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『問題発見リーダー』になるには
コピーしました コピーに失敗しました優れたリーダーは、優れた「問題解決者」であり、同時に優れた「問題発見者」でもあります。
ここでいう問題とは、「あるべき姿」と「現状」とのギャップです。「あるべき姿」と「現状」把握が明確で正確であるほど、ギャップを埋める「問題解決」はそんなに難しい事ではないのかもしれません。
しかし、先が見えないといわれる今は、「あるべき姿」が見えにくい状況にあります。
「あるべき姿」と「現状」を特定し、「問題」を見出す。リーダーには、そうした「問題発見力」が、一層問われているといえます。
では、いかにしたら、リーダーの「問題発見力」を向上することができるのでしょうか。
私が以前コーチングしていたAさんは、持ち前の論理的能力を買われ、新興国におけるジョイントベンチャーの新規事業立ち上げリーダーに抜擢されました。
Aさんは赴任後、短時間で立ち上げプランを作成し、そのプランを「論理的に」部下たちに伝えていきました。なぜなら、それが、今までに数々の成功を積んできた、Aさんのスタイルだったからです。
しかし、なかなか思うような結果が出てきません。部下たちが、Aさんの望むような行動をとらないのです。
そこで、Aさんはプランをより精緻化し、いっそう論理的に説明することを繰り返しました。
私がコーチングのご依頼を受けたのは、そんな最中でした。
私は、早速、Aさんの周囲の方々にインタビューや360度アセスメントを実施しました。
その中で挙がってきたフィードバックは、
「Aさんの戦略や戦術は正しいと思うが、Aさん自身の想いが伝わってこない」
「そもそも、リーダーが一方的で、話を聞いてくれないので、やる気がおこらない」
「Aさんは論理的ではあるが、人間味に欠ける」
など、Aさんが作り上げたプランについてよりも、Aさんの「リーダーとしてのあり方」に対するフィードバックが多く挙がってきたのです。
結果が出ない「問題」は、「部下への説明があいまいで論理的でないから」「プランが精緻でないから」ではなく、むしろ、自分のリーダーとしてのあり方が、部下の求めるリーダー像と違うことの方が問題だったことが浮き彫りになったのです。
それ以来、Aさんは、自身が気づいていない問題を発見するために、フィードバックを意識するようになりました。
「何が今、問題なのか」「どうしたら、結果が出そうか」などについて部下や周囲の方に、頻繁にフィードバックや意見を求めるようになりました。必要であれば、自身の言動を修正することもありました。
半年後、業績は上向き始めました。
第三者からの「フィードバック」は、自身に見えていない新たな視点を与えてくれるものです。視点が増えることで、何が本当の問題なのかが見えてくることがあります。光を一方方向から照射すると、その物の一部しか見えませんが、たくさんの光源から照射すれば、その全容が明らかになることと似ています。ですから、いろいろな対象者にフィードバックを求める行動は、自身の「問題発見力」を高めることに繋がります。
次に、「質問」です。
アインシュタインが「正しい質問さえあれば、正しい質問さえあれば...」と繰り返し述べたように、「質問」は、「問題発見」の強力なツールです。
1980年代、半導体メーカーのインテルは、自社のアイデンティティであり続けたメモリ製品が日本メーカーの攻勢で窮地に追い込まれました。
その製品に多くのリソースを割いてきた経営陣は、当初、いかにこの苦境を乗り越えるか、コスト削減や営業力強化などの「問題解決」に頭を砕いていたそうです。しかし、議論を重ねる中で、経営者のひとりであるアンディ・グローブが問いかけた質問によって、それまでと違う結果を導き出すに至ったのです。
その質問は、「僕らがお払い箱になって、取締役会が新しいCEOを連れてきたら、そいつは何をするだろう?」というものでした。
この質問は、経営陣が持ち続けていたメモリ製品へのこだわりよりも、その製品がコモディティ化し、過激な低価格競争にはまり込んでいく可能性の強いこと、それが会社の存続そのものを脅かしかねない、という未来イメージをも引き出しました。
そこには、今まで経営陣に見えていなかった「問題」がありました。そこで、経営陣は痛みを感じながらも、メモリ生産の撤退を決断します。この「問題発見」が、インテルをさらなる成長に導いたのは言うまでもありません。
「もし~だったら」の質問が、さまざまな制約を超えて、「問題発見」を促進するきっかけを与えました。
リーダーが、自身と組織の「問題発見力」を向上させるには、「フィードバック」と「質問」をうまく使っていく必要があるようです。
【参考資料】
Andrew S. Grove "Only the Paranoid Survive"
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