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「信頼」があるから影響力を発揮できる

「信頼」があるから影響力を発揮できる

4月は、多くのリーダーに変化が生まれる時期です。

ここ上海でも、多くの駐在員のみなさんが
異文化環境の中、新しい組織で、新しい部下を迎えて
スタートされています。

そして、リーダーとして
周囲に影響力を発揮し、
チームや組織全体の掲げる目標を
達成したいと考えています。

しかし、その後しばらくすると
はじめての情報や新しい体験の波に圧倒され
日々のタスクに忙殺されているうちに
部下への影響力について、こんな言葉が聞こえてきます。

・明確なビジョンを打ち出しても、反応が薄い
・変革の必要性を説いても、保守的な発言が返ってくる
・業務で必要な指示や命令を伝えても、快く応じてくれない

「伝えたいことが伝わらない、理解してもらえない」
「伝え方が悪いのだろうか。どのように伝えればいいのだろうか」
と、自分の伝達方法やコミュニケーションのスキルに
意識を向けるリーダーもいれば、

「部下マネジメントが日本にいた時のようにできないのは
中国人の意識が低いからだ」
などと原因を外部環境に求めるリーダーもいます。


社会心理学者のE.P.ホランダー(Edwin.P.Hollander)は、
信頼蓄積理論(Credit Accumulation Theory)で、
「リーダーの影響力は、リーダーが過去の言動や行動で
相手に対してどれだけ信頼を蓄積できたか、その多寡に依存する」
と提唱しています。

多くのリーダーシップ論が、リーダーの資質や行動特性といった
リーダー個人に焦点を当てていたのに対して、
ホランダーは、リーダーと部下との関係性に着目しました。

つまり、リーダーと部下との間に
信頼関係が蓄積されていれば、
リーダーは、その部下に対して
リーダーシップ(影響力)を発揮しやすく、
逆に、信頼関係がなければ
リーダーシップを発揮することはできない、ということです。

リーダーが、影響力を発揮するには
周囲との信頼基盤がカギとなりそうです。


はじめての海外赴任で、しかも、社長業がはじめてのA氏。
1,000人の社員を抱える食品製造販売会社の社長として
自らが掲げたミッションは
「ローカルスタッフに権限を委譲して
彼らが自ら考えて行動していく組織を作る」ことでした。

就任して半年が過ぎているにも関わらず、
「ローカルスタッフに任せる組織にシフトしていない」
それどころか、組織全体の士気が下がっているように感じていました。

そこで、14名の幹部ローカルの社員に
A氏の周囲へのリーダーシップの影響に関する
アセスメントを実施しました。

全140項目のうち、72項目の回答が
「どちらともいえない」に集中した結果は、
A氏にとって衝撃的なものでした。

「この半年間、自分はリーダーとして
なんの影響も与えていないのと同じだ」

結果を見ながら、A氏はつぶやきました。

自分の思いや、社長としてのスタンスが
想像以上に周囲に理解されていないことに
大きなショックを受けたのです。

そして、「ネガティブでもポジティブでもいい。
何かしらの影響を与えたい」と、
A氏のチャレンジが始まりました。

信頼を築き上げるために
ローカル幹部社員に、まずは
気軽にできる「ちょっとしたこと」
を始めたのです。

すぐには結果を求めようとせず、
コツコツと、毎日の挨拶のように続けました。

・直属の部下の部屋に自分から足を運び、「どう思うか?」と意見を求める。
・営業マネジャーが営業に出かける時や、帰って来た時には一言声をかける。
・製造マネジャーには、「私にすぐにやって欲しいことは?」
 と小さなリクエストを聞き、約束して必ず実行する。
・社員からのメールにはタイムリーに返答する。

こうして徐々に信頼を積み重ねながら
次のような行動にシフトしていったのです。

・ローカルスタッフの考えや発言を最後まで聞いた上で
 リクエストや要求したいことを遠慮せずに言い続ける。
・ローカルスタッフへの気兼ねから着手していなかった
 人事ローテーションや部門横断プロジェクトを思い切って断行する。

6カ月後に、同じアセスメントを実施したところ
「どちらともいえない」の回答は15項目に減少しました。

加えて、下記の項目でポジティブな変化が大きく現れたのです。

・A氏は、会社のビジョン達成のために、明確な方針を伝えている
・A氏は、自身の立てた方針で組織を導いている
・A氏は、大きな方向性を示した上で、従業員からの
 意見を引き出そうとしている


リーダーの仕事は自分の言いたいことを聞かせることではなく、
影響力を与えること。

だからこそ、「信頼関係」がカギであることは間違いありません。

誰もが、分かりきっている事ではありますが
リーダーを前進させて、信頼基盤を作るためには
何から始めれば良いのか。

例えば、次のような問いが
リーダー自身の「信頼」の棚卸しにつながります。

「自分が影響力を発揮できている相手と、発揮できていない相手とでは
相手の私への信頼度はどれ位違うのだろうか?」
「部下が私を信頼する理由と、信頼できない理由は何だろうか?」

そうすることで、「信頼に基づいた関係性」を構築するために
何から始めれば良いかを考え始めることができます。

あなたの信頼を築きあげるための、
「はじめの一歩」は何ですか?

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