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目標は"話す頻度"で達成する
2015年04月22日
昨年末、忘年会で学生時代の仲間10人ほどが集まった時のことです。
とりとめのない話をワイワイと楽しんでいると、久しぶりに会った友人のK君が、職場の不満を、怒りをぶちまけるように話し始めました。
K君は長年ある大企業に勤め、現在は法人営業を担当する管理職です。
「そもそも俺はエンジニアだったのに、バカな上司のせいで営業をやらされているんだよ」
「最近の新入社員って、ほんと動きが悪いんだよね」
彼の怒りの矛先は多方面に渡りました。
K君が本来はいい奴だと昔から知っている私たちは、彼の話にしばらく付き合いました。
「こういう場じゃないと、怒りをぶちまけられないからさあ」
「今日は本当にいいガス抜きになったよ」
と、彼はスッキリとした表情で帰っていきました。
それから数か月経った先日、別の飲み会で再びK君に会いました。忘年会で「ガス抜き」したはずの彼でしたが、なんと、以前にも増して再び職場の不満をぶちまけていたのです。
アイオワ州立大学の心理学者ブラッド・ブッシュマンは、このような「ガス抜き」にどのような効果があるのかを、いくつもの実験を繰り返して調べました。(※1)
その結果、不満を何度も口にし、怒りをぶちまけると、気分が解消されるどころか、ますます不満を言うようになる、ということが分かったのです。
その理由は、こんな風に考えられます。
不満をしょっちゅう口にするということは、不満の対象となるものにずっと意識を向け続けているということです。頻度高く話すことによって、「ここが不満だ」と思うものにずっと意識を向け続けているのですから、その対象のちょっとしたことにまで気になり続けるのは当然だとも言えます。
「不満」に限らず、人の意識は、話している内容に向かう傾向があります。
私たちコーチが、クライアントの目標に向けて何度も何度も質問を投げかけるのは、目標についてクライアントに様々な角度から繰り返し話してもらうためでもあります。
頻度高く話すことによって目標に向かう意識が高まり、目標達成への行動を増やそうという狙いがあるのです。
本メールマガジンの読者の方にご協力いただいたアンケートでも、以下のように、目標について話す頻度が高い人ほど「目標を覚えていて、達成するための行動をしている」という結果になりました。(※2)
この図にあるように、「週に1回以上目標について話す」人の92%は、「目標を覚えていて、達成するために行動をしている」と答えています。一方、「半年に1回程度」目標について話す人では、「目標を覚えていて、達成するために行動をしている」と答えたのは49%、「1年に1回程度」と答えた人では29%と、その数が大きく減っていきます。
目標を達成するには、「目標について頻度高く話す」ことが重要である、と考えることが出来るのです。
極論かもしれませんが、不満を口にすればするほど「不満を言う自分」になり、目標を口にすればするほど「目標に向かう自分」になる、と言えるかもしれません。言い換えれば、「今の自分はこれまで自分が口にしてきたことの結果である」とも言えるでしょう。
自分が何について話すかは、まさに自分次第です。
あなたが頻度高く話していることは何ですか?
【参考資料】
※1
Brad J. Bushman
Does Venting Anger Feed or Extinguish the Flame?
※2
WEEKLY GLOBAL COACH の読者へ実施した、目標に関するアンケート調査。
実施期間:2015年1月14日~2月3日
※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。
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