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社会物理学とコーチング

社会物理学とコーチング | Hello, Coaching!
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「いい人材さえいれば、会社はうまくいく」わけではありません。

また、たった1人、カリスマ的なリーダーさえ現れれば、というわけでもありません。

25年にわたり、Fortune50企業のリーダーシップや組織変革に携わってきたRalph Jacobson氏は次のように書いています。

「ヒエラルキー的なリーダーシップへの過信は、変化への適応がより難しい組織を創り出してしまう」(※1)と。

ビッグデータ分析の第一人者であるMITメディアラボのAlex Pentland博士は、これまで研究してきたことを踏まえて、新著『Social Physics』の中で次のように述べています。

「これまでの経験から、私が学んだことがある。それは、私たちがどういう人間なのか、社会はどのように機能しているのか、について、私たちがこれまで持っていた伝統的な考えのほとんどが間違っていたことだ。『最高のアイデア』を持っているのは、『最も頭のいい人たち』ではない。『他の人たちのアイデアを取り入れるのが最も上手な人たち』だ。変化をドライブするのは、『最も決意が固い人たち』ではない。『同じ目的を持った人たちと、強く結びついている(engage)人たち』だ。人を動機づけ、刺激するのは、『富』や『名声』ではない。『同僚』からの『敬意』と『サポート』だ」(※2)と。

最近では、「コーチング」は、物理学的なアプローチでも解析されるようになってきています。

20世紀に普及した「マネジメント」や「経営」というのは、止まった世界、止まったものを扱ってきました。しかし、人が人を扱って経営する、というのは、動的なもので、「今この瞬間も動いている」ことなのです。

これまで、「リーダー」や「リーダーシップ」を扱うとき、その人「1人だけ」が扱われてきました。それは現実的とはいえません。「この人だけ」がうまくいく、というのはありそうで、ないのです。

今ここでしゃべっていることは、実は「全体」に影響しているのです。

リーダーの会話、リーダーの関係性は、そこだけのもの、そこだけ切り離されたものではなく、本来、組織全体に影響していくものだと考えられます。

心理学者であるHarlene Anderson博士とHarold A. Goolishian博士は次のように書いています。

「『組織』が『コミュニケーションを生む』のではなく、『社会的コミュニケーション』が『文化を生む』のである」(※3)と。

Pentland博士は、ビッグデータ分析を通じ様々な組織を見た結果、次のように結論づけています。

「どんな企業であっても、活性化したり、退屈させたり、機能不全に陥ったりする要因は、人々が互いにどれだけ密接に結びついているのか、あるいは、部門・部署ごとの『分裂』が、どれほど深いのか、による」(※2)と。

ところが、ケン・ブランチャード社が700名以上を対象に実施したリサーチによれば、部下たちが望んでいるだけの量の「対話」は実際には行われていないことが わかっています。

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・70%の部下が、「ゴール設定」に関する「対話」を、「いつも、または 頻繁に」やりたいと思っている。ところが、実際にそれがなされているのは、たったの36%だった。

・73%の部下が、「ゴールの振り返り」に関する「対話」を、「いつも、または頻繁に」やりたいと思っている。ところが、実際にそれがなされているのは、たったの47%だった。

・67%の部下が、「業績についてのフィードバック」に関する「対話」を、「いつも、または頻繁に」やりたいと思っている。ところが、実際にそれがなされているのは、たったの29%だった。(※4)

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皆どこかで、対話をあきらめているところがあります。

答えが出なくても、対話は続けた方がいい。解決しなくていいから、それについて話し続けた方がいい。むしろ、しゃべることがなくても、対話は続ける必要があると思っています。「対話」がお互いの間で続いていることこそが、「信頼」なのかもしれません。

さて、Pentland博士が、クリエイティビティについて触れている箇所が興味深かったので、以下に、ご紹介したいと思います。

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スティーヴ・ジョブズが言っていた通りだ。

「クリエイティビティとは、いろんなものをつなげる、だけのことだ。クリエイティブな人たちに『どうやったのか』と聞くと、彼らは、ちょっとした罪悪感を感じるものだ。なぜなら、実際には、自分がやったわけではなく、何かを見ただけなのだ。表に出てしまえば、誰でも『こんなの当たり前だ』と思うものなのだ。なぜ、彼らにはできたのか? 自分の経験を『新しいもの』と『つなげ(connect)』、『組み合わせる(synthesize)』ことができたからだと。常に、一貫してクリエイティブな人とは、「探索する人(explorer)」だ。

彼らは、膨大な時間を、新しい人に会ったり、新しいアイデアを探し出したりすることに費やす。

ただし、彼らは、「最高」の人や「最高」のアイデアを見つけ出そうとはしていない。それよりも、「違う」視点や「違う」アイデアを持った人々を探しているのだ。

この「継続的に、新しいアイデアを探すこと」と同時に、これらの「探索者(explorer)」がやっている興味深いことがもうひとつある。

彼らは、最近発見したすべてのアイデアを、会う人、会う人、みんなにぶつけてみることで、それらのアイデアの中から、最高のものだけを、「区別して(ふるいにかけて)」いくのだ。

ただし、彼らが会うのは、いろんな「違う」種類の人だ。

「イノベーティブなアイデアを収穫する」ときは、「視点」や「経験」の多様性が成功のファクターとなる。

最も生産性の高い人とは、継続的に、「新しいストーリー」を開発し、検証し続けている人たちだ。(※2)

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先述のJacobson氏は、次のように提案しています。

「リーダーを『単数形 (singular)』で考えることを止めよう。そうではなく、『複数形 (plural)』で、コアな組織コンピテンシーとして、考えてほしい。『リーダーシップ』を、期待をはるかに超える成果を生み出すためにコラボレート(協働)する人々のネットワークとして捉えるのだ」と。(※1)

さきほどの Anderson博士の言葉を借りれば、リーダーの能力や適性とは、 「(その物語の)すべての関係者たちが、『対話によるやりとり』をする『機会』を得られる『環境』を提供できるかどうかにかかっている」(※3)と言えるのかもしれません。

人と人が対話することには、可能性が秘められています。それは、組織を変えます。

会社のビジョンは、そこにいる人々の間に、コミュニケーションがある限り、続いていくのではないでしょうか。

【参考文献】

※1 Ralph Jacobson, "A More Powerful Leadership for Effecting Change",2014 Chief Executive Group, LLC.
※2 Alex Pentland, "Social Physics", 2014 by Alex Pentland
※3 Harlene Anderson and Harold A. Goolishian,"Human System as Linguistic Systems: Preliminary and Evolving Ideas about the Implications for Clinical Theory", Family Process, Inc.
※4 David Witt, "Creating a Text-Like Leadership Language",1995-2014 MediaTec Publishing Inc.

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