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組織の新しい対話

組織の新しい対話

どうすれば、可能性は開かれるのか?

「リーダーとしてコミュニケーションを取る」ことの「難しさ」と「もどかしさ」は、リーダーを経験した誰もが感じてきたことではないでしょうか?

「時に、気の遠くなるような気持ちに陥ることがある。どれほど 頑張って 自分のメッセージを伝えたところで、次の日には、社員たちは、ぽかんとした顔をしたり、月並みな反対をしてきたり、彼らを、わからせることに失敗したことを示すような質問をしてきたり、といったことはざらにある」(Doty, 2016)

それにしても、なぜ、私たちは、これを繰り返してしまうのでしょうか?なぜ、ほとんどのリーダーが、同じような状況に陥ってしまっているのでしょうか?

そう考えると、マネジメントにおいてずっと「当たり前」だと思われてきたコミュニケーション方法が、実はどうも機能しないものだったようにしか思えないわけです。

では、トップダウンという「一方通行」を超えた先にあるコミュニケーションとは一体どんなものなのか?

MITビジネススクールで「対話(ダイアローグ)」について、長年研究を続けているアイザックス教授は、次のように書いています。

「リーダーシップの階層がどのレベルであれ、現代のグローバルおよび企業が直面している課題を考えれば、『1人で考える(thinking alone)』ことが、もはや適切ではないことは明らかだ。

あらゆるところで、人間は、『一緒に考える (thinking together)』能力を開発することを求められている」(Isaacs, 1993)

手に入れたいのは、「一緒に考える」ことを可能にするコミュニケーション。しかし、実際には、私たちは、会社で、どんなコミュニケーションを取っているのでしょうか?

「残念なことに、組織における会話のほとんどが『ディベート(debate)』に堕ちてしまっている。その語源は、『打ち負かす/圧倒する』という意味だ。『ディベート』では、どちらかが勝ち、どちらかは負ける」(Isaacs, 1993)

そして、このようなコミュニケーションが、いかに組織の可能性を狭めているか、をアイザックス教授は指摘しています。

「そのような 『やりとり』 が、人間の 『集団知能 (collective intelligence)』の能力を活性化(作動)させることは無い」 (Isaacs, 1993)

また、私たちは、「組織」という「人の集まり」でありながら、なぜ「単独で」考え続けてしまうのでしょうか? 何が、私たちが「組織全体で」考えることを邪魔しているのでしょうか?

エドガー・シャインは、人が、自分のエゴとプライドを優先してしまい、「一緒に考える」コミュニケーションを犠牲にしていることを指摘しています。

「人は、幼い頃から、人付き合いの要は、互いの 『面子(face)』 を損なわないようにすることだと、教えこまれている。『面子』とは、人が、『自分はこう扱われるべきだ』と考える社会的な立場、といっていいだろう。

社会学者アービング・ゴフマンが雄弁に示したように、人は名前、肩書き、態度や声の調子によって、常に自分をアピールしている。そうすることで、自分を尊重してほしい、然るべきステータスにある人物として遇してほしいと主張しているのだ。

互いの 『面子』 を保つことで、正常な社会関係を築くことはできる。真実をずばりと口にすれば解決は早まるかもしれないが、『関係構築』のプロセスが損なわれるかもしれない。

『面子』を守るために、私たちは『コミュニケーション』と『理解』を犠牲にするわけだ」 (Schein, 1993)

「一方通行」を超えたコミュニケーションのイメージとしての「双方向の対話」。

「そこでは、『コミュニケーション』は、一人ひとりが重要なピースの1つを持っている『パズル』、あるいは、『コラージュ』として扱われる。 

その目的は......問題やチャンスを、『共に探索する』 ことにある......」(Doty, 2016)

もっと具体的に言えば、お互いの「視点」や「体験」を共有すること。

組織論者の Karl Weick氏によれば、「視点」や「体験」を共有することは、深刻なリスクを減らす 「組織的な意味付け (organizational sensemaking)」 の重要な手段とのことですが、ハーバード大学の元研究員で、企業にリーダーシップのコンサルを提供するDoty 氏は、次のように言及しています。

「多くのリーダーが、個人的にはこのような類の対話を経験したことがあるものの、『それを自分から始める技術』を習得した者は、ほとんどいない」(Doty, 2016)

もちろん、簡単なことではありません。

人は一人ひとり違いますから、何1つとして、全く同じ「対話」「コミュニケーション」というものは存在しません。

社員と関わり合うリーダーには、常に、頭を絞るような感覚と言えるかもしれません。スイッチを入れれば電気が付く、といった機械のようにはその先の予測はできず、不確定要素に溢れています。

しかし、この不確実性、予測不能性にこそ、組織の可能性を開く鍵があるように思います。

部下や同僚、さらには、部署を超えて、「今日、話す」そして、「明日も話す」。その積み重ねは、確実に、組織の可能性を開いていきます。

世界中の数多くの企業エグゼクティブと仕事をしてきた心理学者のハーレーン・アンダーソン氏は、最近出演したラジオ番組で次のように話しています。

「関係やコミュニケーションを『当たり前のこと』だと思わないこと。あなたは、『関係』を、継続的に、育てなければいけないのです。社員のことについて知るための時間を取る必要があるのです。」(Anderson, 2016)

世界やマネジメントは変わり続けていますが、ビジネスは「人」がつくっている、という点だけは変わりません。

「忘れないでいただきたいのは、(時代が変わった)今でも人は、話を聞いてもらいたい、自分を見てもらいたい、つながりたいということです。

だから、管理職として、それを忘れないでください。チームとつながることは、いつでも可能なのです。たとえ、国やタイムゾーンをまたいでいたとしても」 (Plachy, 2016)

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【参考資料】
Anderson, H., 2016, Improving Relationships and Increasing Bottom Line, The Weekly Business Hour with Rick Schisser, February 29th, 2016

Armstrong, H., 2012, Coaching as dialogue: Creating spaces for (mis)understandings , International Journal of Evidence Based Coaching and Mentoring Vol. 10, No. 1, February 2012

Doty, E., 2016, Why Leaders Who Listen Achieve Breakthroughs, PwC, March 21, 2016

Isaacs, W., Dialogue, collective thinking, and. organizational learning, Organizational Dynamics (ORD) ISSN: 0090-2616. Vol: 22 Iss: 2 Date: Autumn 1993 p: 24-39.

Schein, E. H., 1993, On Dialogue, Culture, and Organizational Learning, vol. 22, Summer 1993, Elsevier Science

Plachy, K., 2016, Coaching Skills for Managers, University of California, Davi

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