Coach's VIEW

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変わり続ける組織とリーダーシップ

ハーバード大学内のジョイントベンチャー、NPLI のリサーチャーである
マクノルティ 氏が最近実施したサーベイ結果によると、
リーダーに求められる特性が、これまでの典型的なものとは
異なってきていることが分かったようです。

人格(品性)、カリスマ、能力、適性、コミットメント、勇気、
洞察力、率先力、問題解決、責任感、自己修養、ビジョン
などといったものではなく、
「欠くことのできない重要なリーダーシップの質」として
トップに挙がったのは、以下でした。(※1)

**************

 1位 コラボレート(協働)する能力

 2位 組織の境界線を越えて人を率いる能力

 3位 行動を触媒させる能力

 4位 多種多様なステークホルダーを集める能力

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ブレッシングホワイト社のジョーンズ氏は、次のように話しています。

「リーダーシップは、『脱ヒエラルキー』になりつつあります。

 ヒエラルキーではなく、
 『関係性』や『文化共有型』になりつつあります。

 リーダーシップとは、
 あなたが誰かに対して (一方的に)『 する 』ものではなく、
 あなたが、誰かと『共に』することなのです。
 これは、リーダーと率いられている人との間の人間関係なのです」(※2)

経営者は、「全体を見渡せる視点」(View)を身に付けたい
という話をよくします。

組織の全体を見る。

そこに繰り広げられているものを、まるでパノラマのように
「眺める」というイメージ。

「見よう」とすると、意志が働いてしまうため、
結局、いつもと同じ景色、見たいものを見てしまいます。

司馬遼太郎は、歴史小説を書く楽しさとして
次のように例えています。

「ビルから、下をながめている。

 平素、住み慣れた町でもちがった地理風景に見え、
 そのなかを小さな車が、小さな人が通ってゆく。

 そんな視点の物理的高さを私はこのんでいる。

 ビルの屋上から見下ろすと、
 その人間がタバコ屋の角を曲がって都電通りに出、
 横断してさてどこへゆくかということまで、わかる。

 つまりその人間がどこへ行くか、ということが。

 (中略)

 さらにわれわれは、かれ自身の予測しなかったこともわかる。
 むこう側から自動車が突進してくるのである。

 かれが立ちすくんだために、自動車は運転をあやまり、
 急ブレーキがおよばずはねられてしまう」(※3)

司馬遼太郎の場合は、歴史という時間的距離の話ですが、
経営者が身に付けたい「全体を見渡せる視点 (View)」も、
少しこのイメージに似ているかもしれません。

リーダーが、自分の組織「全体」を、山の上に上がるように「眺める」。
そして、その「全体の視点(View)」を確保するために欠かせないのが、
組織における「対話」の文化です。

日立化成株式会社の執行役CSR総括部長である菅政之氏は、
弊社発行のニュースレターの中で、
「組織における対話の文化」の重要性について話されています。(※4)

そう言うと、よく 「私は話している」 と言うリーダーがいますが、
それは、「対話」 とは違います。

組織人間学者のグレイザー氏は、自身の研究で、
次のことを発見した、と書いています。

「初対面のミーティングから、重要な交渉まで、
 さまざまな違う状況下での会話を観察したが、
 言葉のやりとりの95%が、

 『(一方的に)話す、指示する(telling)』だった。

 『質問する、尋ねる(asking)』は、ほとんどなかった。
 『質の高いリスニング』もほとんどなかった」(※5)

社会構成主義の第一人者であるガーゲン氏は、新しい組織のあり方として、以下の提案をしています。

「一般的には、『変化のプロセス』とは、
 トップダウンで、プランを立てて導入されるものだ
 と信じられている。

 これは、『社員は、会社がプランした変化を上演するもの』という考えだ。
 この『秩序ある変化』(Ordered Change)に対して、
 『絶え間なく動き続ける組織』という見方がある。

 組織というのは、常に新しく生まれているか、
 あるいは、我々には、完全には予測できないものに
 『成ってゆく(becoming)』という考え方だ。

 賢明なリーダーは、『変化を起こす』まさにそのプロセスで、
 社員が参加できるような『対話』を持ち込む。

 そうなったとき、社員は、もはや『変化するよう要求された立場』ではなく、
 『変化』の『発起人』であり『共同設計者』となる」と。(※6)

イノベーションやクリエイティビティが起こるのは、
そういう場なのではないでしょうか?

ダスボロー氏は、2つのグループに対する観察を行いました。

簡単に説明すると、

Aグループは、ネガティブなパフォーマンス・フィードバックを、
ポジティブな感情のしぐさ (うなずき、笑顔など)で受けました。

一方、Bグループは、ポジティブなフィードバックを、
批判的に (しかめっ面や眉をひそめて)受けたのです。

その結果、ポジティブなフィードバックを
批判的に受けたBグループの方が、
自分たちのパフォーマンスに対して、
より悪い感情を持った(感じた)ことが分かったのです。(※7)

また、サラ氏によるリサーチでは、

「『業績トップのリーダーたち』は、
 『中程度の業績のリーダーたち』と比較して、
 部下から『笑いを引き出す』頻度が、平均で3倍だった」(※7)
ことがわかりました。

人間は、機械ではなく、相互に影響し合っています。
他人の影響を受けながら変化しているのです。
自分だけではなく、もちろん、相手も。

気づいている、気づいていないに関わらず。

習慣を変えたりするのは、自分の意志ですが、
その意志は、「関係性」に影響されています。

人も、組織も、もっと有能になれると思っています。
けれど、それは、たった1人でできるものではありません。

【参考文献】

※1 Eric J. McNulty, Beyond Davos: Leading through Complex Global Challenges, 2014 Booz & Company Inc.
※2 Jennifer Jones, Are you overlooking Leadership Talent?, Mediatec Publishing Inc.
※3 司馬遼太郎 『歴史と小説』 (集英社文庫)
※4 「対話による理念実践 ~理念の実践と対話による組織づくり」
  (コーチ・エィ ニュースレターVol.11)
   http://www.coacha.com/corp/newsletter/vol11/)
※5 Judith E. Glaser, What is Conversational Intelligence?, 2014 Korn Ferry.
※6 Lone Hersted and Kenneth J. Gergen, Relational Leading, The Taos Institute Publications
※7 Daniel Goleman and Richard Boyatzis, Social Intellig

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