Coach's VIEW

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評価とコーチング

評価とコーチング

GEが、ジャック・ウエルチ氏が代表を務める時代から行ってきた
人事評価「9ブロック」を廃止することを検討しているようです。(※1)

また、アクセンチュアも「年次評価や階級制度」を廃止し、
「個別対応のタイムリーなフィードバック」を取り入れることを
発表しています。(※2)

評価制度本来の目的は、社員のエンゲージメントを高め、
個人の成長を促すことだとすると、

企業にとっては、優れた業績をあげた者に報酬を与えることで、
社員の自立性を高めることを意図したものだといえるでしょう。

しかし、その実態を見てみると、

・管理目標の数が多く、大半の社員には管理そのものが負担になっている
・評価の第一目的が賃金や昇進の決定に役立てるためのものになっている
・業績の低い社員を特定したり、
 責任の所在を明らかにすることが目的になっている
・評価の結果に対して、多くの社員が納得していない

といった状況も多いのではないでしょうか。
その結果、

・「能力開発」の視点が薄れ、業績達成目標だけが意識されている
・上司部下間では、業務に関する話だけが行われ、
 能力開発に関する対話がなくなる
・部下が困っていることや悩んでいることなどを話す機会がなくなる
・部下の希望を聞いたり、提案を引き出したりする対話がなくなる
・パフォーマンスに関する会話は数値目標達成の不足を隠すことに
 終始しがちになる

など、さまざまな弊害が指摘されるようになり、
企業は評価制度そのものの見直しを迫られているのだと思います。

2015年10月20日付のアメリカのビジネス誌「FAST COMPANY」で、
筆者のKRIS DUGGAN氏は、次のような指摘をしています。 (※3)

・今日、社員が求めるのは、
 「頻度の多いフィードバック」「オープンなコミュニケーション」、
 「同僚とのコラボレーション」である

・業績評価時のネガティブなフィードバックは
 対象者のモチベーションや成績を下げる

・今の社員は、かつてのように、
 上司を「経験を積んだ能力のある先輩」としては見ない。
 ハイパフォーマーを開発したいなら、上司にはコーチ力と
 権限移譲力が必須である

そして、

「向こう3年の間で、おそらくフォーチュン1000社の半数が、
 階級制度や年次の業績評価を辞めるだろう。

 これらの会社が成功するカギとなるのは、頻度の高いフィードバック、
 オープンなコミュニケーション、そしてコーチングである。
 社員を恒常的に成長させるためには、
 フィードバックループを生み出すコーチングが必須である」

と結論づけています。


「リーダーとコーチング」に関する
コーチング研究所のリサーチ結果をご紹介します。(※4)

企業や組織でコーチングのプロジェクトに参加したリーダーの
「コーチング」に着目し、プロジェクト開始時からの
コーチングのレベルの変化量が

A群:上位20%のリーダーからコーチを受けた人
B群:下位20%のリーダーからコーチを受けた人

に分け、部下のパフォーマンスを比較したものです。

その結果、

・「将来の目標やビジョンを持っている」度合いや、
 「積極的に目標を立てて行動をおこしている」度合いが
 高まった人は、2倍以上。

・「毎日前向きに仕事に取り組んでいる」度合いが高まった人は2.5倍以上

・「自身の目標と所属組織の目標のつながりを理解している」度合いが
 高まった人が2.3倍以上

と、A群の方がB群よりも多いということが分かりました。

このことからも、リーダーの「コーチング」のレベルアップは、
周囲の人の「目標に向けた自発的な行動」の促進に加えて、
モチベーションやエンゲージメントをも高めることに
繋がると考えられます。


先日、大手自動車会社に勤める若手の社員に、
人事評価の実態についてヒヤリングを行いました。

評価の流れは、

・年初に業務の目標、自分のスキルアップの目標を立てる
・年度末に、自己評価と上長の評価をすり合わせる面談を行う
・面談結果に基づき、業績評価会でABCDEの5段階の評価が決まる
・ランクに応じた係数を乗じて、昇給額、賞与額が決まる
というもの。

その方法についてどのように思っているのか、
次のように話しています。

・上司が業務のゴール、スキルアップのゴールについて
コーチングの時間をとっている場合、
部下からの、最終評価に対する不満はあまりない。

・しかし、業務に関する会話に終始し、中長期的な成長や
学習機会に関する会話がされない場合がほとんどで、
そうした上司をもつ部下は評価に対して不満を持っていることが多い。

会社という形態をとるかぎり、評価をなくすことはできません。
何らかの形で社員を評価しその貢献に応じる仕組みは
必要なのだと思います。
そして、日常的に行われる上司と部下の「対話」こそが
何よりも大切なのです。

マネジャーがコーチになる。

今後、その重要性が高まることは疑いがありません。


【参考文献】
※1
「新・人事部の掟」
「週刊ダイヤモンド」2015年5月2,9号

※2
Lillian Cunningham,
In big move, Accenture will get rid of annual performance reviews and rankings,
The Washington Post,July 21

※3
KRIS DUGGAN, WHY THE ANNUAL PERFORMANCE REVIEW IS GOING EXTINCT
EMPLOYEES DON'T NEED ANNUAL PERFORMANCE REVIEWS TO KNOW
HOW THEY STACK UP AGAINST THEIR PEERS.
FASTCOMPANY

※4
コーチング研究所調査
調査対象:リーダー約1,500人からコーチングをうけた部下(周囲)約8,000人
     A群・B群ともに、リーダー約300人,部下(周囲)約1,500人
調査期間:2012年1月〜2014年12月
調査内容:プロジェクト開始時からのコーチングスキル上昇の変化量(CSAplus)
     7件法「1:全くあてはまらない〜7:とてもあてはまる」

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