Coach's VIEW

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リレーショナルインテリジェンス™

ちょうど7年前の2007年の1月、
ニューヨーク大学での講演で、
『Relational Intelligence ™ ~関係性の知能~』という概念を紹介しました。

どんなに素晴らしい資源(リソース)を持っていても、
人との間に関係性を築くことができなければ
その資源は使われないままになります。

私は、「関わり」の可能性が広がることで、
個人と組織の資源が活かされる、と考えてきました。

組織行動の研究をしているRichard Boyatzisは、
「脳科学とリーダーシップ」の中で、
リーダーとの「関係性」によって、
社員の脳の中でどんな神経作用が起こったかについて、
fMRI(磁気共鳴機能画像法)で調べたことを紹介しています。

Boyatzisは、リーダーと社員との間において
関係性のクオリティが高い、共鳴の(resonant)リーダーシップと
関係性のクオリティが低い、不協和の(dissonant)リーダーシップを比較した実験を行いました。

その結果を簡単に説明すると、以下のようになります。

共鳴のリーダーとの体験を振り返った中年の対象者の脳では注意力が喚起され、
社会的またはデフォルト・ネットワーク(訳注:ひらめきが起こりやすい状態)や、
関係に近づく(接近する)ことに関連した部位が活性化された。

一方、不協和のリーダーとの体験を振り返った中年の対象者の脳では、
社会的またはデフォルト・ネットワークに関連した部位などは非活性化し、
注意を狭める部位の方が活性化され、さらに、他者への思いやりが減り、
ネガティブな感情がより強くなる部位が活性化されていたのである。(※1)

「リレーショナルインテリジェンス ™」とは、
組織における人の関係性からリーダーシップを測るものです。

それは単に、どうすれば「二人の間」によい関係を築けるかに限ったものではなく、
「組織全体の中における関わり」に及びます。

「リーダーシップに対する過去のアプローチは、
 いわゆる『ヒーロー型リーダーシップ』と呼べるものだった」
とBarkerは指摘しています。(※2)

また、『ウィキノミクス』の著者、Don Tapscottは、
「情報革命によって、1つのマネジメント(命令管理)が、
 別のマネジメント(自発的に形成、組織化されたネットワーク)に
 置き換えられつつある」と書いています。(※3)

こうなると、これからのリーダーには、
これまでのトップダウン型である指示命令を超えた関係性を
社員と築いていく能力が求められてきます。

ところが、Michael C. Hyterの指摘は、
要約すると次のようになります。

企業の管理職の多くは、未だに、関係構築能力といった
「インターパーソナル・スキル」を「生まれ持った才能」であり、
持っている人といない人がいると捉え、その結果、
「他者とうまく関わって行くこと」について
コーチングやメンタリングをすることがめったにない。
しかし、これらは「学べるスキル」なのだ。(※4)

このような指摘を踏まえると、
ここでどんな関係を創り出していくか、というストラテジーを、
リーダーが持っているかどうかが重要になります。

「過去」と「人」は変えられませんが、「関係性」は変えられる、
ということについて、リーダーは真剣に考えないといけないところに来ています。

「関係」は創り出されるもので、常に変動し続けているものです。

そして、「組織」は、人と人との関係性の総和であると言えます。

また、「組織」とは、「対話」の中で、常に流動的に生まれているものであり、
最初に組織が存在するわけではないのです。

「リーダーシップの過程は、川のようなものだ。
 川底(社風)に囲まれ、ひとつの方向に流れているように見えるだろう。
 しかし、よく見てみると、一部が横に流れていたり、渦を巻いていたり、
 全体から見て、逆の方向に流れていることもある。
 流れの速さも強さも常に変化し、川自体の形を変えることすらあるのだ」(※2)

ところが、これまでのマネジメントは、
「組織」をそのようには見ていませんでした。

Ryleの「カテゴリー錯誤」という言葉があります。
Ryleは、これを、外国人が「オックスフォード大学を見せてほしい」と聞く喩えで説明しています。

この喩えの中で、外国人は、各学部、図書館、科学施設など、
すべてを見せてもらった後で、こう言うのです。

「いろいろと見せてくださってありがとう。
 それでは、『大学』を見せていただけますか?」(※5)

ShotterとStorchは、

「そのような実体は、発生物であり、対話的に構築されたものであるため、
 手に触れたりできるような具体的事物として扱われるべきではない。

 『知識』『行動』『理論』といった言葉と同様、
 『組織』『会社』『ビジネス』『労働力』『社員』『言語』『コミュニケーション』
 といった実体について語るとき、その概念が何を意味しているのかを
 完全に理解していると仮定すべきではない」(※6)

と指摘しています。

リーダーの「リレーショナルインテリジェンス™」を見て、
組織の「関係」を測り、会社の中に、コミュニケーションのインフラを引いていくこと。

Gergenは、組織 は、常に「工事中」だと表現しています。

「止まることなく延々と続く『関係』の中で、
 そこにいる人々によって、創り出され、維持される(または、されない)もの」と。(※7)

あなたの会社の社員たちの「関係」は、今、どんな状態でしょうか?
それらの「関係」は、今、どんな組織を創り出しているでしょうか?

【参考文献】

※1 Richard Boyatzis 2011. Neuroscience and leadership: the promise of insights
※2 Barker, R.A. 1997. How can we train leaders if we do not know what leadership is?
  Human Relations, 50: 343-362.
※3 The Economist, Schumpeter / It's complicated, November 23rd 2013
※4 Michael C. Hyter 2013. Talent optimization: a new lens, The Korn/Ferry Institute
※5 Ryle, G. (1949) The Concept of Mind. London: Methuen.
※6 Jacob Storch & John Shotter 2013. 'Good Enough', 'Imperfect',
  or Situated Leadership: Developing and Sustaining Poised Resourcefulness
  within an Organization of Practitioner-Consultants,
  International Journal of Collaborative Practice 4(1), 2013: 1-19
※7 Lone Hersted and Kenneth J. Gergen 2013. Relational Leading,
  The Taos Institute Publications

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