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コーチングを成功に導く、クライアントのレディネス(準備態勢)とは

コーチングを成功に導く、クライアントのレディネス(準備態勢)とは
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中国・香港で、日本人駐在員の方から頻繁にいただくご質問があります。

「ローカルリーダーの育成に投資したいが、現地スタッフにコーチングは受け入れられるだろうか?」
「コーチングが通用しないケースもあるのではないか?」

このご質問からは、文化や言葉の壁を前に、日々の業務指示にも苦戦されるマネジメントのご苦労が伝わってきます。こちらの想いや意図が伝わらず、なかなか思い通りにいかない現実に、強いジレンマを感じられているようです。

コーチをつけ、リーダーとして飛躍してほしいと期待しても、当人が躊躇することは、実はよくあります。

ただ、過去、様々な国のプロジェクトに携わってきた中で思うのは、「コーチングが通用しない人がいる」というよりも、「コーチングが『起こる』までに時間を要するケースがある」ということです。相手が日本人だから、中国人だから、ということでは説明ができません。

では、その理由を、コーチングを受ける側の「レディネス(準備態勢)」という視点で見つめなおしてみると、どうでしょうか。

コーチングにおける「レディネス」とは?

コーチングに限らず、人や組織が新しいものを取り入れようとする時には、常にこの「レディネス」が鍵となります。変化へのモーメンタムを創り出す「レディネス」とは一体どんなものでしょうか。

コーチングにおいて、「レディネス」レベルが低い相手の反応には、次のようなものが挙げられます。

・ コーチングがスタートしても、いろいろな理由をあげて、コーチングの時間をとろうとしない
・ コーチから答えを与えられるのを求める
・ 質問に答えようとしない(直接的に拒否する。間接的に話をそらす)
・ ゴールを決めようとしない
・ 環境や状況の説明に終始し、自らについて語ろうとしない
・ 約束したことを実行に移さない

実は、このような反応は、誰にでも起こる可能性のあるものです。「レディネス」は、常に低い人、高い人がいるということではなく、ひとりの人物の中でも、高い状態と低い状態を、揺れ動くようです。

考えてみれば、私自身も、10年前に初めてコーチをつけたときに、「あなたはどうしたいですか?」「その先には何がありますか?」と次から次へと質問を重ねてくるコーチの対話スタイルに面食らったことを、今でも覚えています。

コーチとの間で「コーチングが起こった」のは、それから3ヵ月後くらい経ってからだったと記憶しています。

このような「レディネス」レベルの違いは、どのように生まれるのでしょうか。

Exploring Clients' Readiness for Coaching(※)によると、レディネスを構成するのは、次の6つの要素であると説明されています。

1) 社会的文化背景(どのような価値観を持つ社会に属していたか)
2) コーチングに関する知識(コーチングの仕組みを正しく理解しているか)
3) コーチングへの参加条件(コーチングの時間と費用を確保できるか)
4) 心理的解釈(物事に対してどのような捉え方をする傾向があるか)
5) 心理的な安全(現在のポジションや環境に対する不安感はどのくらい強いか)
6) 変化に対するコミットメント(自らリスクをとっても、成長したいという意欲はあるか)

これらの要素は互いに影響を与え合います。

皆さんがコーチをつけようと考えている対象者は今、どのような状態にあるでしょうか。そして、そのレディネスを高めるために、できることは何でしょうか。

私が香港に駐在してから、より重視しているのは、相手の「2)コーチングに関する知識」と「5)心理的な安全」です。

コーチをつける側に「コーチングの知識」が必要な理由

「コーチングのことを知っていますか?」という質問に、多くの人が「はい」と答えます。では、「コーチングで行われること、行われないことは何でしょうか?」と質問を重ねると、どうでしょうか。

ここからは、人によって、理解に差が出てきます。

中国・香港のマネジメントの現場では、まだまだコーチングのコンセプトそのものが知られていない、あるいは誤解をもたれているケースも多いようです。もっとも多い誤解は、「コーチングは、アドバイスをされるものだ」というものです。

前出の私自身の例も、これにあたります。なかなか「アドバイス」をくれないコーチに、私は何とも言えないもどかしさを感じました。

コーチングとこれまでの「会話」の違い、それが自分にどのような価値があるのか、を対象者自身が学習しない限り、コーチングは「始まり」ません。逆に、コーチングの理論やその効果について学習し、体得することができれば、社会的文化背景に関わらず、コーチングは機能します。

その意味では、コーチングを始める最初の段階とは、「相手がコーチングの知識を高める手助けをする」ということなのです。

「心理的な安全」に導いた総経理の言葉

もうひとつ、検討したいのが「心理的な安全」です。

「コーチングの知識」を持ったうえで、なお、コーチングを受けることに抵抗反応を示す相手は、何かしらの「不安」を抱えている可能性があります。

「この会社でうまくやっていけるだろうか」
「自分は、上司にどう思われているのだろうか」
「自分の取り組みはちゃんと評価されているのだろうか」
など。

あるプロジェクトの初回打ち合わせでは、中国人の工場長さんが、しきりに日々の忙しさや、スタッフのレベルの低さなどを挙げ、自分がコーチングを受ける意味はない、とおっしゃっていました。30分ほどお話した後に、総経理の方が一言口を挟みました。

「確かに、この会社の現状は厳しい。コーチングの取り組みも、そんな簡単にはいかないだろう。だが、この取り組みがうまくいかなかったとしても、君がコーチングを受けることは、必ず君のキャリアに役立つ。そういう自信につなげてもらえれば、それだけでも価値がある。僕はそれでいいと思っているんだよ」

私の目の前に座っていた工場長さんの強張った表情が、少しずつ笑顔に変わっていく様子が印象的でした。

このように紐解いていくと、コーチングは、マニュアルのようには、スムーズに進まないことが、ほとんどかもしれません。

まずは、導入前に「レディネス」レベルを高めていく、そのプロセス自体がコーチングの一部とも言えそうです。

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【参考資料】
Ines Kretzschmar, Exploring Clients' Readiness for Coaching

International Journal of Evidence Based Coaching and Mentoring,
Special Issue No 4, pp. 1 - 20

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