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ヒットを生み出し続けるピクサーの組織づくりとは?

ヒットを生み出し続けるピクサーの組織づくりとは?
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「トイ・ストーリー」や「ファインディング・ニモ」、「インサイド・ヘッド」など、ヒット作品を出し続けるクリエイティブ集団、ピクサー。

30年前に、スティーブ・ジョブズらが設立、映画史上、他の映画会社が成しえなかった頻度でヒット作を生み出してきたピクサーは、その作品群だけでなく、創作活動のプロセスや、組織づくりなども注目されています。

技術スタッフやアーティスト、デザイナーら多くの「天才」人材が、互いの知性や創造性を引き出しながら、ヒット作品を生み出し続ける。このようなイノベーティブな組織力は、どのように創られているのでしょうか?

アイディアを生むために、ピクサーは何をしているのか?

経営戦略を専門とするエイドリアン・J・スライウォツキーは、ピクサーの特徴の一部について以下のように説明しています。

「“yes, and(ええ、それいいかも)”の原則を尊重していたという。たいていの組織では、独創的なアイディアはその場で弱点を指摘され、なぜ無理かを説かれて却下されることが多い。だが、ピクサーの社員たちは新しいアイディアには“yes, and”と対応する」(※1)

「自分の家族や自分が見たいのはどんな映画だろう?(中略)ピクサーは社員一人ひとりにアイディアを出すよう促している。この質問を機会あるごとに繰り返し、どこに導かれようとその答えに忠実に従う」(※2)

新事業開発に取り組む経営者は、何を変えたのか?

「イノベーティブな組織づくり」の取り組みで思い浮かぶ経営者がいます。

新規事業開拓に挑む、製造業の経営者A氏。A氏の業界は、事業環境の変化に伴い、売れ筋商品の需要が減退。A氏が長年にわたって築き上げてきた大口顧客との取引も縮小が予測され、「環境変化にむけた新しい商品や新規事業の開発」がA氏の目下の経営課題でした。

「自らアクションを起こす社員が皆無だ」

エグゼクティブ・コーチングのスタート時、A氏はこのような言葉を何度も不満げに口にしていました。その言葉の裏には、

・自ら商品開発を推進し、営業し、顧客を獲得してきた自負
・自ら率先垂範し、社員がついてくる長年のマネジメントへの固執
・一方で、主体性、当事者意識が低い社員を生み出しているという気づき
・その結果、受身で一体感のない組織になっていることへの懸念

などが渦巻いているようでした。

「創造性の高い組織」について何度か対話を重ねる過程で、A氏は徐々に「自分ではなく、幹部社員たちが新プロジェクトを起こし、現場の社員を巻き込む状態を創りだすこと」が急務であること、それを実現する「リーダーの開発」こそが、自分がいま取り組むべき組織変革の要点ではないか?」という考えに移行していきました。

自分一人が「主」であり続けるのではなく、「複数のリーダー」を創ること。それが変革の第一歩だと解釈したのです。そして、自身の幹部たちへの関わり方を変えていきました。

・「黙ってついてこい」という過去のマネジメントスタイルを捨て、相手の意見に耳を傾け、考え方を理解する。
・幹部一人ひとりが、どのような興味や目標を持っているのかに関心を持ち、把握する。
・現場の細かいことには「一切」口を出さない。幹部社員たちに一任する。
・どんなに変わったアイディアにも耳を向け、尊重し、否定しない。
・ビジョンを共有し、その実現に必要なことを考えるための質問を繰り返す。
・どんな失敗も経営に大きな損失を与えない限りは一旦受け入れ、更なるチャレンジをとことん促す。

このような行動を継続した結果、幹部社員たちは、次第に責任と自覚を持って自らの仕事にまい進するようになりました。

そして、徐々に変化が出始めたころ、A氏は、その一人が提案してきた新しい事業を全社目玉のプロジェクトとして打ち上げ、その幹部社員に一任し、取り組ませました。

この幹部社員は、A氏が自分たち幹部社員にした関わりと同様の関わり方をプロジェクトメンバーに実践し、プロジェクトを推進していきました。

この全社プロジェクトは久しぶりに「大ヒット」。以降、これに続くプロジェクトが数々生まれていきました。

ヒットを生み出す組織づくりとは?

一握りの天才がイノベーションをリードする組織では、その天才のアイディアを完璧に実現することで、ある程度の成功を生むことができます。しかし、それが続くと、他の社員たちが自分の意思で動けない組織となり、いずれ「一握りの天才の能力を超えるイノベーションは生まれない」組織になっていくでしょう。

組織の一人ひとりが主役となる「クリエイティブな環境」をつくるリーダーを増やす。

それが、持続的にヒット商品を生み出す組織をつくるカギであり、そのような組織力は、一握りの天才の力を、遥かに上回る強固なものとなるはずです。

前述のピクサーで、アートディレクターとして活動したアニメーション監督の堤大介氏は、ピクサーの社長であるエド・キャットムルについて、下記のように述べています。

「彼が目指していたのは、自分たち創業メンバーがいなくなったとしても、ピクサーのビジョンを保ち続けるリーダーを育て、誰がリーダーシップを執っても機能する組織をつくることだった」(※3)

ピクサーも、ヒット作品を生み出し続ける強い組織をつくるために、「リーダーの開発」に取り組んでいるのです。

ヒット商品を生み出し続ける組織をつくるリーダーを開発するために、あなたは何をしますか?

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【参考資料】
※1 ※2
『ザ・ディマンド 爆発的ヒットを生む需要創出術』(日本経済新聞出版社)
エイドリアン・J・スライウォツキー、カール・ウェバー(著)/佐藤徳之(監訳)、中川治子(訳)

※3
「ピクサーで学んだ創造的チームのつくり方」堤大介
「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2016年2月号」(ダイヤモンド社)

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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