Coach's VIEW

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優れた「コーチ使い」

優れた「コーチ使い」
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Language: English

どうすれば、コーチングの成功確率は上がるのか?

通常、このテーマについては、「コーチ側」の技能について議論されることが多いのではないでしょうか。

しかし私自身は、「こうすればコーチングは成功する」というイメージについて、クライアントから教えてもらうことが多いのも事実です。

今号では、コーチングの機会を最大限活用して成長や業績を出す、優れた「コーチ使い」に焦点を当ててみたいと思います。


シンガポールを中心にビジネスをするA氏は、優れた「コーチ使い」のひとりです。

はじめて会った時、「あなたは、これまでのキャリアで3人目のコーチです」と言われました。20代後半で1人、30代で1人と、ポジションが変わる節目節目で自らをストレッチさせ、大きく変化するためにコーチを「使って」きたとのこと。

A氏は、我々がどのような哲学に基づき、どんな構造やモデルでコーチングをするのかを、最初に尋ねました。その上で、彼の直面している現実、差し迫ったチャレンジを手短に説明。そして、それらを私たちのコーチングモデルで扱う場合、およそどんなコーチングの方針・進め方になるのかを確認しました。

この間、約30分。

A氏との会話は非常に手際よく、最後、決断する期日を互いに共有し、面談は終了しました。

そして約束通りの期日で、A氏は「スタートする」という意思決定を私に通知してきました。

コーチングの開始前後で、A氏は何度かコーチングの「取扱説明」を求めて来ましたが、質問は探求的で、いかに「投資価値」を高めるか、という意志・意図が伝わってきました。

下記は、わたしがA氏を通してみた「コーチ使い」の秘訣と思われる行動リストです。

・ 提供されるコーチングの特性/限界を熱心に知ろうとしていた
・ コーチングの成功事例/失敗事例を尋ね、自分がどうコーチングを活用できるか、イメージしようとしていた
・ 自身のプロフィール、ビジネスの経歴等を、なるべくオープンに私に伝えようとしていた
・ 「どうせやるなら」と敢えて高い目標を設定しようとしていた。また、敢えてコミットメントを明言していた
・ 早期にアセスメントを取り、目標に対する自身の現状を知ろうとした
・ 自分のアセスメント結果を周囲にシェアし、更に周囲からフィードバックを得ようとしていた

さて、A氏がコーチングによって達成したい目標は明確でした。

現地人材で管理系のトップであるCFOのB氏を、1年半後の人事異動でCEOにすること、即ち、A氏の後任にすること。

しかし、管理系出身のB氏には営業経験がなく、これからビジネス開発を経験し、現場からの信頼を獲得する必要がありました。当然、その間、組織業績を落とすことは許されません。

また、A氏にとっても、後継を指名し、開発することは初めての経験でした。いかにB氏を経営トップを担える人材にするのか、そこがA氏のチャレンジでした。

「本当に手に入れたいことは何か? そのために最適なコーチングの使い方は何か?」

A氏は、コーチングをスタートする直前まで、それを問うていました。

「自分が居なくなった後にも業績が上がり続けること」

それが、A氏の手に入れたいものでした。

そして、「我々2人が、同時に成長すること。それが最適解ではないか?」

ある時、A氏はそう考え始めたようです。そして、この考えが、コーチを活用する上で本当に効果的なアイディアなのかについて意見交換をしたい、と申し出て来ました。

結局、A氏はCFOにも現地人コーチをつけることを決断しました。そして、プロジェクトが正式にスタートしたのです。

すると今度は2人で、コーチングの機会を最大限に活かすためのアイディア出しが始まりました。結果、2人は下記の様な工夫を考え、実行し始めました。

・クライアント2人とコーチ2人の4名によるプロジェクト成功に向けた作戦会議の開催を依頼してきた
・2人の成功に向け「重要なステークホルダーたち」を次々とコーチに紹介し、プロジェクトに巻き込んだ
・A氏とB氏は、お互いのコーチングの進捗を頻繁に共有し合い、お互いの学習と進捗を議論し合った
・目標に対する進捗は、自分からコーチにシェアして来た
・問題解決のために欲しい情報、知りたいこと、学びたいことは自分たちで調べ、不明点は聞いてきた
・セッション中の気づきやアイディアを自分たちでノートした。2人は、自分たちで次までの宿題を決めて、確実に実行した


コーチング研究所が実施した、コーチをつけた約2,500人のクライアントリサーチを紐解くと(※)、エグゼクティブ・コーチングから「高い成果」を引き出したエグゼクティブたちの特徴が見えてきます。

「目標や問題解決に向けて主体的に行動する」

これを徹底的に続けたエグゼクティブたちは、「コーチングで設定した目標を達成する」という調査結果が出ています。

言うまでもなく、A氏とB氏は、1年半後、設定した目標を達成しました。
そして、この組織は、トップとなったB氏のリードの元、未だに業績を上げ続けています。


「コーチングを活用し、成果を上げたクライアントたち」とは、どんな人なのか?

今回、このコラムを書くに当たり、経験豊富な同僚コーチたちに、意見を求めてみました。

"成果を出すことを「決めた」人、コーチを活用すると「決めた」人"

そんな回答が大半を占めました。

考えてみれば、先のA氏も同様でした。コーチングの可能性と限界を理解しつつ、コーチングの機会を、そしてコーチを、最大限に使うと「決めた」のだと思います。結果、先に紹介したさまざまな「コーチ使い」のアイディアが生まれたのかもしれません。

コーチングの機会をより豊かにしていきたいとき、ご紹介したA氏の具体的なアイディアの数々が、お役に立てればと願っています。


【参考文献】

「成果を出す経営者とエグゼクティブ・コーチング」−CSES調査レポート2015− コーチング研究所調査2015年

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