Coach's VIEW

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認識を変える

「リーダーとしてあなたは毎日成長していますか?」
と聞かれたら、何と答えるでしょうか?

どのような指標で自分の成長を測っていますか?
そもそも、リーダーの成長とは何でしょう?
本を読み知識が増えることでしょうか?
仕事を効率よく進められるようになるということでしょうか?
あるいは、より多くの人を動かせるようになるということでしょうか?

もし、より多くの人を動かせるようになることが
リーダーの成長だとすると、
「人の動かし方」は問われるでしょうか?
それとも、「動かせる人数」が増えればいいのでしょうか?

なかなか問いは尽きません。

ハーバード教育大学院教授のロバート・キーガンは、
こうした問いに対して一つの方向性を与えてくれています。

教授曰く「成長するというのは、世界(物事)に対する認識の仕方が変わることである」。

たとえば、部下を自分の戦略を遂行するための駒としてしか見ていなかった人が、
部下のキャリアに対して意識を向けるようになる。

どちらの見方が優れているかということではなく、
認識の仕方が変わったということは、
キーガン氏の言に従えば、そこに成長があったと言えるでしょう。

日本国内だけでマーケティングをどうするかを考えていた人が、
アジア全体という視点で、あるいはグローバルという視点で
マーケティングを位置づけるようになる。
これも成長だと言えます。

では、どのようにすれば世界に対する認識の仕方を
変えることができるでしょうか?

難しいのは、自分がどのように世界を認識しているかというのは、
多くの場合、無意識、無自覚であり、
自分ではなかなか気づけないということです。

「世界に対する認識」は、朝目が覚めれば自動的にオンになります。
自分の歩き方に自覚がないように、
ごく自然に自分に備わっているものなのです。

一方、他人がどう世界を認識しているかについては、
案外よくわかります。

「上司」という立場の人については、

「あの課長は視野が狭い」
「部下をモノとして扱っている」
「発想の幅が狭い」、、、

幾らでも言葉は出てくるでしょう。

ということはつまり、
みなさんがどのように世界を認識しているかを、
部下はみなさんよりも分かっている可能性があります。

ただ、みなさんの認識の傾向や思考の癖について、
部下が声を上げて伝えるのは並大抵のことではありません。

上司を怒らせてしまうかもしれませんから、
部下の側には大きな勇気を必要とします。


私の友人に、ラガーマンがいます。

彼は、ある年代の代表チームのコーチをしていました。

そして、コーチとして2人の監督に仕えました。

2人目の監督は、トッププロとして数々の輝かしい成績を収め、
現役を引退した直後に代表チームに合流しました。

強面の方で、その監督がグラウンドに来るだけで
場に緊張が走ったといいます。

また、引退したばかりですから、
身体は選手以上に俊敏に動きました。

彼は、誰よりも先頭に立ち、自分が範を示すことで、
選手に技術を教えようとしました。
タックル、ラン、パス、、、
何から何まで、まず自分がやってみせる。

私の友人は、その指導方法に違和感を覚えました。

全てのプレーのモデルになることは
決して監督の仕事ではない。
他にやることがあるはずだ。

しかし、相手は誰しもが認めるスーパープレーヤーです。
しかも強面。

彼の指導方針に異を唱えることは簡単ではありません。
幾晩か悩んだ末、友人は意を決して
自分の想いを監督に伝えることにしました。

「この先、年齢とともにあなたのプレーの精度は必ず落ちます。
 今後さらに上のクラスの代表チームの監督を務めることになれば、
 今のような指導法は通用しなくなるでしょう。
 あなたには監督として大成してほしい。
 監督の仕事は、決してプレイングマネジャーを務めることではありません」

監督は、友人の言葉を真剣な面持ちで聞きました。
そして、友人をじっと見て、たった一言、
「わかった」と言ったそうです。

その後、この監督は、「練習を効果的にマネジメントする」ことが、
自分の責任であると考えるようになりました。

マスタープランを考え、それがどうすればコーチ陣によって
うまく運用されるかを追及するようになりました。

「監督は模範を示すことで選手を育成できる」という認識を捨て、
「監督は全体の育成計画を立てそれをマネジメントする存在である」という認識を
新たに獲得しました。

彼の監督としての力量は、今とても高く評価されています。

私の友人は、勇気を持って、
監督の認識の在り様を鏡となって映し出したのです。

あなたがリーダーであれば、
部下から、あなたがどのような認識を有しているかを
直言してもらうことは必ず役に立つと思います。

私の友人のような勇気のある部下がいればいいですが、
もしそのような気配を周囲に感じられなければ、
ぜひ、みなさんから部下に聞いてみてください。

「自分にどんな認識のパターンがあるか、
 思考の癖があるように見えるか、聞かせてほしい」

「僕には見えていないけれど、
 あなたに見えていることにはどんなことがあるか」と。

自分の認識を認識することこそが、
認識の仕方を変えることに向けた、
つまりリーダーの成長に向けた、大きな一歩となることと思います。

【参考資料】
『なぜ人と組織は変われないのか――ハーバード流 自己変革の理論と実践』(英治出版)
 ロバート・キーガン (著)、リサ・ラスコウ・レイヒー (著)、池村千秋 (翻訳)

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