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イノベーティブな組織をつくるリーダーがしている2つのこと

イノベーティブな組織をつくるリーダーがしている2つのこと
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企業のリーダーがリーダーシップを発揮する目的は何でしょうか?

勿論それは、業績的な成果に向けて発揮されるものであるといえます。それに加えて、私は「より良い価値を世の中に提供し続ける組織力を備えるため」だと考えます。

企業が、より良い価値を世の中に提供し続けるためには、事業や組織を継続的に成長させていくことが必要となります。成長し続ける組織とは、組織のメンバーがイノベーションを起こすために主体的に行動する状態を維持している組織といえるでしょう。

「継続的な成長」という観点ですと、ただ単に業績目標を達成した、ということではなく、組織のメンバーがどのように関わりながら達成したのか? がとても重要です。

そして、そのプロセスを通じて、組織としての能力が開発されていくことが、「持続的なイノベーションを起こす組織力」につながるといえるでしょう。

社会構成主義の権威であるケナス・J・ガーゲンとロネ・ヒエストゥッドは、著書『ダイアローグ・マネジメント』で、これからのリーダーに必要な素質として対話の重要性について述べていますが、業績目標の達成に向けて、組織のメンバーを動機付け、巻き込み、主体的に行動させていくために、リーダーには、どのような対話力が必要なのでしょうか?(※1)

コーチング研究所が行った「社長のリーダーシップ」に関する調査(※2)では、目標達成に向けて部下が主体的に動くことと最も相関が高かったリーダーのコミュニケーションは、「部下の本音の意見を充分に聞くこと」でした。

つまり、部下たちが、組織の戦略や計画、意思決定に自分の意見や提案が反映されている、と感じられるかどうかだといえるのではないでしょうか。

組織力を高めるリーダーは、部下に教えるのではなく、いい質問をしています。それは、「部下が自分で問題について考えること」を促進します。そして、そのような質問は、部下の能力への信頼を示し、リーダーと部下が協働で解決策を生み出すことにつながるといえます。


IT系企業のホールディングカンパニーで社長を務めるAさんの事例をご紹介します。

Aさんは、市場環境が厳しい状況の中、事業子会社同士が連携し、イノベーションに取り組む状態をつくろうとしていました。Aさんの目下の悩みは、子会社の社長たちが、Aさんの指示にすぐに対応するものの、それ以上でもそれ以下でもなく、自発的な行動を起こしていない、というものでした。

なぜ、子会社の社長たちは、イノベーションに向けて自発的に動かないのか?

ある日、Aさんは、自身の執務室で、子会社社長のBさんとミーティングをしていました。Bさんは、子会社の社長の中でも比較的受け身な行動で、Aさんの方針に否定的な意見を述べることも何度かありました。

ミーティングの目的は、子会社同士がどのように連携すべきかをBさんに説明し、理解させる、ということでした。

にもかかわらず、Aさんは、どのようにBさんに説明すべきか良いアイディアが浮かばず、逆に質問をしていきました。

「グループ全体にとって今後どのようなイノベーションが必要だと思うか?」
「今、何が一番問題だと思うか?」
「今後、どのようなことを新たに始めたいと思っているか?」
「どのような役割や権限が欲しいと思っているか?」
「どのようなことをやめたいと考えているか?」

Aさん自身は、ほとんど考えを述べずにBさんに質問し、Bさんの意見を聞きました。

Bさんは、Aさんに対して、子会社間の連携に障害になっていることを意見として述べました。

「社員同士がコミュニケーションをする場、機会が非常にすくない」
「各子会社の評価がグループ全体への貢献として評価されない」
「子会社社長の役割、評価が自社の業績範囲にとどまっており、グループ全体の視点での行動が促進されておらず、むしろ子会社間で仕事の取り合い、足の引っ張り合いが起きてしまっている」

Aさんは、驚くとともに、ショックを受けました。Aさん自身は、子会社同士が連携しやすい環境をつくっているつもりだったのです。

Bさんとの対話を通じて、Aさんはイノベーションを進めるために欠落していることと、その改善のためのヒントに気づくことができました。

Aさんは、これをきっかけに、子会社の社長たちと1対1で対話をすることにしました。そして、質問し、意見を聞くことに徹しました。

対話の時間の中で、グループ全体のイノベーション推進のアイディアを、子会社の社長たちに考えさせ、最終的には、それらを反映した中期経営計画を策定することができました。


Aさんをはじめ、「イノベーティブな組織をつくるリーダー」がしていることは、大きく次の2点に集約されているように思います。

(1)部下との対話の場をつくり、対話に誘いこむ
(2)自分の意見を控え、部下が自分の頭で考え、アイディアを生み出していけるような質問をする。

対話がメンバーの主体性を高め、互いに連携し、イノベーションの計画をつくることにつながる、ということでしょう。

現在、Aさんのグループでは、イノベーションに向けて、子会社の社長たちが自信を持って取り組んでいます。

イノベーションを起こすリーダーは、部下を対話に引き込み、優れた質問をする能力を持っています。

そして、それは、部下の中にある能力、自信を開発し、主体的な行動を引き出し、成果を上げさせ、強い組織力をつくりだすことにつながるのです。

リーダーは、強い組織をつくり、それを進化させ続けていくために、自身の対話力も進化させ続ける必要があります。

あなたは今、組織のメンバーとどのような対話の場を持っていますか?
そして、どのような質問をしていますか?


【参考資料】

※1 『ダイアローグ・マネジメント』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
ケナス・J・ガーゲン、ロネ・ヒエストゥッド(著)/伊藤守(監訳)、二宮美樹(訳)

※2 コーチング研究所調査
調査対象:社長34人,直属部下約400人(平均直属部下12人)
調査期間:2011年9月〜2015年2月
調査内容:社長のリーダーシップに関する調査(EMI)

Coach's VIEW「イノベーションを生み出し続ける組織のリーダーとは」

コーチング研究所調査「イノベーティブな風土と役員間のコミュニケーション」

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