Coach's VIEW

Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。


多様性をマネージする

多様性をマネージする
メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

先日、あるアメリカ人CEOに、こう問いかけました。

「日本人駐在員がアメリカ人社員と円滑なコミュニケーションを図るために何か良い方法はないだろうか?」

日本よりも多様性に富むアメリカならそうした経験に長けているだろうと思ったのです。

しかし、返ってきた回答は意外なものでした。

「実は我々アメリカ人経営者も、社員との関わり方には苦労が絶えないのです」

アメリカは、「人種」「国籍」「ジェンダー(性差)」「年齢」「障害」など、さまざまな多様性(ダイバーシティ)を尊重してきた国と言われています。

したがって、それらひとつひとつが意思の疎通を妨げないように
マネージャーもコミュニケーションに神経を使う場面が多いようなのです。

一方、日本国内で働く場合、アメリカほど多様性のある環境は多くはありません。そのため、海外で勤務することになって、初めて、日本より多様性に富んだチームメンバーをマネジメントしなくてはいけなくなります。

そうした場面での苦労を経験された方は多いのではないでしょうか?

では、アメリカの企業は多様性を乗り越えてきたのか、というと、どうやらそうではないようなのです。

「実は乗り越えられてはいない。ミスコミュニケーションを発生させないため、人と人との関わり自体を少なくする『仕組み』をつくっただけだ。一人ひとりの仕事内容の定義と責任権限を細かく規定することや、指揮命令系統をシンプルにすることによって」

彼らはそうした仕組みの中でいわば「多様性を管理している」ようなのです。

世界中の企業のCEOから「今、直面している課題」

カンファレンスボード(The Conference Board, Inc.)が、1999年から毎年発表している『CEOチャレンジ(The Conference Board CEO Challenge)』
世界中の企業のCEOから「今、直面している課題」について
聞き取り調査を行い、まとめたものです。

2014年版では、すべての経営者が「チャレンジ」と認識しているトップ項目に「ヒューマンキャピタル(人材)」が挙げられています。(※1)

そして、その最重要課題に挙げられているのが「社員間の関わり合いを強くすること」。

特に、アメリカの経営者たちが重視する課題としては、トップにランクインされています。

多くの企業が、「多様性のある組織へのマネジメント」に対して高い関心を持つと同時に、
その課題解決に向けて頭を悩ませていることが伺えます。

どうすれば多様性のある組織で「関わり合いは強くなる」のか

では、具体的にどうすれば多様性のある組織で「関わり合いは強くなる」のでしょうか?

『CEOチャレンジ』によると、

  • 社員だけでなく、経営陣自身も多様性と主体性向上に取り組むこと
  • 社員同士の関わり合いが強まるように必要な開発、トレーニングを施すこと

とあります。

つまり、組織のリーダー自身が 多様性と向かい合い、社員同士の関係性に働きかけていくことが重要であると言えるのではないでしょうか。

サッカーのチームづくりに目を向けると、分かりやすいかもしれません。

皆さんは、ジョゼ・モウリーニョ監督をご存知でしょうか。

現在、イングランドの名門サッカークラブ、チェルシーに所属。これまでに数々のビッグクラブで指揮を執り、4ヵ国でリーグタイトルを獲得するなど世界最高の監督の一人とも言われています。

そんな彼がトレーニング中によく行うのが選手への「問いかけ」だそうです。(※2)

「私はよく試合形式の練習を途中で中断し、さまざまな場面で選手がどのような考え方をもっているか尋ねたものだ」

「すぐに全選手を集めて、議論を行い、その中から2~3の対処法を試してから、再び意見を聴き直した」


入れ替わりが激しく、異なる人種や思想、プレースタイルを持った選手が集まる中で、「より強いチームをつくるために何をすべきか」についてリーダー自身が選手と向き合い、「問いかける」ことで、選手同士に議論が生まれ、積極的な関わり合いを生み出します。

彼がひとつのクラブではなく、複数のクラブで輝かしい結果を残せているのには、こうした働きかけに秘密があるのかもしれません。

これはスポーツの世界だけに限らないのではないでしょうか。

リーダー自身が多様性と向き合い、多様性に富んだメンバーがひとつのゴールに向かおうとする。だからこそ、新たなコラボレーションやブレークスルーが産まれる可能性がある。

リーダー自身はメンバーに関わり、メンバーの関わり合いを加速する環境を創出していく必要があります。

ここに多様性を「管理」するステージから「強み」にする、真のダイバーシティ・マネジメントのヒントがあるのではないでしょうか。

【参考文献】

 ※1 Charles Mitchell/Rebecca L. Ray, Ph.D./Bart van Ark, Ph.D., The Conference Board CEO ChallengeR 2014: People and Performance, 2014

 ※2 ローレンス・ルイス, 『ジョゼ・モウリーニョ』, 講談社, 2006, p116

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

多様性/ダイバーシティ 異文化理解

組織へのコーチング導入や組織リサーチ、グローバル人材の開発についてなど、お気軽にご相談ください。

メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

関連記事