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いままでにないものを生み出す
コピーしました コピーに失敗しました先日、日本コーチ協会の第15回年次大会が開かれました。
その中で、名古屋第二赤十字病院の石川清院長から、病院の組織風土改革の事例が紹介され、コーチングを全病院規模に導入することで、職員の主体的な行動が増加していることが具体的な事例として示されました。
コーチングの導入によって、「主体性」が高まる。そのプロセスにおいて、具体的には何がどのように変化したのでしょうか?
本メールマガジンの読者の方へ実施した、上司と部下の「会話量」についてのアンケート結果があります。
上司と部下それぞれに、「直属の上司 or 部下と、1週間で何時間くらい話をしているか」について聞いたところ、図1のとおり、両者の認識に違いがみられました。
部下は上司よりも「1.5時間少ない」と認識していることがわかります。
また、部下側からみた、上司との会話の「量」についてのアンケート結果は、図2になります。
62%の人が、上司との会話が「少ない」と認識し、上司との会話をより望んでいることが伺えます。
また、コーチング研究所のリサーチでは、「部下のために話す時間を確保している上司の組織」の方が、そうでない組織より、「組織の活性度が高い」という傾向が出ています。
これらのことから、組織を活性化し、部下の主体性を高めるには、上司と部下との会話量を意図的に増やす必要がある、ということが言えるでしょう。
コーチングの組織的な導入は「仕組み」としてこれを担保する、ということになります。
「席が隣ですから、いつも話しています」ではなく、隣に部下がいるとしても、「あえて」時間を確保し、上司が部下をコーチするという「仕組み」そのものが、機能するのです。
前述の名古屋第二赤十字病院では、
・臨床研修部の創設(副院長のコーチング)
・手術支援センター設立(麻酔科部長のコーチング)
・神経内視鏡センター創設(若手脳外科医のコーチング)
・検査部の新たな取り組み(検査技師長のコーチング)
・治験センターの新たな取り組み(CRCのコーチング)
などが具体的なプロジェクトとして発足し、その他にも、職員の主体的な行動から多くの活動が生まれていることが紹介されました。
「部下の発案」から「いままでにない」プロジェクトが発生するようなことは、コーチング導入以前にはなかったこと。コーチングによって「主体性」が高まっている結果だと思う、と石川院長は述べられています。
同院での取り組みを詳しく見ていくと、「会話の構造」に一定の法則があることが分かります。
「コーチング + ディスカッション」
部下との時間を確保し、問いかけて聞く。
そして、そこで話された題材については、ディスカッションを加えたり、フィードバックを組み合わせたりすることで、さらに大きな成果を生み出しているのです。
コーチングの導入で、まずは、上司と部下との「会話量を担保」する。そして、会話に「コーチング + ディスカッション」という構造を持たせることで、さらに成果を高めているのです。
コーチングによる、「主体性」の向上。その主体性を発揮することによって、「いままでにないものを生み出すこと」それこそが、コーチングの醍醐味だと思うのです。
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