Coach's VIEW

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リーダーは『時間』を通して『組織』を動かす

私自身、週に何度か、スケジュール帳を眺めながら、
自分にこんな問いかけをしていることがあります。

「今、何に一番時間を使っているのだろうか?」
「実現したいことを達成するための理想的な時間の使い方だろうか?」
「本来だったら、もっと、何に時間を使いたいのか?」

知らず知らずのうちに、日々起こる緊急な会議や出来事に追われ、
本来、時間をとるべきことに使っていないことを
発見することがしばしばあります。

同様の経験をされている方もいらっしゃることと思います。

さて、私の経験値では、会社におけるポジションが上がり、
組織が大きくなるほど、リーダーが自身でコントロールできる時間は
少なくなってくるようです。

一方で、ピーター・ドラッカーが説くように、
「人、物、金」といった経営資源の中でも、
 時間は「借りたり、雇ったり、買ったり」できない特異で希少な資源です。

それ故、今日、リーダーは、自身の時間の使い方に
より「自覚的」であることが望まれます。

では、「自覚的に時間を使うことで、組織を動かすリーダー」
とはどういう人なのでしょうか。


以前、エグゼクティブ・コーチングをしていた

あるメーカーの開発の役員の方のお話です。

その役員がおっしゃるには、秘書にスケジュールを任せていた時は、
経営層との会議、部下との定例の会議や打ち合わせ、
お客様や業界関係者との会合等で大半が埋まってしまっていたと言います。

そのことに気づき、スケジュール帳を眺めながら、
「この時間の使い方で、自分の価値観や想いを本当に実現できるものだろうか?」
と自問自答したそうです。

答えは、「ノー」。

もともと、自分の仕事は将来にわたって、
継続的に新製品を開発できる風土をつくっていくこと。
そのためには、社員一人ひとりがイノベーティブな意識をもつことが大切。

それだったら、リーダーである自分の時間の使い方も、
もっとイノベーティブなものでなければならないと強く思ったそうです。

そこで、冒険して、自分自身にグーグルの20%ルールを適用してみます。
つまり、1週間のうち1日は、業務以外のために使う時間として
投資しようと決めました。

そして「この時間をどのように使うか?
その時間の使い方で、部下にどんな影響を与えられるだろうか?」
と自分に問いかけます。

その結果、まずは、2つのことに時間を投資することにしました。

1つ目は、部下との「ぶらぶらアイデア会議」。
2つ目は「くだらないアイデア会議」。

「ぶらぶらアイデア会議」は、部下数名と30分ほど、
会社の周りをぶらぶら散歩しながら、話すという時間です。

古代ギリシャの哲学者であるアリストテレスたちが、
「逍遥学派」と呼ばれ、歩きながら、発想を広げたり、
考えをまとめたことにヒントを得て、
ついつい、オフィスに閉じこもりがちになる社員たちと
普段と異なる環境で話す時間を創りました。

もう1つは、いかにくだらないアイデアをだせるか、という
会議を定期的に設けました。

普段から、優秀であるが、遊びの感覚に乏しい社員。
あえて、「くだらないアイデア」と銘うち、
役員自ら出席、社員から出てくるアイデアを楽しそうに聞く時間をとる。

実際、その方の部下の何人かにインタビューをしてみると、

「リーダーである役員自身が、イノベーティブな時間の使い方をされる。
 その新鮮さに刺激される」

「くだらないと思うようなアイデアにも
 聞く耳をもってくれるので、発想が広がる」

という意見が多数ありました。

リーダーである役員が、その希少資源である「時間」を
何にどのように使っているのか。
それはそのまま、部下に「インパクトあるメッセージ」
になっているのでしょう。


たしかに、その組織をみていると、

今では、社員の上下や部署の隔てなく、

オフィスや食堂などいろいろな場所で

お互いに意見やアイデアを出し合っている場面を目撃します。

まさに、「イノベーティブな新製品を生み出そう」という
気概を感じる組織になっています。

リーダーである役員の時間の使い方や行動が、
そのリーダーが大事にしている価値観や想いをメンバーに伝え、
組織をその方向に動かしていました。

さて、時間の使い方を振り返ることで、
リーダーとして、今、何を大事にしているか、
そして、本来は何を大事にするべきなのかに気づきます。

そして、同時に時間の使い方を通して、
強力なメッセージを部下に与え、組織そのものに
インパクトを与えることが可能かもしれません。

最後に、ピーター・ドラッカーの時間に関する言葉を。

「時間に関する愛情ある配慮ほど、
 成果をあげている人を際立たせるものはない」

【参考資料】
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー ダイヤモンド社刊

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