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人はいつまで変われるのか?

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A社の人事担当者に
エグゼクティブ・コーチングをご紹介した時のことです。
その担当者は私にこう言いました。

「弊社の社長や役員には必要ありません。
 彼らはすでに十分なパフォーマンスを発揮していますし、
 そういう立場の人は、今さら変わらないでしょう」

ところが、その2日後、
同社の人事担当役員から直接問い合わせがありました。

「社長が、エグゼクティブ・コーチングに非常に興味を持っています。
 今まさに、会社を変えていこうと、
 全社を挙げた取り組みをスタートするところ。
 社長は『自分が変わらないと成功しない』という強い想いを持っていて、
 ぜひ自分にコーチをつけたいと言っています」

すぐに導入が決まりました。

実は、人事担当者が最初に言った
「今さら変わらない」という言葉は、
多くの場面で耳にします。

A社の人事担当者も、
人事という仕事を通じて、たくさんの人を見てきたからこそ、
そういう考えに至っているのかもしれません。

しかし、本当にそうなのでしょうか?

* * *

ハーバード大学のロバート・キーガンとリサ・ラスコウ・レイヒーは、
大人の知性に関する30年もの研究について、
著書の中でこう記しています。(※1)

「1980年代、脳科学の世界では、
 『思春期以降、人間の知性に質的変化は起きない』というのが常識だった」

「今日、脳研究に新しい手法が活用されるようになった結果、
 脳科学の世界でも『脳の可塑性』という考え方が認められており、
 人間の脳には生涯を通じて
 適応を続ける驚異的な能力が備わっていると考えられている」

「人間の知性は、大人になってからも年齢を重ねるにつれて向上していく。
 そのプロセスは高齢になるまで続く。
 人間の知性の発達は、二十歳代で終わるものでは決してない」

彼の言う「知性」とは、その人の「物事の捉え方」を指します。
いわば、コンピューターのOSにあたるものです。

* * *

つまり、脳科学の観点では、
「人は何歳になっても成長できる」と言えます。

では、「今さら変わらない」という、
ある種の「思い込み」は、どのような影響を周囲に与えていくのでしょうか。

ひとつは、
自分や他者の変化(成長)の機会が失われてしまいかねないということです。

実際、A社の社長や役員の方の変化(成長)の機会は、
人事担当者の思い込みによって、奪われていたかもしれません。

そして、もうひとつが、
「組織変革の遅れ」です。

組織変革を目指す企業でよく見られることですが、
私たちが、

「組織の意識改革を進めるための、
 最適なリーダーは誰ですか?」

と質問すると、
50歳前後、またはそれ以上の世代の
「今さら変わらない」と思われている年齢層を 候補から外すケースが多いのです。

しかし、会社に長く貢献してきているその世代は、
会社を良くしていく取り組みから外されてしまうと、
非協力的な態度を取りがちになり、
組織変革が進みにくいということがしばしば見られます。

実際は、どの世代であっても
自分自身も会社を良くしたい、変えていきたい
と、多くの人が考えています。

組織変革においては、
そうした人たちを積極的に巻き込んでいく必要があるはずです。

では、人が変わり続けるには何が必要なのでしょうか?

それは、自分にも他者にも
「何歳になっても人は変われる」と信じることだと
私は思います。

もちろん、他にもさまざまな要素があると思いますが、
「何歳になっても人は変われる」と普段から思っている人は、
自分自身が変わらなければならないという状況を
積極的に受け入れやすいのではないでしょうか。

だからこそ、そうした人たちは、変化(成長)を恐れませんし、
結果、変わっていけるのです。

さらに、彼らは、周囲の人にも変化(成長)の機会を提供するでしょう。
自分だけでなく、他の誰もが変化(成長)できると信じているからです。

そうした意識を持ち、周囲に働きかけていく人こそ、
組織変革の担い手として、最適なリーダーと言えるのではないでしょうか。

A社の社長は、 まさに「何歳になっても人は変われる」と思っている人であり、
社員を、組織を、変えていくためのリーダーと言えます。

あなたは、「何歳になっても人は変われる」と信じていますか?

【参考文献】

 ※1 ロバート・キーガン, リサ・ラスコウ・レイヒー, 池村千秋 訳, 2013,
    『なぜ人と組織は変われないのか』, 英知出版

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