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量とフィードバック

量とフィードバック
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フロリダ州立大学のアンダース・エリクソン氏の「1万時間の法則」は、技術習得のための必要条件として、さまざまな場面で取り上げられてきました。どんなことでも、1万時間をその練習に費やせば、必ずうまくなると。

ただもちろん、漫然と1万時間を練習に費やせばいいのかというと決してそうではありません。ゴルフの下手なショットを、ひたすら1万時間繰り返したとしても、 下手なままでしょう。

エリクソンは言います。

「機械的に同じことを繰り返しても、なにも得られません。目標に近づくように修正を重ねることが大切なのです。努力してシステムを改良していくのです」

少しうまくなったとしても、同じことを長く続けていると、どうしても行動は「自動化」され、変化に乏しくなります。そして、それ以上の成長が起きません。

しかし、一流のパフォーマーは常に「現状を越える目標」を設定し、行動の自動化に抗って成長を求めます。

世界的ベストセラー『EQ』の著者ダニエル・ゴールマン氏は、近著『フォーカス』の中で、このエリクソン氏の理論に触れ、練習には必ず、「フィードバックループ」が組み込まれる必要があると述べています。

「フィードバックは専門的な目を持った人から与えられるのが理想的で、スポーツの世界で一流の選手はみなコーチをつけている」と。

コーチ・エィでは、主体的な風土を構築し、変化に強い組織を築くためのソリューションとして組織変革型の「システミック・コーチング™」を企業に導入いただいています。

このソリューションでは、参加者(社内コーチとよびます)が、社内の関係者(ステークホルダー)にコーチングを「実践」できるようになってもらうことを目指します。

半年以上にわたり、週に1時間ずつ電話会議システムでコーチングの理論を学ぶ。学んだことをステークホルダーとのコーチングを通して実践する。実践に対してステークホルダーからフィードバックをもらう。

さらには、参加者一人ひとりにコーチがつき、行動が「自動化」しないように、常に「高次の目標」を設定し続ける。

期間中は、徹底的にコーチングの習得に時間を費やし、終了後もコーチングの実践が社内で仕組み化されることが多く、職場でのコーチング実施時間はどんどん増えていきます。

目標をセットし、繰り返し実践し、実践ごとにフィードバックを受け、修正し、目標をリセットする。エリクソン氏が主張する、技術習得の要諦ともいえる「フィードバックループ」を盛り込んだプロセスがここにあります。


昨年歴史的な勝利をワールドカップで上げたラグビー日本代表。

監督のエディー・ジョーンズ氏の偉業についてはいろいろな角度から語られていますが、彼が何よりもイノベイティブだったのは、代表選手たちに160日の合宿をさせたことではないかと思います(それまでの日本代表は85日程度の時間しか取っていませんでした)。

朝の5時半から夜7時まで繰り返される練習。選手たちは、所属チームもあれば、仕事をしながらのビジネスマンもいます。ジョーンズ氏は、さまざまな軋轢を選手に乗り越えさせて時間を取らせた。時間を確保させた。

そして、もうひとつの成功要因は、可能な限りパフォーマンスを数値化して、選手にフィードバックし、「実践・修正・実践」のループを回したこと。

脈拍、血液中の酸素飽和度、試合中の走行距離、タックルして一旦グラウンドに寝てから起き上がるまでの時間...。ありとあらゆることを数値化し、選手の成長の糧として使いました。

量とフィードバック。どんな技術の習得にも欠かせない、2つの要素であるようです。


【参考資料】 『フォーカス』 (日本経済新聞社) ダニエル・ゴールマン (著)、土屋 京子 (翻訳)

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