Coach's VIEW

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『リーダー開発』は『経営戦略』

Aon Hewitt社が、2011年にRBL Group社やFortune誌と共同で発表した
エグゼクティブ900名を対象とした世界最大規模の 
組織リーダーシップ調査「Global Top Companies for Leaders」では、
「経営戦略とリーダーシップ戦略との間に強い関連性がある」としています。

ところが、Corporate Leadership Council社は、
今年発表した統計データの中で、
「企業の重要ポストに異動したハイ・ポテンシャル人材の40%が失敗に終わっている」
としています。

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?

Dorie Clark氏は、
2013年1月10日号の「Forbes(フォーブス)」で次のように書いています。

「『リーダーシップ』 と 『マネジメント』 は、
  そもそも、全く別物のスキルである。

 ところが、ほとんどの企業が、
 マネジャーに、細部に渡って緻密な 『マネジメント』 を期待しつつ、
 そのマネジャーがエグゼクティブに昇格した途端、
 『ビジョナリー・リーダー』 へと一変することを期待する。
 しかし、そんなことは通常起こえないことだ」と。

それは、リーダー自身が、過去の自分の能力を過信し、
「学習」を止めてしまう傾向があることも一因でしょう。

2013年6月8日号の「エコノミスト」の「シュンペーターコラム」には、
次のようなことが書かれていました。

「人は、組織の上へ上へと上がるにつれて、
 自分をそこまで連れてきてくれたスキルに
 居心地の良さを感じてしまうようになる。

 そのために、より地位の高い立場に立った時、
 それらのスキルが、新しい役割にどれほど有効なのかを
 自ら問うことを忘れてしまう」と。

ハーバード・ビジネス・スクールのThomas DeLong氏と
その娘で精神科医のSara DeLong氏は、
2011年に発表した論文で、これを

「エクセレンスのパラドクス」("the paradox of excellence")

と呼んでいます。

今求められている「リーダーシップの質」について
2012年にCCL(Center for Creative Leadership)が
約500名のエグゼクティブを対象にサーベイを実施したところ、
20年前にはなかった項目が出てきています。

「学習の速さ」と「自己認識」と「適応能力」です。

同年、Korn/Ferry社が、
EUの100名のシニア・エグゼクティブを対象に行ったサーベイでも、
企業がリーダーに求めるコンピテンシーは
2008年の世界金融危機の前後でがらりと変わってしまったことがわかりました。

この現象は、新興国でも同じで、
ハーバード・ビジネス・レビューによる2010年のリサーチでは、
インドのトップ企業の実に88%が、
「自社のトップたちのリーダーシップにはギャップがある」と回答しています。

「わが社には一流の技術者はいる。
 しかし、彼らを、ビジネス・リーダーに『転向』させることができていない」
ということでしょうか。

Booz & Company社が実施したインドのトップ500企業に関する分析では、
2017年までに、15~18%の 「リーダー」のポストを埋める人材がいなくなる、
という結果が出ています。

そのために、適任ではない人材を、仕方なくそのポストに充てる可能性がある、と。

しかし、このような形でリーダーになった人たちには、
「リーダーとしての視点」が身に付いていないことが多いものです。
そして、それは、会社の未来を危機に晒します。

リーダーシップの質の高さは、「高いパフォーマンス」につながります。

DDI社が発表した 『Global Leadership Forecast』 の中で、
競合他社よりも業績が 「高い企業」と「低い企業」のデータを比較したところ、
リーダーが「自社のリーダーシップの質は高い」と回答している企業の78%が、
「競合他社よりも業績が高い企業」 に入っている一方で、
リーダーが「自社のリーダーシップの質は低い(poor)」と回答している企業で、
「競合他社よりも業績が高い企業」に入っていたのは、わずか6%だった、

という結果が出ています。

先述のように、「リーダーシップの質」と「組織のパフォーマンス」 には
関連性があるにも関わらず、次のリーダーとして育成されてきたはずの
「ハイ・ポテンシャル人材」の40%が失敗に終わっているのは、
多くの企業が、「リーダー開発」を、会社の「経営戦略」と切り離して
進めてしまっていることが原因のひとつとして考えられるのではないでしょうか。

後継者マネジメントの成功事例として、
2009年のカンファレンスボードで発表した
PPG International社は、次のようなことを話していました。

「わが社では、
 『後継者マネジメント』と『経営戦略』との連動を実現するために、
 基本的な『問い』を共有しています。

 その問いは、

 『数年後に、この社員が、数十億ドルのビジネスを動かす姿が見えるか?』

 です」と。

「リーダー開発」とは、「経営戦略」なのです。

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