Coach's VIEW

Coach's VIEW は、最新のコーチング情報やリサーチ結果、海外文献の紹介を通じて、組織改革や人材開発、リーダー開発グローバルビジネスを加速させていくヒントを提供するコラムです。


組織の変化は、『つながり』から生まれる

1985年、ひとつの質問がインテル社の経営を変えました。(※1)

「僕らがお払い箱になって、取締役会が新しいCEOを連れてきたら、
 そいつは何をするだろう?」

経営陣のひとりから飛び出したこの質問に
当時のCEOは間髪を入れずこう答えました。

「メモリから撤退するだろうな」

1968年に創業したインテル社は、メモリ事業で大成功を収め、
わずか10年足らずで一大企業へと成長しました。
しかし、81年以降はマイクロプロセッサ事業が急成長。
それまで主力だったメモリ事業は
シェアの3%以下にまで落ち込んでしまったのです。

にも関わらず、メモリ事業からの撤退という道を選べずにいたのは、
経営陣がかつての成功体験を忘れられずにいたことが一因とも言われています。
結果、経営は非常に苦しいものとなっていました。

冒頭に紹介した質問は、そうした中で投げかけられたもので、
インテル社が新たな選択肢に気づき、
大きく経営の舵を切るきっかけになったのです。

こうした事業選択のような大きな場面に限らず、
過去に成功した方法を変えることは容易ではありません。
みなさんの日々の仕事にも潜んでいる要素ではないでしょうか。

たとえば、
数年間変えていない取引先や前任者からそのまま引き継いだ業務など、
組織の変化とともに見直す必要がありながらも、
対応できていないことは少なくありません。
これらが何も変わらずに積み重っていくことが
組織全体の変化のスピードに影響を与えてしまっているのです。

つまり、新しい考え方や方法を導入することは、
「組織の変化」に大変重要な要素だと言えます。

では、過去の成功にこだわらず、
「新しい考え方や方法を導入している組織の特徴」は、
一体どのようなものでしょうか。
これに関するコーチング研究所の調査結果をご紹介します。(※2)

調査では、98社の組織調査のデータに対し、
「私の会社では、過去に成功してきた考え方・やり方にこだわらず、
常に新しい考え方・やり方を導入している」という項目を
「組織の変化」を表すものとして着目しました。
そして、この項目と、
組織調査項目を構成する5つの要素との関係を分析しました。(※3)

「組織の変化」項目に最も相関が強い要素は
「社員間のつながり 0.78(相関係数、以下同)」という結果でした。
さらに、「目標達成への期待 0.72」「組織運営の仕組み 0.68」と続きます。
最も値の小さい2要素はリーダーに関するもので
「リーダーの発信 0.51」「リーダーへの信頼 0.51」でした。

この結果から分かることは、「組織の変化」項目は、
「リーダーの影響力」よりも、お互いに影響し合う「社員間のつながり」が
強く関係しているということです。

それでは、「社員間のつながり」とはどういうものか、
具体的に見ていきましょう。

「社員間のつながり」を構成する要素の中で
「組織の変化」項目と最も関係の強い3項目(相関係数上位3項目)は次の通りでした。

 ・職場のメンバーには異なる意見であっても相手の話を聞こうとする姿勢がある。0.80
 ・社員は、自分が得た情報や経験を、積極的に職場のメンバーに共有している。0.79
 ・職場のメンバーは、相手が違う部署であっても、領域を超えて協力している。0.74

社員が「会社は変化している」と認識している組織では、
上記3項目のような社員間のつながりが存在することを示しています。

つまり、これらを満たしている組織は、相手の部署や領域などを限定せずに、
積極的に社員同士が「つながり」を築いている状態にあると言えます。

また、アリゾナ州立大学(ASU) のリサーチャーである
Win Burleson 氏と Pia Tripathi 氏は、センサーで測定した行動データから
「クリエイティビティ(創造性)」を予測する調査を行いました。(※4)

その結果、「創造性」との正の相関が非常に高かったのは、
「チームメンバーたちがお互いに関わり合っている時間の量」と
「動いているエネルギーの消費量」の2項目だったそうです。

「創造性」を、「従来の方法に左右されず、より効果的な新しい方法を試す能力」
と捉えれば、この調査は「組織の変化」にも通じるものがあると思います。

「創造性」については、
15世紀のイタリア、ルネッサンスにおいても
次のような興味深い話があります。

芸術や学問などで新たな発見・発展が相次いだ要因、
つまり、創造性が高まった要因として、
フィレンツェに、彫刻家、哲学者、科学者、金融業者など、
多種多様な人々が集結したことが挙げられるそうです。(※5)

彼らは互いに学び合い、互いを隔てる文化や学問の障壁を取り払うことで
「つながり」を築いていったと言われています。

新しい変化には、新しい視点が必要であり、
それには、多様な「つながり」が有効だと言えるでしょう。

そして、それは組織でも同様です。

社員がつながることで、互いの視点が交換され、
新たな気づきが生まれます。
それによって、
今までに思いつかなかった行動が引き起こされるのではないでしょうか。

職場で意見の異なる相手の話を聞く。
些細なことでも積極的に情報共有をする。
他部署の同僚といつもの領域を超えて協力する。

こうした日々の関わりによってつくられる「つながり」が
「組織の変化」を生み出すのです。

【脚注・参考資料】

※1 『なぜリーダーは「失敗」を認められないのか』(日本経済新聞出版社)
   リチャード・S・テドロー(著)、土方 奈美(翻訳)

※2 コーチング研究所によるリーダーシップおよび組織の状態に関する調査

※3 「組織の変化」項目を含む要素は、「組織の変化」との
   相関関係が強いことが自明なため、該当要素を除外して分析を行った。

※4 "People Analytics: How Social Sensing Technology Will Transform Business and
   What It Tells Us about the Future of Work" (FT Press Analytics)
   Ben Waber(著)

※5 『メディチ・インパクト』(ランダムハウス講談社)
   フランス・ヨハンソン(著)、幾島 幸子(翻訳)

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。

関連記事