Coach's VIEW

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真ん中に立つリーダーシップ

組織のエグゼクティブは、コーチングを受ける過程で、
何を手に入れているのでしょうか?

コーチング研究所が、
コーチングを受けたエグゼクティブ85名に、
効果を実感した項目について、アンケート調査を実施しています。(※1)

その結果、全21項目の中で上位に挙がったのが、次の5項目でした。

1.ビジョンの明確化
2.フィードバックの受容
3.自己認識の向上
4.新しい方法への挑戦
5.組織目標の明確化

今回は、これらについて、
リーダーの行動や職場への影響といった観点で、
具体的なケースをもとに、ご紹介したいと思います。

* * *

新規ビジネスの創出を期待される、サービス業界大手の事業部長A氏。

それまでは、
幅広い経験と人脈を活かし、数々の成果を上げてきましたが、
新しい事業部では、何もかもが初めての経験です。

新しい組織をリードする立場になったものの、
思うようにチームを牽引し切れずにいました。

「部下たちの前でビジョンを語っても、伝わっている実感がない」
「議論を見ている限り、彼らの視野が狭いように感じる」
「いつでも自分に相談できるように部屋のドアを開けているが、誰も来ない」

前に立って未来を示し、
後方からチームの方向性を確認し、
常にオープンマインド。

リーダーとしての「志」や「何とかしよう」という気持ちは、
偽りないものとして伝わってきます。
しかし、同時に自身の理想と現実のギャップに
「困惑」しているようでもありました。

その「困惑」の理由を、私が目の当たりにしたのは
ある会議に同席させてもらった時のことです。

A氏と、事業部のキーパーソン5人が参加。
一見、活発な意見交換が行われているように見えましたが、
数分後、漠然と違和感を覚え、まもなくその原因に気づきました。

誰もが、お互いの顔を見て話さないのです。
リーダーであるA氏の顔すら見ない。

私がそのことを指摘すると、気まずい沈黙が流れた後、
突然、ある女性メンバーが口を開きました。

「メンバーと一緒に仕事をしている実感がない。
 実はAさんに対してもそう感じていて、
 自分にとって身近ではない気がするんです」

ミーティング後、

「彼らの現場の中に、僕はいないということか」

と、A氏は肩を落としながらも、
その言葉は、何かを確信しているようにも聞こえました。

そして、A氏自ら、ある取り組みを行うことを決め、
結果、その取り組みが職場に変化をもたらすことになります。


A氏は、女性メンバーのフィードバックをきっかけに、
自身のリーダーとしての「ポジショニング」について
考えを巡らせたそうです。

チームの前に立って方向性を示し、
チームの後ろから様子を確認することはしていても、
チームを真ん中から「実感」する機会が、あまりに少ないのではないか。

そう考え、ある方法を思いついたのです。

「事業部のフロアの真ん中に、自分のデスクをつくりました。
引っ切りなしに繰り返されるお客様や他部門との交渉、
部下同士のケンカもよく聞こえますよ。
まさに、現場のリアルを『実感』できるんです」

こうして、A氏はオフィスの真ん中で、
『絶え間なく会話の中に居る人』(※2)になりました。

そして、自分は現場から何を必要とされているのか、
というリーダーとしての「新しい役割」を徐々に見出せるようになったのです。

「現場が見えたことで、自分の役割が明確になり、
 メンバーとともに、ビジョンに向かって行動できるようになった。
 会話や相談も活発になり、メンバー自身のモチベーションも向上している」

社員とともに現場を「実感」しながら、
時に、前に立ってビジョンを語り、
時に、後ろに回って集団の方向性を把握する、

そんな存在へと変わっていきました。

コーチングを通じて、
A氏は「真ん中に立つリーダーシップ」というポジションを見出し、
メンバーとともに、新規ビジネス開発に向けた取り組みを加速させています。

みなさんは、どのように自分のリーダーとしての立ち位置をとっているでしょうか?
A氏の事例が、それを振り返るきっかけになれば幸いです。

【脚注・参考資料】

※1 「エグゼクティブコーチングの効果」(コーチング研究所調査)
   調査対象: エグゼクティブコーチングを受けた85名
   調査期間: 2013年1月~2014年3月
   調査方法: コーチングの効果に関するアンケート調査(全21項目)

※2 『協働するナラティブ 「言語システムとしてのヒューマンシステム」』(遠見書房)
   (P51より)
   ハーレーン・アンダーソン(著)、ハロルド・グーリシャン(著)
   野村直樹(著・翻訳)

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。

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