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事業計画策定

多くの企業で事業計画の策定が大詰めを迎えている時期かもしれません。

エグゼグティブ・コーチングの中では、
「社員の事業計画に対するオーナーシップを高めるにはどうしたらいいか」
が、時にテーマとなります。

計画を上から降ってきた「他人事」でなく、
社員が「自分のもの」とするにはどうしたらいいか?

クライアントのA社長のテーマはまさにそれでした。

近々、彼が上級管理職以上を集めて事業計画会議を行うというので、
「その会議を通して、参加するメンバーのオーナーシップを
どのように高めたらいいか」について対話しました。

結果、事前に参加者にアンケートを取ることに。

「どうしたら事業計画が、無味乾燥なものではなく、
 『自分のもの』となりますか?」

回答の中で最も多かったのは、
「例年抽象的な言葉が羅列されるが、それをもっと具体的にイメージしたい」

要するに、毎年、計画全体を括る言葉として、
「顧客の信頼向上」「グローバル化」「次世代リーダーの開発」など、
抽象性の高い言葉が並ぶので、具体的にイメージできない。

イメージできないから、どこか絵空事に感じてしまう。
ということのようでした。

信頼向上、グローバル化、リーダー開発、、、。
抽象性の高い言葉は、コミュニケーションでの
齟齬を引き起こしやすい言葉であると言えます。

抽象性が高いために、人それぞれ、実は色々な意味を勝手にそこに吹き込みます。

信頼向上というのは、顧客単価が上がるということなのか、
はたまた、「ありがとう」という感謝の言葉を多くもらうということなのか、
あるいは、クレームの電話が鳴らないということなのか。

人によってイメージするものが違うわけです。

ところが、それらの言葉は、日常当たり前のように
使われる言葉であるが故に、それを発信する側は、
「自分が言葉に付与しているイメージを受信者も同様に付与しているはず」
という前提でコミュニケーションをしがちです。

「お客様からの信頼を獲得するのは大事だよね」
「本当にそうですよね」

実際には、両者は信頼に対して全く違うイメージを持っているかもしれませんが、
その瞬間のコミュニケーションとしては成り立ってしまう。

経営者が計画を発信するときにも同様のことが実は起きがちです。

「今年は顧客満足向上を前面に打ち出してやっていこう」
「承知しました」

経営者と社員では全く違うイメージを持っているかもしれませんが、
擦り合わせは行われない。

さて、A社長の事業計画会議に、私も同席させていただきました。

計画のトップに来るスローガンは
「顧客満足度の向上、ホスピタリティの徹底」。

まず社長は、最近自分がお客様として受けた
満足度の高いサービスはどのようなものだったかを、参加者に語りました。

いつ、どこで、誰から、どんなサービスを受けて、自分はどう感じたのか。
なるべく具体的に話をしました。
そして、自分が思う顧客満足とはどういうものかを、参加者に共有しました。

続いて社長は、役員、管理職にも、
彼ら彼女らが受けたことのある素晴らしいサービス、
あるいは受けたいサービスについて話すよう促しました。

漠然とした話になったときには、
私が具体化するお手伝いをさせていただきました。

しばらく、お互いの顧客満足体験を共有した後、
「では、当社として、顧客満足の向上、ホスピタリティの徹底に向け、
どんなサービスを行っていくか」について議論が移っていきました。

会議後、ある管理職に、
「今回の会議は例年とは違いましたか?」と聞いてみました。

「例年は、早く部門の擦り合わせをして数字を固めて終わらせたい、
 と思っているんですが、今年は、何を目指すのかが具体的になったので、
 それをどう数字に落とすか、考えるのが楽しかったです」

ふだん、当たり前のように使っている言葉に、
全員で意味やイメージを吹き込んでいく。

事業計画を策定する際は、数字に落とす前に、
この作業が必要なのかもしれません。

そうすることで、事業計画は誰かのものではなく、
「自分のもの」になるように思います。

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