Coach's VIEW

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『environment = 環境』を創り出す

5月に、Bersin by Deloitte社が発表した
「2014年 リーダーシップ開発の実情調査」では、

企業にとって、ヒューマン・キャピタルの最大の懸念でありながらも、
準備ができていない/理想と現実とのギャップが
最も大きいもののトップに、「リーダーシップ」が挙げられました。(※1)

また、先日、全米産業審議会のカンファレンスボードが発表した
「2014年 CEOが直面している課題」における調査でも、

「カンファレンスボードに出席していたASEAN諸国のリーダーたちに聞いたところ、
 彼らにとっての一番の懸念が、
 『リーダーシップ人材』と『技術力の高い人材』の『不足』だった」(※2)

と、「ヒューマン・キャピタル」の問題が1位に挙がっています。

また、J. Stewart Black氏らが、面白いことを書いていました。

「多くの人が、『世界はますます小さくなっている』と言いたがるが、
 実際には、世界は、ますます『大きく』なっている。

 現実には、過去40年間で、
 アクセスできる国や領土の数は、およそ25%増えているのだ」(※3)

そうなってくると、企業にとって、
問題を「創造的に」解決することが重要になってくるのが分かります。

ニューハンプシャー大学コミュニケーション学の名誉教授である
John Shotter氏は、

「新しい思考は、確実性ではなく、可能性から始まる」(※4)

と書いています。

多くのリーダーやCEOが、
同じ思考回路で考えるのを止めたり、視点を変えたりしていくために、
コーチを付けています。

ひとりでは思いつかないようなことも、
コーチとの「対話」の中で、
コーチからの「問い」や「提案」によって喚起されていくでしょう。

そうすることによって、思考回路を変える。
それが、「創造的な問題解決」につながるのです。
「能力が高まる」とは、「脳のネットワークが変わること」とも言えます。

多くの組織が、コミュニケーションが原因で、機能を落としているように思います。

どうやったら「対話」というのは前に進んでいくのか、について
経営者やリーダーは知る必要があります。

そうでないと、権威主義的になってしまうからです。
それでは、会社についての重要な情報には触れられなくなります。

Ken Blanchard氏は、
組織における「対話」が持つ力について、次のように書いています。

「『集中的な対話(focused conversations)』をするリーダーは、
 組織に新しい活力を与え、
 人々を、組織のビジョンの達成へと導くことができる。

 『一対一の対話』の重要な要素のひとつが、

 自分自身の開発に、本人である直属の部下を参加させること、だ。

 スターバックスの会長兼CEOであるHoward Schultz氏 は、
 2008年に会社の建て直しに取り組んでいたときに、
 ベスト・アイデアのほとんどが、『現場』 から出て来たことを発見している」と。(※5)

Charles S. Jacobs氏は、次のように話しています。

「最近の脳科学における発見が、『マネジメント』を変えつつある。

 ここにきて、わかったことは、
 企業の管理職がやってきたことのほとんどが、『自滅的』だったということだ」(※6)

人間とはどういうものなのか、がますます解明されてきて、
人を扱うマネジメントやリーダーシップに変化が必要になってきています。

「グローバル人材」とは、
人を人として見られる人のことではないでしょうか。

先述のShotter氏は、次のように書いています。

「例えば、機械のように、人工的に作られたシステムは、
 どんな複雑なものでも、1つ1つの部分から成り立っている。

 それぞれの部分は、全体的なシステムの部分であっても、
 そのことによって元の性質を変えることはない。

 しかし、生きている有機的なシステムである人間は、部分から成り立ってはいない。

 機械とは対照的に、人は全体として成長するのである。

 有機的な存在である生きた身体は、周囲との関係によってのみ存在する」(※4)

MITのThomas Malone教授は、
「集団知能」の研究の中で、次のように話しています。

「お互いが、お互いの中に何を見ているのか、がチーム(組織)そのものである」と。(※7)

同じくMITのAlex Pentland博士の研究では、

「どれほど 『意識的に決断している』 と思われる領域でも、
 実際には、自分の『周り』を取り巻く『同僚/同輩』との『接触』からの影響の方が、
 圧倒的な力を持っていた」(※8)
ということが分かっています。

仕事をするということは、「environment = 環境」を創り出すことに他なりません。
「家族」は「自分が創り上げたもの」であることが分かるかと思います。

では、会社の人たちはどうでしょうか?

うまく行っている人/リーダーというのは、「環境を創り出すこと」に徹底しています。

「環境を自分で創る」 ということに、かなり力を注いでいます。

私たちは、組織の中を流れるコミュニケーションをコーチしているのです。

「この人」をコーチしているのではなく、
「この人」と「この人」の間、
「ここ」と「ここ」の間に流れているものをコーチしているのです。

【参考文献】

※1 Deloitte, 2014, Leadership Development Factbook 2014:
   Benchmarks and Trends in U.S. Leadership Development, Deloitte Development LLC.

※2 Conference Board, 2014, CEO Challenge 2014, The Conference Board, Inc.

※3 Black, J.S. & Morrison, A.J., 2010,
   Sunset in the Land of the Rising Sun, Palgrave McMillan

※4 Shotter, J. Instead of 'cool reason':
   'Systemic thinking' and 'thinking about systems'

※5 Blanchard, K., 2014, Leading Through Conversations,
   MediaTec Publishing Inc., June 24, 2014

※6 Jacobs, C.S., Leading Minds Instead of Managing Behavior,
   Ivey Business Journal, January / February 2011

※7 Kleiner, A., 2014, The Thought Leader Interview: Thomas Malone, PwC

※8 Pentland, A., 2014, Social Physics, The Penguin Press

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