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「橋渡し型ネットワーク」をもつリーダーは変革を実現する

[原題]組織変革への第一歩
「橋渡し型ネットワーク」をもつリーダーは変革を実現する

ビジネス環境の変化が激しい中、「変化」が起こってから対応する「変化対応力」よりも、「変化」が起こる前に、「変化」を起こしていく力を、多くの企業が模索しています。

エグゼクティブ・コーチングでも、「どうしたら組織に変化を起こせるか?」をテーマに持ち込まれるエグゼクティブが多く、「変化を起こすためのスピード」に投資する企業が増えているように思います。組織に「変化を起こす」ことは、エグゼクティブの切なる願いなのでしょう。

ところが皆さんもご承知の通り、人は一般的に「変化」を嫌うと言われています。

なぜ人は、「変化」に抵抗するのか?

カリフォルニア医科大学の臨床心理士ロバート・マウラー博士によると、脳の大脳辺縁系は変化を嫌う習性があり、急激な変化を感じると恐怖と捉え、危険を感じ、変化が起こらないようにするそうです(※1)。私たちの無意識のレベルで、脳が変化にストップをかける、という事実があるのです。

「変化」の定義を、「これまでにない新しい行動を起こし、それを続けること」としたときに、「変化」を起こしたいエグゼクティブと、「変化」に抵抗する社員。完全なミスマッチが組織で起こっているのです。

では、どうしたら変化を起こすことができるのでしょうか?

コーチング研究所が「組織の変化」と「組織の変化に影響をおよぼす5つの要素」の関係を分析した結果は次のようになりました(※2)。

・ 社員間のつながり  (0.78)
・ 目標達成への期待 (0.72)
・ 組織運営の仕組み (0.68)
・ リーダーの発信    (0.51)
・ リーダーの信頼    (0.51)  ※():相関係数

「社員間のつながり」の具体的な項目には、以下のようなものがあります。

 ・組織のメンバーが異なる意見であっても相手の話を聞こうとする姿勢がある
 ・社員は、自分が得た情報や経験を、積極的に組織のメンバーに共有している
 ・組織のメンバーは、相手が違う部署であっても、領域を越えて協力している

「大きな」変革で活躍するマネジャーとは?

また、ハーバード・ビジネス・スクールの准教授ジュリー・バッティラーナ氏らは、イギリスの国営保健サービスにおける68件の変革への取組みを12ヶ月間にわたって深く掘り下げる調査を行い、変革を推進するためにネットワークが重要であるという結論を導き出しています。

なかでも、より大掛かりな変革の場合には、チームを超えて組織内部のいろいろな部門や関係者に対して幅広いつながり(「橋渡し型ネットワーク」)を持つマネジャーが、成功を収めているというのです。

「橋渡し型ネットワーク」を持つマネジャーは、そのネットワークの広さから、より多くの新しい情報や知識に触れる機会があること、また、相手のニーズや目標に合わせてコミュニケーションをとれるため、効果的に協力者を増やせるという利点があるようです。

 一方、組織変革を実現したいエグゼクティブに、「実現するためにどのようなことをしていますか?」と質問をすると、多くの方から、

「全体会議の場で繰り返し伝える」
「社内のイントラにメッセージを掲示する」
「メールを発信する」
「『変化』と書いたポスターをオフィスに掲示する」

といった答えが返ってきますが、どれだけ効果があるのでしょうか。

むしろ、

「橋渡し型ネットワークをもつ人を見つける」
「社員に起こしたい変化に共感してもらい、協力を仰ぐ」
「部門を越えて人と人とのつながりを作る」

といったところに手を打つ方が、効果があるように思えてきます。

先に紹介したマウラーは、変化への恐怖を乗り越える方法として、「小さな変化」から始めることを提唱しています。「社員間のつながり」を高めることからであれば、社員の多くも、抵抗感少なく始めることが出来るのではないでしょうか。

世界にネットワークを広げる企業役員がしている、小さなこと

ある企業の役員Aさんが面白い取り組みをしていました。Aさんは、世界中に数千名の部下をもつ、大組織のトップです。Aさんは、エグゼクティブ・コーチングを受けられると共に、ご自身でコーチングを学習し、スキルを身に着けました。その経験から、マネジメントの中心に対話を置いたのです。

具体的な実行策として、まずは1年間で100名以上の世界中の部下と、「1対1」で面談をされました。Aさんはその面談で必ずある質問をしたそうです。

「私が次にお話を聞くべき人は誰でしょうか?」と。

つまり、社員とのつながりを元に、ご自身のつながりを世界中に広げているのです。Aさんの取り組みは年々進化し、2年目には500名近い部下との面談を実施。3年目に当たる今年度も、面談やワークショップを通じて、世界中の300名近い部下と対話をすることを計画されています。

Aさんは、まさに「橋渡し型ネットワーク」を持つリーダーと言えるでしょう。

いま、「社員間のつながり」を可視化するためのツールが、たくさん生まれています。こうしたツールを使うと、「橋渡し型ネットワーク」を持つリーダーを発見することもできますし、組織の中のつながりの量も可視化することができます。

組織変革に向けた一歩は、「つながりの可視化」と「つながりを作る」ところから始めてはいかがでしょうか。

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【参考資料】
※1
『脳が教える! 1つの習慣』
ロバート・マウラー(著)、本田直之(監修, 監修)、中西 真雄美(翻訳)

※2
コーチング研究所調査
「組織の変化」に影響を及ぼす要素
調査対象: 98社の組織のリーダーに対する部下3,455名
調査期間: 2011年9月~2014年4月
調査方法: ウェブアンケートへ回答
調査内容: Executive Mindset Inventory リーダーシップおよび組織の状態に関する調査 

※ Coach's VIEW 鈴木義幸 「小さな質問」

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