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いつでも同じように

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昨年、上海で、日系企業総経理Aさんにエグゼクティブ・コーチングをさせていただきました。80名の部下は、全員が中国人。

コーチングのスタート時、「目指したい組織」についてお聞きしました。

「中国人スタッフ一人ひとりが、アカウンタビリティ高く自発的に考え、行動する自律型組織を作りたい。そのための総経理としての役割は、中国人マネージャーの成長を支援すること」

Aさんは、熱く語ってくれました。

さらに、「このマネージャーには、近い将来、会社の戦略立案ができるようになってもらいたい」「この人には、部内の他の社員からも頼りにされるようなプレゼンスを身に付けてもらいたい」など、どのように成長してもらいたいのか、一人ひとりについて非常に具体的に期待されていることが伝わってきました。

一方で、

「部下の成長支援のために、自分はかなりの時間を費やし、一人ひとりと関わる時間を増やしている。それなのに、彼らは自分の期待通りには成長してくれていない。今の自分の成長支援の方法には、何か問題があるのかもしれない。でも、どうしていいのかわからない」

そんな様子が伝わってきました。

「自分の″何か″を変えたい」

そう言うAさんに、私はマネージャーとの関わり方について詳細に質問していきました。

・目標達成について、部下とはどの位の頻度で話しているか。
・部下とは、どんなタイミングで話しているのか。
・1週間に何回、定期的に話す場を持っているか。
・話す場では、Aさんと部下のどちらの方が提案を持ちかけているか。
・部下とのミーティングをキャンセルすることはあるか。あるとしたら、どの位の頻度なのか。

などなど。

対話が進むにつれ、次のようなことが分かってきました。

・スタッフによって、話す頻度や量に差があること。
・Aさんは組織の情報を伝えてはいるものの、スタッフから組織の情報を得ようとはしていないこと。
・マネージャー側からの提案やリクエストを吸い上げられていないこと。
・国内外の出張が多く、スケジュールが定まっていないこと。
・顧客を優先するあまり、部下とのミーティング時間を頻繁に変更していること。

そしてAさんは、「ミーティングをキャンセルすることはあっても、話せるタイミングに充分時間を取り、自分の想いや期待をしっかり伝えている」と、繰り返しおっしゃるのでした。



私は、毎週木曜日の朝、東京にいる上司と電話で30分間「定期的」に話をしています。この「定期的」な時間は、昨年秋にスタートしました。

それまでも、必要な時には都度、報告や相談をしていたので、上司と関わりがなかったわけではありません。しかし、上司との時間が 「定期的」なものになってから、

・「定期的」に話す時間があることで、私だけでなく上司も、その時間は相手のことを最優先している
・「定期的」に時間が確保されると、うまくいっていることだけでなく、うまくいっていないことでも話せる
・「定期的」に話す時間の前には、お互いに、責任を持って話す内容を準備するようになった
・「定期的」であることは、時には苦しくもあるが、次回までの行動のリマインドにもなるし、モチベーションが上がる
・「定期的に関わる」ことは、上司と部下、双方の信頼関係に良い影響を与えるのではないか

そんなことを考えるようになりました。

また、私は、毎月ある集まりに欠かさず参加しています。

上海の日系企業総経理で組織される会で、月1回「決まった」日に、「決まった」会場に集まり、勉強会と懇親会が行われる会合です。

日々忙しい日系企業各社のトップの皆さんですが、参加率はとても高い。海外だからこそ、「どこかに属したい」という帰属意識が働き、総経理同士の情報交換をしたい、新しいことを学びたい、といったことが参加の動機かもしれません。

一方で、私たちは、とかく「重要だが、緊急でないこと」は後回しにし、その後、そのまま忘れてしまいがちなものです。

毎月「決まった」日時に、「決まった」場所で開催されれば、行きやすく、予定も立てやすく、忘れることもない。決まったメンバーと「定期的に会える場」は、 安心して信頼関係が築け、本音で話せたり、時にはリスタートできたりする、「港」のような場なのでしょうか。



私のクライアントである総経理は、コーチングが進むにつれ、「部下の成長支援には『定期的』に部下とコミュニケーションを図る必要があるのではないか」と思うに至り、部下との「定期的な時間」を最優先することに挑戦し始めました。

コーチングの終了時、19名の中国人マネージャーに行った総経理のリーダーシップに関するアセスメントでコーチング「前」と比べて最も変化があったのは、「成長支援」に関する項目でした。

・「部下が目標達成するように、上司が『定期的』に関わっている」は、ポジティブ回答の人数が、コーチングが始まる前の9人から17人に増加。
・「部下の成功や成長を支援しようとしている」は、7人から17人に増加。
・「部下をやる気にさせる提案や要望をしている」は、10人から16人に増加。

また、ある中国人マネージャーは、インタビューで、「総経理の態度や関わりの変化によってその期待や自分の目標が明確になり、それに集中して努力できるようになった」と話してくれました。

リーダーが、部下と「定期的」に関わり、その目標達成を助けるのは、組織全体の目標達成のためにも大切なことではないでしょうか。

あなたは、部下の目標達成を支援するリーダーとして部下とどの位「定期的」に関わっていますか。

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