Coach's VIEW

Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。


『なりきり』から入るリーダー開発

『なりきり』から入るリーダー開発 | Hello, Coaching!
メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

「『嬉しいから笑う。悲しいから泣く』ではなく、『笑うから嬉しくなる。泣くから悲しくなる』」と提唱したのは、19世紀の心理学者 ウィリアム・ジェームスです。

彼の説によれば、人の行動は思考や感情に影響していく、すなわち、行動を変えることで、思考や感情を変えることが可能になる、ということになります。

フロリダ州アトランティック大学のサラ・スノドグラスは、歩き方が感情に与える影響について実験しました。

被験者には、運動が心拍数に与える影響を調べるもの、と説明しますが、本当は、歩き方が各自の幸福感にどんな影響を与えているかを調べる実験です。

Aグループは、大股で腕を振って背筋を伸ばして歩き、Bグループは、小股でゆっくりと、うなだれて歩く、という指示を出しました。

結果は、Aグループの幸福度が、前後の調査で大幅に上がりました。「行動が気持ちに影響する」ということが示されたのです。

「自信にあふれたプレゼンスのモデル」

以前、オーナー企業の3代目社長に、コーチングをさせていただいたことがあります。

社長就任以来、社内外で話す機会が多くなっているが、どうも、うまく聴衆に物が伝わっている感じがしない。最近では、話すことが重荷になっている。リーダーとして自信をもったプレゼンスを備えたい、というご依頼でした。

そこで、社員数百名に対するイベントのプレゼンテーションの事前練習をしてみました。

用意していただいた原稿を元に10分ほどお話いただき、その様子をビデオに撮りました。

話の内容は、ロジックもしっかりしているし、ストーリーもあり、理解しやすいものでした。

しかし、一方で、身振り、手振りはあるのですが、ぎこちなく、視線が泳いでいます。同時に、語尾が聞き取りにくく、まるで、言葉が聴衆に届く前に落ちてしまっているような印象を受けました。

総じて、リーダーとしての落ち着きや自信があるようには見えません。

自身のプレゼンテーションのビデオを見たご本人の感想も、「声が思ったより弱々しい。目も泳いでいて、結果、不安そうで自信がないようである」とのことでした。

そこで、「自信にあふれたプレゼンスのモデルになる人はいますか」とうかがったところ、ご自身の社長就任と同時期に第44代アメリカの大統領になったバラク・オバマ大統領の名前があがってきました。

大統領宣誓式後のオバマ大統領の演説を見てみることにしました。同時に、大統領の姿勢や行動の何が、自信にあふれているように見えるのかも具体的に述べてもらいました。

すると、声に強弱があり、力強い。時にスピードも変わる。話す間も上手にとっている。力をこめて話すときに、適宜、身振り、手振りが入るが、それが過度ではない。聴衆をしっかりと見ている。などのポイントが出てきました。

その後、社長にあたかも、そのオバマ大統領に「なりきって」話していただくことをしました。

最初でこそ、ぎこちなくしていましたが、何度か継続して実践するうちに、声はより力強く、張りが出てきました。

また、目線も前の人をちゃんと見て話すように変わっていました。全体として落ち着きが出て、その変化を映したビデオを見たご本人の感想でも、

「そのことを実現している人をイメージして行動してみるだけで、だいぶ落ち着いて話せるように感じる。次回、プレゼンテーションをすることが楽しみになってきました」と、伝えることに対する自信が出てきました。

実際に行った社内プレゼンテーションも、今までになく、堂々としたものであったと、部下の方からもうかがいました。

「何かの美点を身につけたいときは、すでに、備わっているかのように行動すればよい」

コロンビア大学のダナー・カーニー教授は、新しい心拍数の性能を調べるという名目で、Aグループには、デスクに両手をつき、身をのりだす自信あり気な姿勢をとってもらい、Bグループには、両足を床につけ、両手をあわせ、膝の上に載せ、少し視線を床に落とす自信のなさそうな姿勢をとらせました。

実験結果は、Aグループでは「自信が増した」と報告する人が多く、そればかりでなく、よりリスクをとる思考に変化している割合も多い、という結果がでました。

この実験では、自信のある姿勢をとったAグループでは、自信ややる気と関連する化学物質、テストステロンの数値が大幅に増加し、ストレスに関係するコルチゾールの数値は低くなっていました。

ちょっとした姿勢や行動の変化が、身体の化学物質にも変化を与え、思考や感情に影響を与えているようです。

先述したウィリアム・ジェームスは、「何かの美点を身につけたいときは、すでに、備わっているかのように行動すればよい」と説きます。

今日、リーダーは今までにないような変化の中、常に成長を求められています。

リーダーとして成長したいと思ったら、すでに、それが、手に入っている状態を想像し、まずは、その成長を象徴する姿に「なりきって」みることもひとつの方法といえましょう。

この記事はあなたにとって役に立ちましたか?
ぜひ読んだ感想を教えてください。

【参考資料】
1. 『その科学があなたを変える』(文芸春秋刊) リチャード・ワイズマン著

2. "The Effects of Walking Behavior on Mood" Paper presented at the Annual Convention of the American Psychology Association. Snodograss,S.H.,Higgins,J,G.,&Todisco,L.(1986)

3. "Power posing:Brief nonverbal displays affect Neuroendocrine levels and risk tolerance" Psychological Science,21, 1363-8 Carney,D.,Cuddy,A.J.C.,&Yap,A,(2010)

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

組織へのコーチング導入や組織リサーチ、グローバル人材の開発についてなど、お気軽にご相談ください。

メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

関連記事