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個別面談が組織を変える

個別面談が組織を変える | Hello, Coaching!
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「コーチングは、本当に組織を変えるのだろうか?」

大手化学メーカーで、事業部のトップとして組織変革をリードするA氏は、そんな疑問に直面していました。

  • 組織の変革ビジョンは繰り返し伝えている
  • 環境の厳しさや変化の必要性は、理解されるまで伝える覚悟がある
  • 定期的にまとまった時間を取って、部下全員と話をしている
  • 直属の部下の状況は、充分把握している自信がある
  • 「一方的・強制的」なコミュニケーションはしない
  • 相手の発言に耳を傾け、理解を示す努力をしている

自らコーチングの本で学習し、組織運営にその考え方やアプローチを積極的に取り入れていました。

組織は、辛うじて業績目標を達成していましたが、A氏は組織の変革スピードと活性化に不安を抱えていました。

そして、最初にお会いした際に、質問されたのが、冒頭の「コーチングで、本当に組織は変わるのですかね?」だったのです。

これまで、自身で信じて取り入れてきた人の口から出る、質量感のある声でした。

エグゼクティブ・コーチングをスタートするにあたり、まず、A氏の関係者にインタビューを行いました。結果は、驚くほどA氏を「称賛」するもので溢れていました。

  • 組織全体にビジョンを語り、変革のリーダーとして大いに期待している
  • 異なる価値観をうまく扱い、会議が明らかに意義のあるものになってきている
  • 組織の状況を、詳細に正確に理解し、的確な判断を下している
  • 一人ひとりと丁寧に対話の機会を持ち、話を聞いてくれる
  • 常に変革の必要性を発信しており、必要性の理解が浸透している

組織は、およそ、A氏の意図通りに動いている印象でしたが、A氏の直感は、「このままではいけない」というものでした。

組織長の直感というものは、「何か」を見つけ出している可能性があります。

私は、A氏が信頼を寄せる相談役との面談を申し入れました。

相談役は、「何か」を把握されているようでしたが、まず、コーチの私に、「君にはどう見える?」と尋ねられました。

  • 部下たちは、A氏を有能なリーダーと捉えながら、一方で「自分たちはAさんとは違うし、そうはなれない」「彼に従う人になろう」と、自己説得しているように感じる。

  • 組織の変革ストーリーは明確に語られており、その必要性を多くの人達が納得している。一方で、一人ひとりが、自らの変革ストーリーを持てているようには感じない。

私が伝えたことを聞き終わると、相談役はゆっくりと語り始めました。

「彼は聡明で有能な戦略家だと思いますよ。全体を方向づけするのはうまいよね。

弱みは、一人ひとりに、もう一歩、がつんと踏み込まないこと。彼は、昔から、そこに遠慮するところがある...。

もっと『君にこうしてほしい』と、一人ひとりに言うと良いのですよ。厳しいことでも、はっきり要求できなければ、組織として、その代償は大きいですよ」

「上司が部下と時間をとることと、組織活性度の関係」

実は、A氏には、定期的に「個別面談」を部下と行う習慣がありました。実際、「各人と時間を取っている、一人ひとりを良く把握できている」と自信の表情を見せていました。

ここに興味深いデータがあります。「上司が部下と時間をとることと、組織活性度の関係」に関する調査結果です。(※)

結論は、

  • 部下と週に10分以上まとまって話す時間を設けている上司とそうでない上司との間には、組織活性度に大きな差はない
  • 部下が「自分のために時間をとってくれている」と感じる上司の組織は、そうでない上司の組織より、活性度が高い。

もし、相手が「自分のために」と感じなければ、毎週10分間というコミュニケーションの量的投資は、「コスト」になっているリスクがあるということです。

では、部下が「自分のために時間を取ってくれた」と実感するリーダーの行動とは、何でしょうか?

我々は、この点も調べました。

トップ6は下記です。

部下が「自分のために時間を取ってくれた」と実感するリーダーの行動 トップ6

  1. 部下と定期的に話している
  2. 部下に期待する役割を伝えている
  3. 部下の成功や成長を支援している
  4. 部下の価値観を理解している
  5. 部下をやる気にさせる提案や要望をしている
  6. 話しやすい・相談しやすい雰囲気である

A氏は、深く頷いていました。直感的に感じていた不安への「解決の糸口」を発見したようでした。

私たちは、これらのデータおよび相談役のコメントを参考に、「"本当に"組織を変えるためのコーチングとは何か?」について、深く意見交換を行いました。

最終的に、私たちが設定した仮説は、次の2点でした。

  • 現状では、「変革」は組織に帰属するテーマになっているが、"本当の意味"で、一人ひとりに帰属するものとはなっていない。
  • 一人ひとりに健全な危機感と変化への推進力が宿っておらず、いわゆる「認識の不協和」が形成されていない。

「認識の不協和」とは、簡単に言えば、「理想と現実の認識ギャップ」であり、その葛藤を解決したい、という強い欲望と動機が生み出される源泉となります。

もし理想が本人に魅力的であれば、そちらに引っ張られる力が働き、もし現実が本人に不都合であれば、そこから押し出される力が生まれます。

A氏は、組織ビジョンは語っているし、面談も定期的に行っている、しかし、部下各人の中に「不協和」の状態、つまり、「なんとかしよう」という葛藤を乗り越える"動機"を生み出せていない、と仮説を立てたのです。

A氏は早速、週末の土日を使って下記をテーマに、全員との面談を完了させました。

  • 一人ひとりに、現状評価をはっきりと伝えること
  • 今後のキャリアの可能性について議論し、自らの見解を提案すること
  • それらを踏まえ、「あなたに何をしてほしいのか」、アサインメントを明確に伝えること

結果は上々だったようです。

「今回、かなりはっきりとさせました。言われてしまったな、という表情の人もいましたし、中には、後がない、とまで思った人もいたと思います。相当、危機感を持ったと思いますよ、一人ひとりが」

組織を変革すると言っても、その主体は組織を構成する個人。

一人ひとりが「目指すところに対する現在位置」を目の当たりにし、「健全な危機意識」を抱く。

それを上司と共有しあう時間を部下は期待している。

A氏は、それまでとは異なるコーチングのアプローチで、組織変革の新たなチャレンジをスタートさせました。

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【参考資料】
WEEKLY GLOBAL COACH 2013/7/17号
組織を活性化する上司は "部下のために"時間をとる

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