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リーダーの自己評価と周囲評価の関係

リーダーの自己評価と周囲評価の関係
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「部下の話をしっかり聞いている」とか「プロジェクトの目的を明確に示している」と、自分では思っているのに、周囲の人たちはそう思っていなかった。

そんな経験はないでしょうか。

これは、自己評価が周囲評価より高い、すなわち、「自分を過大評価している状態」であると言えます。

このように、自身を過大評価しているリーダーのことを周囲の人たちはどう感じているのでしょうか。

そのことを調べたコーチング研究所の調査結果をご紹介します。

調査では、組織で働くリーダー360人のリーダーシップについて、リーダー自身と周囲のスタッフに回答してもらいました。

アンケートでは、リーダーシップに関する行動を53の項目に分け、7段階評価を用いました。そして、リーダーが周囲の人たちより1ポイント以上、自身を高く評価している場合を「過大評価」としました。

リーダーが過大評価した項目の数と、周囲が評価したリーダーシップスコアの関係を次の図に示します。

図表リンク

グラフからは、過大評価となった項目の数が増えるにつれ、周囲が評価するリーダーシップスコアも低くなっているのが分かります。これは、リーダー自身が課題認識を持たないがために、能力向上に取り組まなくなることが主な原因として考えられます。自分自身を過大評価してしまうことは、リーダーにとって危険シグナルであるといえるでしょう。しかし、人は、知らず知らずの間に自身を過大評価するという状態に陥ってしまうものです。

では、リーダーが自身を過大評価しやすい項目には、どのようなものがあるのでしょうか。

今回の調査では、上位3項目は次のようなものでした。

・会社のビジョン・方向性について話している。(20.6%)
・誰に対しても公平に振舞っている。(18.9%)
・ビジョンを実現するために具体的な目標を設定している。(18.9%)
             ( )内は過大評価したリーダーの割合

3項目中、2つがビジョンに関わる項目であるのが特徴的です。リーダーがビジョンや長期方針について伝えているつもりでも、周囲には伝わっていないことの表れといえます。

ハーバード・ビジネススクールの教授であるジョン・コッターは著書の中でこう言っています。(※)

「ビジョンについて組織のトップがかなりの時間を割いて社員にスピーチで説明したつもりでも、社員はほとんど理解できていない。年間の社内コミュニケーション全体のわずか0.0005%しか費やされていないのだから、それは当然である」

ビジョンは、たまに伝えるのではなく、常に話題になるくらいの時間が必要ということなのでしょう。ビジョンは「自分が思っている程には伝わらないもの」という前提で取り組むくらいでちょうどいいと言っても過言ではないかもしれません。

ただ、過大評価を自分が注意するだけで完全に防ぐことは難しいものです。

過大評価に陥らないようにするには、事実を知るためにフィードバックを集めることが有効です。

「どれくらいビジョンは伝わっているか?」「自分のリーダーシップは、周囲にどう見えているのか?」など、周囲に質問することで、自身のことを多面的に把握することができます。自分が気づかなかった視点で事実を得ることもあるでしょう。

自分ひとりの力でリーダーシップを高めるのではなく、周囲と関係を築きながら進めていく。それが、今求められるリーダーの姿なのではないでしょうか。


【参考資料】

※『リーダーシップ論』 (ダイヤモンド社)
  ジョン P.コッター (著) / 金井 壽宏、加護野 忠男、谷光 太郎、宇田川 富秋 (翻訳)

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