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『ダメなものはダメ』はダメなのか
コピーしました コピーに失敗しました「『会話』と『対話』、何が違うと思いますか?」
皆さんはこの問いに何と答えるでしょうか。
以前、劇作家であり、演出家の平田オリザさんの講演に参加したのですが、平田さんは冒頭からこうおっしゃるのです。
「この国には対話がないのですよ」
「だから、会話と対話の違いもよく分からないでしょ」
確かに、
「カンバセーション」?
「ダイアローグ」?
と、その当時はピンと来ませんでした。
ただ、最近では「『対話』は組織風土をも変えていくエンジンになる」として、「対話」を組織風土改革のテーマに掲げる企業が増えています。
そこで、改めて「対話」について考えてみました。
ちなみに、平田さんによると、「会話」とは、「価値観や生活習慣が近い人同士の単なるおしゃべり」であり、「対話」とは、「あまり親しくない者同士の価値観や情報の交換、あるいは、親しい者同士でも価値観が異なる時に起こる、そのすり合せのプロセス」とのこと。
なるほど、どうやら「対話」の方が難しそうです。
* * *
私は仕事の傍ら、4年前からある大学のバスケットボール部で、チームビルディングについて定期的にコーチングを行っています。
よく選手同士の関わり方を観察していますが、「対話」という観点で見ると、それがまたとても興味深いのです。
たとえば1年生は、多くの選手がつい最近まで、高校での厳しい指導を経験してきているせいか、どこかいつもおどおどしているように見えます。
一方、上級生になるにつれて遠慮もなくなりますし、きちんと自分の意見を表現できる学生も出てきます。
高校時代、比較的高いレベルでプレーしてきた学生が多いことも相まって、プレーに対する考え方の相違から、ぶつかり合うこともしばしば。特に夏になると、その光景がよく見られるようになります。最上級生が引退したばかりで、新メンバーでのチーム結成からまもない春先は、衝突はあまり起こりません。
しかし、夏の合宿あたりから、目の前の問題を先送りにせず、選手たちがぶつかり始めるのです。チームの雰囲気は悪くなることもあります。そうは言っても、シーズンが佳境になると、雰囲気の悪さなど言っていられなくなり、お互いの話を聞きながら、すり合せが始まるのです。
こうなると、なかなか強いチームです。むしろ、この段階に及ばないと、いざという時に力の出しきれないチームになりやすいと私は思います。
日本一を狙えるような強いチームほど、
・今の自分たちの置かれている状況は、これまでと何が違うのか
・今、チームは何を捨て、何を選ぶ必要があるのか
・自分個人は何をするべきなのか
といった問いがメンバー間に流れ、何時間も活発に話し合われている印象があります。
そして、ひとたび一人ひとりが本当に納得できる方針やプレーにまとまると、もう、彼女たちが迷うことはありません。
* * *
これは会社組織でも同じことが言えるのではないでしょうか。
たとえば、軍隊的な上意下達がはっきりしている組織では、一糸乱れぬ意志が統一された組織にはなりますが、「上意」以上のものは出てきません。もちろん、この手法ならではの効果があるため、多くの会社で選択されています。
一方で、立場に関わらず、メンバー間で互いの考えの違いを出し合い、すり合わせる。こうしたプロセスを踏む組織もあります。
コーチング研究所の調査では、「組織は、常に新しい考え方や方法を導入している」という項目が、「異なる意見であっても相手の話を聞く姿勢がある」をはじめとする「社員間のつながり」と関係が強いということが分かりました。この結果から、変化する組織では、対話が行われているといえます。(※1)
グローバル化や女性活躍推進、働き方の変化など、ビジネスシーンにおける価値観はますます多様化し、その多様性を乗り越えなくてはならないシチュエーションが増えています。
まずは、自分のものとは異なる価値観や意見を目の前にしても、「ダメなものはダメ」と頭ごなしに押し付けないことが重要です。
「なぜそれがダメなのか」
「それがダメだと分かっていても、やってしまうのはどんな時か」
「それをやってしまう自分は、どのように見えるだろうか」
そうして、お互いの違いを見つめ合い、すり合わせていく。まさに、このプロセスにおいて「対話」が求められるのではないでしょうか。
そして、その先に、変化に対する適応力や創造性が育まれ、組織の力が最大化されていくのだと思います。
皆さんは、意見や価値観の異なる部下や、利害がぶつかりそうな他部門の人たちと、関わりを諦めることなく、対話していこうと考えていますか。
【脚注】
※1 WEEKLY GLOBAL COACH Vol.745(2014年6月18日)
「組織の変化は、『つながり』から生まれる」Hello, Coaching!編集部
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