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会議はどうでもいいところで盛り上がる

会議はどうでもいいところで盛り上がる
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先日、あるメーカーの事業本部長であるAさんと食事をしていた時のことです。

話の流れから、「会議を活性化させるコツ」が話題となりました。

Aさんが「会議を活性化させるために議事録を使う」とおっしゃったので興味を持ったのです。

Aさんは、ほとんどの会議で議事録担当者を置き、会議の終了後、出席者全員にすぐに議事録を送るということを徹底しているとのこと。その理由は、「議事録は参加者全員へのフィードバックだから」なんだそうです。

Aさんが管理職になったばかりの頃の職場の会議は、とても単調なものでした。

一言も発言しないまま会議を終える人も多く、ほとんどの会議は、議論の場というよりも、順番に報告をするだけの会のような場だったのです。

「会議をもっと活性化させたい」と考えたAさんは、一人ひとりに発言を促し、多様な意見を歓迎し、みんなが発言しやすい場づくりや関係づくりにも努め、「どんどん発言して欲しい」と部下に伝え続けました。

すると、会議はしだいに「活性化していった」ように見えました。

ところがある日、毎週の定例会議の議事録をまとめ読みしていたAさんは、あることに気付きました。

「発言が増えたと喜んでいたが、本当に重要な点については議論をしていない」

これはAさんにとって、「大きな発見」だったのだそうです。


50年以上前、イギリスのC.N.パーキンソンは、こんな話を著書の中で紹介しました。(※1)

ある時、ある組織の幹部が2つの新規プロジェクトについて話し合いました。

ひとつは原子炉の建設について、もうひとつは自転車置き場の建設について。

幹部達にとって、重要かつ大きなお金がかかるのは言うまでもなく原子炉の建設の方ですが、原子炉の建設についての議論はわずか数分で終わり、建設はその場で承認されました。

ところが、自転車置き場の建設については、参加者全員が発言しやすい内容だったことからさまざまな意見が飛び交い、議論が数時間に及びました。しかも、それでも結論が出ず、次回に持ち越されることになったのです。

私たちは、自分が良く知らないものについては、たとえそれが自分にとって重要な議題であっても、恥をかきたくないという気持ちから発言を控える傾向があるそうです。

一方、議論しやすいもの、自分の意見を言いやすいものについては積極的に発言する傾向がある、というのです。

パーキンソンは、このことを「議題の1項目の審議に要する時間は、その項目についての支出の額に反比例する」と表現し、「パーキンソンの凡俗(ぼんぞく)法則」と呼ばれています。


Aさんは、「大きな発見」の後のことも教えてくれました。

「会議では、みんなに発言して欲しい。ところが、実際の会議では、なぜかどうでもいいところばかりで発言が増えたり、本来みんなで議論すべき議案で発言がなかったりするんです。しかも、会議中は、不思議とそういうことに気付きにくい。

そこで私は、議事録をフィードバックのためのツールとして使うことを思いついたのです。会議室を離れてから、一人ひとりが議事録を読み、自分がどんな場面でどんな発言をしたのか、その発言が周囲にどう影響を与えていたのか、といったことを振り返るようにしたのです」

「それからしばらくして、議事録を振り返っていたところ、技術的に難易度の高いテーマや専門知識が必要な議題の場面で、発言が少ないことに気付きました。

おそらく、『この件について勉強していない』とか『予備知識をもっていない』と思われたくない、という心理が参加者に働いたのだろうと思いました。では、一体、誰にそう思われたくないのか...? この時、みんなは、上司である私の評価を一番気にしているのではないか、ということに気づいたのです。実は、私自身も、自分の専門外のテーマでは深く質問をしていなかったのです。私も、部下の評価を気にしていた。これは事実でした。

そこで私は、次の会議では、どんな内容にも知ったかぶりをせずに、『知らないので詳しく教えてほしい』、『分からないのでもう一度説明してほしい』と、自ら率先して言うことを意識しました。『上司も分からないんだ』ということがみんなに安心感を与えたようで、質問が増えました。その結果、より本質的な部分での理解が進んだ上で、活発なやりとりが行なわれるようになったのです」

「会議の活性化」について考える時、私たちは「全員が発言したか」とか、「アイデアがたくさん出たか」といったことに意識を向けることが多いと思います。

それは決して悪いことではありませんが、これらに加えて、「最も議論すべきところで議論していたか」ということも、「会議の活性化」の大切な要素として取り入れてみてはいかがでしょうか。

あなたの職場ではどんな議題に時間を割いていますか?


【参考資料】
※1 『パーキンソンの法則』 (1961年)
   C.N.パーキンソン(著)、森永晴彦 (翻訳) 至誠堂

※2 『HELP!―最強知的"お助け"本』(2014年)
   オリバー バークマン (著)、Oliver Burkeman (原著)、下隆全 (翻訳)

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。

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