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文化を知る対話

文化を知る対話 | Hello, Coaching!
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「99%の人が、『自分の勤務先に変化が必要』と考えている」

この数字は、7月に当メールマガジンで実施したアンケートにより得られたものです。(※1)「変化が必要」という言葉はよく聞きますが、まさに、それを裏付ける結果と言えます。

さらに、「最も変化が必要」と感じる項目として、31%の方が「組織風土」と回答しています。これは全項目の中で一番高い割合です。

「組織風土」とはどういうものなのか。ほぼ同等の概念として「組織文化」について考えてみたいと思います。(※2)

組織開発の権威であるマサチューセッツ工科大学名誉教授のエドガー・シャイン氏は、著書の中で次のように述べています。(※3)

「文化は重要である。なぜならば、文化はわれわれ個々人および集団としての行動、認識方法、思考パターン、価値観を決定する強力ではあるが潜在的でしばしば意識されることのない一連の力であるからだ。(中略)文化的要素が、経営の戦略、目標、業務方針を決定する」

冒頭のアンケート調査で、「変化が必要」と回答した方のフリーコメントには、「世の中は変化しているのに、社員は、現状と自分たちの考えのズレに気づいていない」といった意見が散見されました。

その背景には、「このままではうまくいかなくなることに、なぜ気づかないのか?」という想いが見てとれます。

その「気づかない要因」の一端を、先述のシャイン氏の言葉から見出すことができます。

文化が強い力を持っているにも関わらず、影響を受けていることに、人は無意識的なのです。

この性質が「組織文化」の変化を妨げる一因であり、同時に「組織文化」を変えていくヒントでもあるのではないでしょうか。

潜在的に影響する「組織文化」を知れば、何を変えるのか、変える理由は何か、どう変えるのか......といった、変化を進める足がかりができます。

つまり、当たり前になっている自分たちの「組織文化」を認識することは、変化への第一歩なのです。

では、「組織文化」を認識するにはどうしたらいいでしょうか。その糸口となるエピソードがあります。

* * *

東南アジアに駐在予定の方が、先輩駐在員からアドバイスをもらったそうです。

「赴任した後、違和感を持ったことは全部メモをしておくといい」

それは例えば、

・なぜ、現地社員と本社社員は別々にご飯を食べているのか
・現地化を掲げつつ、なぜ現地管理職は経営会議に参加していないのか

といったことです。 メモをする理由を尋ねると、

「初めは違和感を持っていたことも、時間が経つと何も感じなくなってしまう。そうすると、手を打てなくなるから、最初にメモをしておいた方がいい」

と先輩は答えたそうです。

* * *

人は、時間とともに組織の文化になじみ、組織の「当たり前」を共有します。

通常、組織が一体感向上を目指すうえで、メンバーが同じ文化を共有することは欠かせません。

ただ、そうなると、もはや「組織文化」は、考えの「前提」となるため、わざわざ話題に出すことが少なくなります。

同じ文化の中にいる人との対話をきっかけに、「組織文化」の認識に至るのは難しいことなのです。

一方で、全く違う文化の中にいる人と話すことは、当たり前になっている「組織文化」を認識するうえで効果的と言えます。

* * *

弊社のコーチ・トレーニング・プログラム(現 コーチ・エィ アカデミア)にはさまざまな組織の方が同時に参加しています。

ある日、参加者のひとりが、

「部下と1対1の面談を毎週していて......」

とおっしゃいました。すると、それを聞いた別の参加者が驚きながらこう言いました。

「うちの会社では、半年に1回が当たり前です。面談をそんなにたくさんやるものとは思っていませんでした」

* * *

ある組織では「当たり前」でも、別の組織では「想定外」の出来事になります。

社外の人でなくても、他部署の人、海外拠点の人、年齢の離れた人などでも同様です。

自分と違う文化を持った人と話すことで、自分が暗黙のうちに受け入れていた文化がどんなものかを気づかせてくれるでしょう。

では、そうした相手と、何について話すと効果的なのでしょうか。

シャイン氏は文化を理解するための問いをいくつか記しています。(※3)その一部を紹介しますので、自分とは全く違う文化に属していると思う方とぜひ質問し合ってみてください。

・会議は時間通りに始まるか?
・オフィスのレイアウトは、働き方のスタイルや地位をどのように反映しているか?
・組織に新しく人が入ってきた時に、教えることは何か?
・家庭や個人的な問題を同僚や上司に相談するか?
・あなたの職場ではどのようなことが賞賛、制裁されるか?
・あなたが所属する組織の一員であることを示す印は何か?

対話から自分の所属する「組織の文化」が浮かび上がってくるかもしれません。

【脚注】 ※1 「組織の変化に関するアンケート調査(No.3)
実施期間:2014年7月2日~7月15日
回答者数:136名

※2  組織風土は、エドガー・シャインによる区分では組織文化の一部ですが、 本コラムでは実務の感覚を優先し、ほぼ同義と考えて扱っています。

※3  エドガー・シャイン, 梅津裕良(訳), 横山哲夫(訳),2012, 『組織文化とリーダーシップ』, 白桃書房

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。

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