Coach's VIEW

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認識の更新

先日、上海に出張しました。
弊社上海オフィスの「開業4周年」を銘打っての講演が目的でした。

この4年間で、上海は本当に大きく変わったように思います。

今回も、街を歩いていて、何度も「あれ?なんか違うな」という
言葉が頭をよぎりました。

街は整備され、どんどん「綺麗に」なっている。
行き交う人のファッションがお洒落になっているように見える。
工事中の場所が激減し、埃が少なく感じる。
交差点に溢れかえっていた自転車やバイクよりも、高級車が目立つ。
人のマナーがよくなっている。

実際の統計値はわかりませんが、
私の中の上海のイメージは、今回の出張でも一新されました。

前駐中国大使の丹羽宇一郎さんは、
近著『中国の大問題』で次のように述べています。

「企業経営者はメディアなどの情報に頼らず、
 中国の現場に足を運ぶことをすすめたい。
 本当にそんなに危ない国なのか、
 あるいはビジネスに有利な地域なのか。
 都会だけではなく、実際に進出しようとしている土地を歩いて、
 トップみずからが自分の五感で判断することが必要である」

先月の「The Economist」に、「The China Wave」という記事が出ていました。(※1)
そこで書かれていることを私なりにまとめると、

・多くの経営論者は、近年の中国企業の急速な成長の原因を、
 まるで習慣のように、安い労働力と国からの経済支援のお蔭だとしてきた。
 イノベーティブな創造力のお蔭ではなく。

・しかし、いよいよ、中国企業がここまで来られたことを、
 たくさんの労働者と資本だけによるものだとするには無理が出てきた。

・それはちょうど、日本の自動車メーカーが、欧米マーケットをむさぼり始めるまでは、
 トヨタ方式のことをほとんど知らなかったようなものだ。

・ところがようやくここに来て、MITの「スローン・マネジメント・レビュー」や、
 「ハーバード・ビジネス・レビュー」など、多くのビジネス誌が
 中国式マネジメントを研究した論文を公表している。

・結果わかってきたのは、中国企業は、実は相当にイノベーションを生む経営スタイルを
 確立してきているということだ。

・欧米企業が、「β版」を選ばれしごく一部のモルモットに投入し、
 マーケットの反応をまず見るのに対し、中国は消費者を「共同クリエーター」として
 マーケットに一気に商品を投入し、フィードバックループを回しながら素早く商品の改良を行う。

・ベビーカーと自動車シートのメーカーであるGoodbaby社は
 毎四半期に100点もの商品を投入する。

・家電の巨大企業であるハイアールは、何千社にも及ぶ子会社があり、
 それら全社が直接、グループトップに報告する仕組みになっている。

・中国企業は新しいものをとてつもなく早いスピードで作り上げる能力を手にしている。
 イノベーションをマスマーケットに送り出す技を身に付けつつあるのだ。

ということです。

一度何かを「こうだ」と認識すると、
その認識を変えるのはそう簡単ではありません。

中国はこういう国、アメリカ人はこういう国民性、部下のA君はこういう人、、、、。

一度認識した「ラベル」が張り替えられるのは、
多くの場合、向こうから突然やってくる、突然の情報に遭遇したときです。

「そんなところがあったのか、、、」
「そうだとは知らなかった、、、」
「こんな風になっているなんて、、、」

もちろん、それはそれで、意味のあることだとは思いますが、
やはりリーダーは、自分の認識が更新されるのを、
「偶然」に任せるべきではないでしょう。

では、どうするか。

そもそも、「認識の更新」は、自然には
なかなか起こりえないものだ、と「認識」する。

そして、自らその認識を更新するために、
「意識して」最新の情報に触れに行く。

全ての事象に関する認識を、常時更新するのは難しいでしょう。

ですから、せめて、認識の更新が必要な
「優先順位の高い10」の事象を決めておく。

中国の経済状況
自分の右腕の部下のモチベーション
自社の商品の革新性に対する評判、、、など。

そして、それらの事象については、
自らの五感を使って情報を集め、認識の更新をはかる。

「百聞は一見に如かず」と言いますが、見方を変えれば、
「一見すれば百聞が『吹っ飛ぶ』」可能性があるのです。

その昔、劇作家の寺山修司さんが
「書を捨てよ、町へ出よう」という本を著して一世を風靡しました。

PCの画面から目を離して、「町」に出てみるのはどうでしょう。

経営が後手に回らないために、
大事な意識の持ち方であるように思います。

※1 "The China wave"
   Chinese management ideas are beginning to get the attention they deserve
   The Economist, September 13th 2014, pp69

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。

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