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組織を変化する原動力とは?

組織を変化する原動力とは? | Hello, Coaching!
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「もし、あなたの会社の全社員が、今日と同じ考え、同じ行動を続けて行けば、会社は、目標の業績を達成するだろうか?」(※1)

『主体的に動く』の原著者であるConnors氏らは、新著『Change the culture, change the game』の中でこう書いています。

もし、全社員が今日と同じ考え、同じ行動を続けていくのであれば、「組織文化を変える」ことは、もはやオプションではなく、「急を要する義務」です。

では、組織文化を変えるというのはどういうことなのでしょうか?

会社で一番偉いのは、何でも分かっている人ではなく、「I don't know. What is it?」と聞ける人。実は、会社の経営には、これが言える人こそが向いており、リーダー像も変わりつつあります。

Everson氏は、『二流上司症候群』というコラムの中で以下のように話しています。

「多くのリーダーが、社員がやること全てに関して、上司は指示命令すべきだ、と思い込んでいるが、それは、『部下を完全に無視する』のと同じくらい間違っている」(※2)

と。

また、ハーバード大学ケネディ・スクールのMcNulty氏は著書の中で次のように述べています。

「ヒーロー物語は、人に語る物語としては重要かもしれない。ただし、それを、あなたがリーダーとして成功するために最も重要なことと混同してしまわないように、気を付けた方がいい」(※3)

そして、

「リーダーが、たった1人で動くことなど決してない。ノーベル賞受賞者のマレー・ゲルマン、フィリップ・アンダーソン(物理学)、ケネス・アロー(経済学)らが賛同して設立されたSanta Fe Instituteの『非線型システム (nonlinear system)』の研究によれば、システムにおける『変化』とは、1人のアクションによって生まれるのではなく、むしろ、2人以上の『双方向の関わり』から起こる、と言っている。もし、組織全体を、『複雑システム』と捉えることができるなら、リーダーを、『単独のエージェント』として、評価し、開発することはそもそも無謀なことである。それよりも、むしろ、いかに、コミュニケーションを促進し、関係を構築する能力を向上させていくかを学ぶ方が有益だ」(※3)

と。

ところが、人の「関係」というものは、「不測の事態」の連続であり、大抵の人は「関係」や「対話」を「簡略化」します。その傾向は、年齢が上がるほど強くなります。

そもそも、人とコミュニケーションを交わす、特に、対面でコミュニケーションを交わすことには、それなりにプレッシャーやストレスがあります。それが初対面であったり、意見や価値観が違ったりする場合には、その度合いは高まります。故に、関係や対話を簡略化したがります。

権威や権力、ステータスは、多くの場合、コミュニケーションよりも上位を占めます。それは「簡略化」を具体化するツールだからです。

たとえ、そこに対話があったとしても、背景には、地位や権力が控えていて、それを超えての発言はタブーとされているわけです。

「関わり」をさらに構築したり、変えたり、始めたりする能力を身に付け、どんなところでも常に相互学習でき、対話を交わし、相互学習のプロセスに入れるリーダーの数が多い組織は、権威や権力にこだわるリーダーが多い組織よりも、成長の可能性が大きいのです。

Pentland博士は、次のようなことも発見しています。

「組織の『関わりのパターン』を『ふさわしい方向』へと育てるスタイルのある人を、私は『繋げる人(connector)』と呼んでいる。『繋げる人(connector)』は、組織の中を、積極的に巡回し、短く、エネルギーの高い『対話』で、人々を『つなげて』いくのだが、その姿は、まるで、ミツバチが花粉を集めるような動きだ。MITで、ビジネスプラン作成のコンテストを実施した時、チームの中に、この『繋げる人 (connector)』の数が多ければ多いほど、チームのパフォーマンスもより高く評価されることが分かった。『繋げる人(connector)』とは、単に『外向的』とか『パーティ好き』というのとは違う。むしろ、彼らは、あらゆる人間、あらゆるものに、純粋な興味があるのだ」

その『繋げる人(connector)』が何をするかと言うと、

「彼らは、『対話』を駆り立てる(drive conversation)。人々の間で何が起こっているのか、彼らのプロジェクトが今どんな具合なのか、直面している課題に、彼らは、どのように対応しているのか、といったことを『問いかける』。この『繋げる人(connectors)』が影響しているのは、単に、チーム内だけではなく、『チーム』と『チーム』との『間』でも影響している。我々がリサーチの中で発見したことは、彼らは、組織の中で、部署・部門の境界線を越えた動きをし、みんなが、(対話の)ループの中に居続けられるようにする。このような『ソーシャル・インテリジェンス』が高い『繋げる人(connector)』は、組織の成功にとって鍵となる」(※4)

そして、それはひとりやふたりではなく、組織の20%から30%以上が必要とされています。

『流れ』をより高めること、みんなが、お互いに、対話し合うようにしていくこと、部署・部門同士をつなげること、

それをミッションとして捉えているということは、(組織の)パフォーマンスを高める上で極めて重要です。

会社は常に「工事中」であり、常に変化を求められています。

それは、会社の一部の人間に課せられた課題ではなく、今のリーダー、未来のリーダーたちに課せられた課題なのです。

会社を変化するために、リーダーは具体的に何をするのか。

どのやり方が最も効果的なのかについて考える時、いかに、社内、外のリソースを繋ぎ連結させることができるか?

その能力が、リーダーに問われていると思います。

Pentland博士は、人の行動をビッグデータで分析したリサーチの結果、次のように書いています。

「企業において、チームの『外』から『考え』が『流れ込む』割合が高いチームは、『イノベーション』を起こす確率がより高い傾向がある。そして、チーム『内』で『考え』が『流れる』量が多いチームは、『生産性』がより高くなる傾向がある」(※4)

と。

いずれにしても、対話のフロー(流れ)を誰かが起こさない限り、水は淀んでしまいます。組織を変革する原動力とは、繋がりと対話のフローを起こせるリーダーの開発と、その数に負うところが大きいのです。

※1 Connors, R. and Smith, T., 2012,
   "Change the Culture, Change the Game", Penguin

※2 Everson, K., 2014,
   "Curing Mediocre Boss Syndrome", MediaTec Publishing Inc.

※3 McNulty, E.J., 2014,
   "Should Leaders Be Heroes or Relationship Builders?", PwC

※4 Pentland, A., 2014,
   "Social Physics", 2014 by Alex Pentland

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