を恐れずに素人の私が一言でいうと、
「遺伝子にはスイッチがあり、
 その遺伝子のスイッチがオンになるかならないかは、
 遺伝子の"周りの働き"による」という考え方です。

例えば、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でありながら、
一人だけががんになり、もう一人はならない、
ということがある。

それは、生活習慣の違いや周りの環境によって、
遺伝子の働きが変わるからなのだそうです。

「エピジェネティクス」とは、このような、
遺伝子の機能の発現に関わる「遺伝子の周りの仕組み」の研究を
総称したものといえます。

*  *  *

もっと、責任感を持て!
やる気を出せ!
自分で考えろ!

私たちは、ともすると、アカウンタビリティを「発揮する」のは
本人の意志や責任によるもので、
自発的、内発的に発揮するべきものだと思いがちです。

その発揮の仕方こそが、まさに「アカウンタブル」だ、
と思っているのです。
「人から言われる前に、自分で発揮しろ!」と。

弊社では、先日、タイのバンコクに新たに拠点を開設し、
タイでのコーチングを本格的に開始しました。

私自身、最近海外への出張機会が多くなり、
日本人駐在員の方からお話を聞く機会が増えています。
その中でよく耳にするのは、

この国の人は責任感がない
ナショナルスタッフが働かなくて困っている

といった話です。

しかし、本当にそうなのでしょうか?

もしかすると、そのようにさせてしまっている、
私たち日本人側にも原因があるのではないでしょうか?
少なくとも、双方に原因があると見るのが当然の考え方のように思います。

コーチング研究所の「アカウンタビリティ」に関するリサーチ結果によると、
「部下のアカウンタビリティの発揮と上司の特定の行動」には、
関係があることがわかっています。

 ・上司がビジョンを魅力的に語っている
 ・上司が日常でビジョンの話を持ち出してる
 ・上司が従来のやり方にこだわらず新しいやり方を取り入れている

この3項目の評価点が高ければ高いほど、
部下のアカウンタビリティが高まることが考えられます。

具体的には、アカウンタビリティに関する
次の項目の評価点が高くなることが考えられるのです。

 ・部下が自分から目標をたてて行動を起こしている
 ・部下が創意工夫をしながら仕事に取り組んでいる
 ・部下が主体的に問題解決に取り組んでいる

*  *  *

コーチングの基本は、
「相手のために時間をとり、気持ちよく話させ、承認する」こと。

さらに、アカウンタビリティを発揮させるために、
加えて上記の3つのポイントを武器として意図的に実行する。

「コーチングを実行し、ビジョンを語り、新しいものを取り入れるべくチャレンジする」

上司がこの条件をそろえることで、部下のアカウンタビリティにスイッチが入る。

一定の条件をそろえれば、
その遺伝子の機能が発現するという「エピジェネティクス」。

部下のアカウンタビリティを発揮させるための「エピジェネティクス」。

それは、上司の大切な仕事のひとつなのだと思うのです。

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