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組織を勝利に導く「経営チームのリーダーシップ」

組織を勝利に導く「経営チームのリーダーシップ」
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今、組織が直面するチャレンジは、「リーダー1人」の力を頼るには、あまりに複雑で危険なものになってきています。

欧州で大型の買収を手掛け、現地でPMI(経営統合)の中心に飛び込んだA氏。日本企業の中に、出自の異なる複数の非日系企業を融合させるミッションで現地に赴任しました。

はじめての海外経験、外国語でのビジネス。多方面でリストラクチャリングの断行が必至で、経営層を大幅に入れ替え、組織は揺れに揺れました。

しかし、着任後1年半。見事、成長軌道に乗せることに成功しました。

ここまで来たことについて、A氏は不可能だと思ったことは一度もなかったそうです。

「チームワークの勝利です。自分1人だったら、とっくの昔に失敗していたでしょう。しかし、成功にむけて『誰と組んでも良い』『最高のチームで乗り込め』と社長から指示されました。なので、互いの強みや弱み、専門性を補うことのできる、最高のメンバーでチームを組みました。さらに、本社も部門を越えてサポート態勢に入ってくれ、"全社ALL"でつかんだ勝利だと思います」

チームを勝利に導く「リーダーシップ」の捉え方とは?

「リーダーシップは、組織コンピテンシーである。個人のコンピテンシーではない」(※)

コッター・インターナショナルの Justin Wasserman 氏は、そう指摘します。

A氏の話を通し、リーダーシップはA氏のみならず、「チームの中」に宿っていた、確かにそうした印象を受けました。

中国で非日系の自動車部品メーカーを訪問したことがあります。彼らは、明らかに「チーム」を事業の成功エンジンと捉えていました。

・まずは、本国でリーダーズ・チームを組んだ
・チーム員に各々、個別コーチをつけた
・加えて、チームに、チームワーク専門のコーチをつけた
・コーチ陣と共にリーダーズ・チームで中国に乗り込んだ

「トップにだけコーチをつける? それで勝てるのか?」と、彼らの考え方の中心には、常に「チーム」がありました。

時を同じくして、同業の日系企業を訪問した際、駐在員リーダーが「1人」で孤軍奮闘している様子をお聞きしました。競合の海外企業は「リーダーズ・チーム」で挑んでいる。これでは、最初から勝負が決まっているのではないか、そう思いました。

「リーダーズ・チーム」はどのようにできるのか?

「リーダーズ・チーム」にリーダーシップが宿っているとき、各々は「目的に対して自分は不可欠な存在だ」という自覚を持つのでしょう。シリコンバレーを訪問した際に、それを推察できる話を聞きました。

・ビジネスのアイディアを持つ人間が現れる
・しかし、彼/彼女には、ビジネス化に必要な人脈、財務、マーケティングなどの経験・専門知識はない
・そのことを、彼/彼女は自覚し、信頼できる知人に相談する、即ち、自分には弱い領域があり、支援が必要なことを正直に告げる
・知人たちは、彼/彼女らの弱みを補える人材を探し、紹介し始める
・徐々に各分野の専門家が集結し、チームが形成されていく

チームの求心力は、アイディア(=目的)であり、チームのリーダーシップの核は、能力を持ち、役割を認識した各人。「1人ではできない」ことを自覚し、相手に敬意を持ち、全体が繋がる中で、チームにリーダーシップが宿っていく。

確かに、これは、先のPMIを成功させたA氏が、チームにリーダーシップを宿らせていった経緯と重なりました。

「チームにリーダーシップが宿る」

今回は、そのテーマで、いくつかの視点をご紹介しました。

リーダーシップを単数形で問うだけでなく、複数形で問うてみる。
リーダーシップを、個人ではなく、チームに問うてみる。

さて、皆さんのチームのリーダーシップは、どのような状態でしょうか。

・成果を生み出すために、どのようなリーダーズ・チームが必要だろうか?
・今、このチームが有している能力・強みは何だろうか?
・チームが必要とする能力・強みを有している人は誰だろうか?
・リーダーズ・チームのチャレンジは何だろうか?
・次のリーダーズ・チームを創出するために、何ができるだろうか?

単数形の「人」にリーダーシップを問う代わりに、「チーム」に対してリーダーシップを問うてみる。

そうすることで、人と人との相互作用の可能性について、新たな視点・示唆が手に入るかもしれません。

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【参考資料】
※ Wasserman, Justin, 2014, With Leadership Development for All, 
MediaTec Publishing Inc.

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