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「関係」をデザインする
2015年05月13日
この4月も、社長交代のニュースを多く目にしました。
企業の成長の総責任者ともいえる「社長」という存在。「社長」には、社内外からさまざまな期待が寄せられますが、「社長」自身は、自分にどのような能力が必要だと考えているのでしょうか。
1,181名のリーダーが選んだ「自分に必要なリーダーシップの要素」を集計したコーチング研究所のデータがあります。(※1)
リーダーが最も多く選んだリーダーシップは、「変化促進」(広い視野を持ち、必要な変化を起こすこと)でした。
また、社長と全リーダーの違いに着目したところ、社長(109名)は全リーダーに比べ、「コミュニケーション」(部下と円滑なコミュニケーションを図ること)を多く選んでいることがわかりました。
プライスウォーターハウスクーパースが先月発表した、世界1,322人のCEOに行った意識調査レポートには、「まとめ」に次のように書かれています。(※2)
「何よりも今年インタビューしたCEOは、リーダーシップの『ソフトスキル(主に対人関係)』の重要性を強調した」
そして、「中でもCEOが最も習得すべき資質は、謙虚さである。CEOがリードしつつも謙虚であれば、経営陣チームの話に耳を傾け学ぶことができる」と。
社長が部下と双方向にコミュニケーションをとり、自身も学びながら、会社をリードしていく必要性を感じていることが伺えます。
Facebookのプロダクトデザイン・ディレクター、マリア・ジュディースは、その著書で、CEOであった自身の経歴もふまえ、社長が部下との関係をどのように変化させるべきかについて触れています。
彼女は、現代のように変化の激しい時代のCEOは、昔ながらのリーダーシップを変化させるべきで、対人関係においては、旧来の「仕事を部下に任せる」でなく、「必要とあれば、部下と一緒になって仕事をする」こと、また、「一方通行のコミュニケーション」でなく、「人々とつながりあっている」人がこれから活躍するだろう、ということを書いています。(※3)
これらの情報からも、これからの経営において、社長と部下がどういう関係を構築していくかは重要な鍵になりそうです。
では、社長と関係をつくる「部下の側」についてはどうでしょうか。
ハーバード大学ケネディスクールの講師バーバラ・ケラーマンは、著書『リーダーシップが滅ぶ時代』で、歴史的な流れやインターネットの普及により情報の収集、発信が誰でもできるようになり、フォロワー(リーダーについていく人)が以前よりも強い力を持つようになっているにも関わらず、今の考え方はリーダーシップに偏重しており、人はフォロワーシップについてもっと学ぶべきである、と提言しています。(※4)
つまり、社長と向き合う「部下」にも、変化が求められているということでしょう。
社長と部下の関係を構築する鍵は、部下の側にも握られているのです。
同書では、「フォロワーシップ」に必要な能力ついて、
・いかにリーダーとかかわり、協力、妥協するか
・良いリーダーをどのように助け、支えていくか
・悪いリーダーにどのように挑戦する、あるいは戦うか
・いかにリーダーに対して意見を言うか
などを紹介しています。
リーダーとフォロワーの関係をつくっているのは、当然ながらリーダーとフォロワーの両方です。
あなたの会社では、「社長」と「部下」は、現在どんな関係でしょうか。また、これからどんな関係をつくりたいとお互いに思っているでしょうか。
あらためて、双方の「関係」に目を向けて、両者が対話をしながら最高の「関係」をデザインすることがその実現への第一歩になるのではないかと思います。
【参考資料】
※1
2012年12月から2015年3月までのLeadership Assessment のデータを分析。
8つのリーダーシップ要素から自分に必要なものを3つ選択する形式。
文中での「社長」は、自らの役職を「社長、会長、CEO」と回答したデータ。
※2
第18回世界CEO意識調査
A marketplace without boundaries?
境界なき市場競争への挑戦
※3
『CEOからDEOへ ~「デザインするリーダー」になる方法~』
マリア・ジュディース (著)、クリストファー・アイアランド (著)、坂東智子 (翻訳)
※4
『ハーバード大学特別講義 リーダーシップが滅ぶ時代』(ソフトバンククリエイティブ)
バーバラ・ケラーマン (著)、板谷 いさ子 (翻訳)
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