Coach's VIEW

Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。


経験学習モデル

経験学習モデル | Hello, Coaching!
メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

4月は多くの人にとって変化のある季節です。このコラムを読まれている方の中にも職場に新しいメンバーが加わった、自分が新たな役割に変わったという方がいらっしゃると思います。

こうした変化は、上手く利用すれば、リーダーシップを向上させる大きなチャンスとなります。新たな環境は、これまでのやり方では上手くいかないこともあり、自分のリーダーシップについて改めて考えるきっかけを与えてくれるからです。

環境の変化を、最大限リーダーとしての成長に活かすにはどうしたらいいでしょうか?

米国ロミンガー社が、リーダーに対してリーダーシップ能力の開発において役立ったことを調査したところ、現場の経験が70%、上司の薫陶が20%、研修が10%という結果となったそうです。

経験が70%と一番大きなウェイトを占めていますが、それは、ただ経験すればいい、ということではありません。経験をいかに学習につなげるか、ということが問われます。

米国のコルブ教授は、「経験学習モデル」を提唱し、経験を学習につなげるためには次の4ステップを循環させていくことが大事であるとしています。

 1)試行: 自分の考えを行動にうつす
 2)経験: 行動して体験する
 3)振り返り: 経験したことの成功、失敗要因を考える
 4)概念化: 自分なりに考えをまとめ方法論にする

新しい環境に身を置いたリーダーの成長にこのステップをあてはめて考えてみましょう。

「新しい部署の管理職として任命された」。

まず、方向性を示すのが大事だと考え、4月1日に部署全員を集め、自分の考えを30分に渡って伝えた。(試行)

20人の部下の表情は終始硬く、自分の話が理解されたのかされなかったのかよくわからず、不安になった。(経験)

現場で起こっていることをヒアリングすることなく、一方的に話したことがよくなかったのかもしれないと思った。(振り返り)

新しい部下を率いるときは、こちらから発信する前に、まず現場の状況を把握することが必要だ。(概念化)

再びこのサイクルを回し、

集めた部下一人ひとりから現場の状況を聞き、その後に自分の考えを発信した。(試行)

こちらの発言を部下が大きく頷きながら聞いてくれ、ほっとした。ただ、数人は納得のいかない顔をしている部下がいて気になった。(経験)

発信の前に受信することは効果がありそうだが、それだけでは対応できない人もいる。特に、分析的にものを考える部下には「+α」の対応が必要そうだ。(振り返り)

発信の前に受信。ただそれで全員が納得するわけではないから、個別のフォローは常に必要。(概念化)

このようにシンプルに書いてしまうと、リーダーとして学習、成長することはいとも簡単なことのようですが、現実には、新しい環境の中では、このサイクルを回すことが難しくなるようです。

それは、まず、「試行しない」。

試行は「意図を持った実験」であるといえますが、環境が変わってもこれまでのやり方、自分の勝ちパターンをそのまま持ち込んでしまう。

次に、「経験しない」。試行はしたとしても、「経験はしない」というケースです。行動を起こせば、自動的に経験はするだろうと思うかもしれませんが、 そうでないケースもあります。

例えば、自分が一方的に方針を話す。話すことにあまりにも一生懸命になり、部下が面白くない顔をしていても、そのことに気づかない。つまり、「部下が面白くない顔をしている」という状態を自分の経験にできていない。薄々気づいていたとしても、はっきりと認識することがなければ、行動を改善するまでの「情報」として扱えない経験となります。

あるいは、「振り返らない」。

経験をしっかりしたとしても、そのことについて振り返らないということです。仕事が忙しかったり、経験に向き合うこと自体が苦痛だったりして、振り返りをする時間をきちんと持たない。

最後は、「概念化しない」。

振り返りまでしても、最終的に概念としてまとめあげることをしない。そのため、わかりやすい「定理/公理」として持つことができず、次の状況にうまく適用も応用させることもできない。

さて、みなさんは、普段、どのステップまで進めていますか?

新しい環境に入った時はどうでしょう? みなさんの部下、あるいは上司はどうでしょうか?

まず、自分にあてはめて考えてみてください。誰かと時間を取って、振り返るサポートをしてもらってもいいかもしれません。それができたら、次は、自分の部下とこのステップを追って話をしてみてください。周りの人たちについてもどうでしょうか。みなさんが、新しい環境をリーダーとしての成長の機会として 大きく活かされることを願ってやみません。

【参考資料】
『企業内人材育成入門』(ダイヤモンド社)
中原 淳 (著), 荒木 淳子 (著), 北村 士朗 (著), 長岡 健 (著), 橋本 諭 (著)

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。

この記事を周りの方へシェアしませんか?


※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

コーチング・プログラム説明会 詳細・お申し込みはこちら
メールマガジン

関連記事