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フィードバックとエンゲージメント
コピーしました コピーに失敗しました部下のエンゲージメントを高めること、これはリーダーにとって、とても重要なことです。
リーダーはさまざまな目標を持っています。プロジェクトの成功、業績アップ、コストダウン......部下のエンゲージメント向上は、そうした目標を達成するためのベースと言えるでしょう。
リーダーの適切なフィードバックは、部下のエンゲージメントを高める
行動統計学者のJoseph Folkman氏は、Forbes(フォーブス)のコラムに、興味深いデータを紹介しています。
「部下に、率直にフィードバックをする能力が下位10%内に入るリーダーの部下のエンゲージメント・スコアは、平均して下位25%に入っている。一方で、率直なフィードバックの能力が上位10%内に入るリーダーの部下のエンゲージメントは、スコアのランキングで、上位23%に入っている」(※1)
これは、22,719名のリーダーを対象に最近実施されたリサーチです。
この結果から、リーダーの適切なフィードバックは、部下のエンゲージメントを高めることが示されています。
また、51,896名のリーダーを対象に行われた別のリサーチによれば、
「自らフィードバックを求める能力が下位10%内のリーダーは、総合的なリーダーシップの能力において、下位15%以内にランクされている。逆に、自らフィードバックを求める能力において上位10%内に入るリーダーは、総合的なリーダーシップの能力においても、上位14%以内に入っている」(※1)
つまり、「自らフィードバックを求める能力」が高いリーダーに優秀なリーダーが多いことが分かります。
フィードバックはとても重要なコミュニケーションのひとつ
フィードバックはとても重要なコミュニケーションのひとつです。
一人ひとりが目標を達成するための軌道修正に、他者によるフィードバックは必要不可欠です。このことについては異論を挟む余地はありません。誰しもフィードバックは大切だと思っているはずです。
ところが、現実はどうでしょうか?
多くの人が、フィードバックを受けることも、することも、怖がっています。「矯正」や「攻撃」、「否定」などネガティブなイメージとして誤解しがちなのです。
だからこそ、リーダーには高いフィードバック能力が求められます。
高いフィードバック能力とは、部下のフィードバックに対する誤解を解きつつ、部下の成長につながる建設的なフィードバックを行い、そして、自らもフィードバックを求めることです。
しかも、ただフィードバックを行えば良いというわけではありません。一方通行的な形では、うまくいかないこともあります。
たとえば、組織で一般的に行われている多面評価、360度フィードバックは、結果を本人に渡して、自分で考えさせることが専らです。時には、ネガティブな内容を見て単に嫌な気持ちが残るだけになってしまうこともあります。
結果を本人に渡して、それで終わり。これでは、せっかくのフィードバックを活かすことができません。
その効果を高めるためには、その内容をもとに、「対話」することが大切なのです。それによって、目標に対する自分の現在位置を、より正確に知ることができます。
自分が目標に向かって正しい方向に動いているのか。自分に何が足りていて、何が足りないのか。自分は次にどのような行動を取るべきなのか。
フィードバックと「対話」が繰り返されることで、着実に人は成長し、目標達成に近づく。
リーダーとの関係の中で「自分自身の成長を実感すること」が、「部下のエンゲージメントを高めること」
リーダーとの関係の中で「自分自身の成長を実感すること」が、「部下のエンゲージメントを高めること」の本質だと、私は思うのです。
では、どのようなフィードバックと「対話」から始めればよいでしょうか。
リーダーとして、部下のエンゲージメントを高めるための第一歩は、部下の現在のエンゲージメントの状態を知ることです。
その助けとなるのが、以下に挙げた10の質問です。これらへの答えをもとにフィードバックと「対話」を起こす。
それができれば、部下のエンゲージメント向上に向けて、大きな価値を生み出せるはずです。
社員の「エンゲージメント」を測るための効果的な質問 トップ10(※2)
- 毎朝、会社に来るときのあなたの気持ちは?
- あなたの上司は、あなたを刺激していますか?
- あなたが「会社に行きたい日」は「会社に行きたくない日」の日数を上回っていますか?
- 会社に来るときのあなたの気持ちを、一文で表してください。
- 自分がどこで働いているのか、を人に言うことを誇りに思いますか?
- あなたが効果的に仕事を成し遂げるのを可能にするツールはありますか?
- あなたにも影響のある「決定」に寄与するチャンスはありますか?
- あなたの役割が、会社の成果達成に向けて、どのように貢献しているのか、理解していますか?
- 自分のところに来る情報を、あなたは信頼していますか?
- 自分の仕事は評価されている、と感じますか?
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【参考文献】
※1 Joseph Folkman, 2013, The Best Gift Leaders Can Give: Honest Feedback,
Forbes.com LLC
※2 Melcrum, 2014, Top 10 questions for employee engagement surveys, Melcrum Ltd.
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